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 魔力溜まりの遺跡を巡ることを決めたセイフィオスとルナセイラは、伯爵の話していた石探しの旅の文献を探し出して読む間、セイフィオスは王家の保管している魔力溜まり遺跡の地図を取り寄せた。


 「まずはここから馬車で二~三時間程で着ける『ノイス湖』から行くのはどうだろうか?」


 「・・のいすこ・・ですか?」


 ルナセイラの問いにセイフィオスは頷く。


 「神秘的な湖で有名な場所でもあるのだが、魔力溜まりの発生した場所でもあるのでほぼ近隣の町や村の住民しか行かない場所にはなっているが、過去に何度か魔力溜まりが発生している」


 「気になっていたのですが、魔力溜まりは何度も同じ場所に発生するのですよね?」


 「そうだよ、これまでの記録ではそのように記されているね。何故かは解き明かされていないけれど・・」


 「・・リュキスエント石の発現と関係するのでしょうか・・」


 「わからない・・でも遺跡を巡ってみれば何かわかるかもしれないよね」


 リュキスエント石を探す為、私たちはこれから魔力溜まりの発生した遺跡を巡る旅をすることになっている。


 魔力溜まりの遺跡は全て王都の外にある。まるで王都を囲むように遺跡が存在しているのだ。

 オレイヌ領は始まりの場所とされている『ノイス湖』ともう一つの遺跡『メイゼル山の麓』の傍に位置していた。

 王家から領地をオレイヌ家が賜ったのは、遺跡の傍だったというのも関係しているのかもしれない。

 

 「とりあえず、まずは明日『ノイス湖』へ向かってみよう!その後またここへ戻って体を休めてから、次の場所へ向かえばルナも安心でしょ?」


 「ありがとう!私もその方が助かるわ!ノイス湖で分かったことを、ここでまた文献を見て確認できるかもしれないもの!」


 二人はノイス湖の場所と、持っていくものの確認を終わらせてから早めに就寝することにした。


 全て回ると恐らく七日前後はどうしてもかかってしまうという事だった。


 恐らくその間王都へ戻ることはできないだろう。それに、アイナがどの位聖魔法を覚醒させているかも気になる。


 アイナの性に対する奔放さは理解しがたいものがあったが、それでも世界を守る聖女としては欠かせない存在。彼女の成長が魔力溜まり浄化に必要だからこそだ。


 ――しっかり頑張ってくれていると良いのだけれど・・・・


 ルナセイラは一抹の不安はよぎりつつも、今は出来る事を精一杯頑張るしかないと自分を鼓舞して眠りについたのだった。




 ***




 翌朝、朝食を食べた二人は装備を調えた上で馬車に乗ってノイス湖へと向かった。


 王都からも二時間ほどで行ける場所であり、最初に魔力溜まりが発生した際はあっという間に魔獣のスタンピートが起こって王都は酷い惨状になったらしい。

 しかし、二百年以上魔力溜まりも発生していない穏やかな場所だと近隣の町や村からは報告を受けている。


 「――・・ここが・・ノイス湖ですか・・」


 「そうだね、神秘的な湖のはずなんだけれど・・」


 二人の向かったノイス湖はホルウェイ領の森林公園の中に位置している。


 一番近くの町の住民の話も聞いてみたが、特に変わったことはないと彼らは話していた。しかし、森林公園に入ってからはずっと薄暗く、先ほどまで晴れやかだった空も曇って見える。薄い霧のようなものまで漂っていてどう考えても神秘的とはかけ離れていた。

 ノイス湖は濁っているわけではないが、なぜか空気が重く感じる。


 「・・私・・この場には長くいたらいけないような感覚がするのですが、セイは何か感じませんか?」


 「私は何も感じないけれど、話に聞いていたノイス湖とのイメージが全く違う・・正直・・何が出てもおかしくないような気はするね・・」


 「そう・・ですよね。来て早々なのですが、ここでは長居すべきではないように思います。石の確認だけして戻りませんか?」


 「そうだね・・その方が良さそうだ」


 治癒の力の聖女の文献に、魔力溜まりが発生するとどのような様子だったのかをよく読んでおけば良かったとルナセイラは後悔した。


 ――・・この空気・・重苦しい何かが充満しているように感じる・・もし魔力なら・・


 嫌な予感が間違いであってほしいとルナセイラは願い、二人は早々にオレイヌへと戻ったのだった。




 ***




 夕刻時にオレイヌの邸に戻った二人は入浴して体を清めると再び文献を確認した。


 「セイっ!!・・ここに『圧迫するような重くるしい空気が漂い』と、魔力溜まりの様子の記録を見つけました!」


 「圧迫するような重苦しい空気か・・今日のノイス湖もそんな雰囲気だったような感じがするね・・」


 「そうなの・・澄んだ魔力が聖魔力なら、まるでその真逆のような魔力を感じました。・・もしかしたら・・予兆・・なのでは?」


 聖女ローナの日記に確かに記されていた文言。


 絶対に見過ごしてはならないとルナセイラの第六感が警鐘を鳴らしていた。


 「・・・・大きい声では言えないけれど、聖女が現れた以上、魔力溜まりもいつ現れてもおかしくはないと言える。そうなると・・魔力溜まり発生の有力な候補地かもしれないね・・」


 二人は神妙な面持ちで頷きあった。


 「もしかしたら・・あと二か所・・これから巡る遺跡にも同じような場所があるかもしれませんね」


 「そうだね・・その場合は安全第一だ。重苦しい空気を感じたらどのような場所であっても即刻退避しよう。いいかい?」


 「はい!・・それでお願いします!」


 もし本当に魔力溜まりの発生の予兆なのだとすると、まだ聖女として覚醒しきれていないルナセイラにとっては危険な場所でしかない。


 互いの安全を守るためにも、遺跡を全て巡る為にも無理すべきではないと確認しあえたのは良かったと言える。


 「――それにしても・・オレイヌ領の近くの遺跡で魔力溜まりの気配がするなんて・・心配だろう?」


 「それは心配ですが・・もし魔力溜まりが発生すれば王都も同じだけ危険なはずです。自分の居場所だけ心配など・・している場合ではないですよね?」


 「・・・・そう思えるルナが凄いと思うよ」


 眩しいものを見る様に目を細めて微笑むセイフィオスは、無意識に人を殺せるほどの輝く王子様スマイルを浮かべる。


 ――・・無意識美青年はやばい~~~っ!!昇天するっ!


 まともに真正面から受けたキラキラスマイルで、頬には熱が急激に集まっていく。    


 「そ・・そうですか・・・?」


 「それはそうでしょ?自分の身が一番かわいいのが普通の人ってものだろう?」


 「であれば私の周りの人はセイも含めて普通の人じゃないってことですね!」


 「え?」


 ルナセイラの追及に、セイフィオスは目を瞠る。


 「だって昨日セイが言ったじゃないですか。自分が命の危険に晒されても、私を優先するって!・・ふふふ・・自分の身が一番かわいい人がすることじゃないですよね?」


 「あ・・・・そう・・だね」


 気まずそうに視線を逸らすセイフィオスの頬はほんのりと赤く染まっていた。


 「私も同じです。もし自分の命が危険に晒されても、セイをきっと助けたいって思うと思います」


 「ちょ・・ルナ?・・それって・・」


 二人掛けソファに並んで腰かけるセイフィオスへ真剣な眼差しで告げるルナセラ。


 動揺しつつもセイフィオスは彼女の頬をそっと優しく触れた。


 喜色を浮かべたセイフィオスの顔は吸い寄せられるようにルナセラの顔に近づいていく。


 まるでそれが当然の流れのように、熱の籠った眼差しはルナセイラの瞳を愛おし気に見つめ、気づけば両の頬はセイフィオスの手で優しく包まれていた。


 視線を逸らすこともできず、ただ互いがのぼせた様に見つめ合う。


 ――私・・・もしかして・・


 甘い雰囲気に呑まれ、ルナセラはセイフィオスに身を委ねても良いと思えてしまっていた。


 


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