4.格の差
「さぁ、終わりだ。」
カマエルが振り上げた手を下ろす。無数の光が俺たちに近づいてくる。だめだ。避けられない。死ぬ。
「ん、。」
瞑った目を開く。あれ。死んでない。でも、カマエルの技に当たったはずじゃ。顔を上げると1人の男が俺たちの前に立っていた。黒上に黄色の瞳でどんな女の人でも落とせそうなくらい顔立ちが整っている。
「よく頑張ったなお前ら。あとは俺に任せとけ。」
その男は肩をならしながらカマエルの方を向く。その表情は少し笑い、余裕に満ちているようにみえる。
「さっきの技なかなかの威力だな。お前上位階級の天使か。」
「なんだ貴様。今何をした?」
「ん?何をしたって、ただお前の技を圧縮して潰しただけだけど?」
「潰した?光にそれなりの魔力を込めて放ったんだぞ。そんな何事もなかったかなようにできるわけがない。」
「おいおい、自信があるのはいいことだが、少し過剰すぎないか?俺がこれまで殺した天使はもっと威力の高い技使ってたぜー?」
まるでもっとうってこいと挑発するように男は言う。
「人間風情が舐めるなよ。」
「おぉ、いいねその顔。」
カマエルが再び天に手をかざすと光が剣の形となり無数に出現する。カマエルが手を振り下ろすのと同時に光の剣がいっせいに男のところに降り注ぐ。男は手を前にだし、少しひねる。すると手の周りの空間が歪み、全方向から飛んでくる光の剣を一点に集める。
「おいおい、本当にこんな子供遊びみたいな攻撃で殺せると思ったのか?だとしたらがっかりだよ。」
そう言って男は頭に手を当てがっかりしてるポーズをとる。
なんなんだ、この人は。今の攻撃も俺じゃ確実に防ぎきれない。なのにあんなに簡単に全て防いだ。
「どこまでも鼻につく人間だ。」
「そりゃどーも。」
「光のオーラ。」
カマエルの詠唱と同時にカマエルの背中に光の輪ができ、地面に大きな魔法陣が描かれる。
「おっ、やっと本気か?いいねー!そうかなくちゃな!」
男はどこまでも楽しそうに言う。カマエルは右手に一本の光の剣を出現させる。その瞬間男とカマエルが視界からきえる。男とカマエルが目で追えない速度でやりあってる。カマエルの光の筋がいくつも曲がり、曲線を描いているのだけを視認できる。
って待て。あの人は武器も持たずに素手で対抗してるのか。どーなってんだよ。
光がある地点で止まったと思った瞬間、光が直線で地面に落下する。その先を見るとカマエルが地面に打ち付けられている。
「おいおい、光のオーラを使ってもこんなもんか?大したことねーな。」
男は地面に打ち付けられたカマエルの前に立ってあくびをしている。カマエルが顔をあげた瞬間、男が人差し指を上にたてる。カマエルの体が空に打ち上げられる。男はカマエルの到達点にほぼ瞬間移動し、回し蹴りをカマエルにくらわせる。カマエルは空から近くの大木に打ち付けられ、口から大量の血を吐く。
「もう終わりか?天使。お前は何人、人を殺したと思っているんだ。楽に死なせるわけないだろ?」
男は態度にこそ余裕はあるがその目は笑っていない。
「神法 壱式 冥。」
男は手のひらの上に青色の魔力を凝縮させたようなものを握る。手から溢れた魔力がカマエルの体へと落ち、おおっていく。
「ああ、あーーーー。」
カマエルの悲鳴が響く。
「収束。」
カマエルの体の周りの空間が歪み、一点に集まっていく。カマエルの体が捻れ、潰されていく。カマエルの体から血が溢れ出すが、止まらずに潰され、とうとう見えない点にまで圧縮され空間の歪みがなおる。さっきまでカマエルがいた場所には紫の血だけが残った。
助かったのか?あまりの光景に理解が追いつかない。あの天使をこれだけ一方的に殺すなんて想像もつかないようなことが今目の前で起きている。周りを見てもみんな同じことを考えているのか、心ここにあらずと言ったかんじだ。
「おい、お前ら無事かー?」
男が近づいてくる。
「怪我はひでーようだけど、生きてるみたいだな。俺がくるまでよく頑張ったな。」
男は笑いながらグッドマークを手で作っている。
「あなたはいったい?」
「ん?ああ、俺か?俺はノア・セルファ。最強のハンターだ!」




