第85話 Sランク候補の転校生
「Sランクになってるかな」
「なっているといいですわね。ほら、あそこに試験結果は張ってありますわ」
「人がいっぱいなのです」
連絡ごとなどが貼り出される玄関口の掲示板に、昨日の分の試験結果が張り出されているが、すぐには見れそうもない。
でもなんでだろう……今日貼り出されるのは昨日試験を受けたものたちの分だよな? グランド組が多いからか?
「本当に混んでるな」
人だかりで掲示板の上の方だけしか見えないほどだ。
「でもここでぼーっとしていても見れないし、近づいて見ようか」
「行くです」
上履きに変え人だかりに近づいていくと、なんだか視線を感じる。それによく聞き取れないけど俺たちのことをなにか言ってるようだ。
だけど、俺たちが近づくと掲示板の前が人が通れるくらい隙間が開いていく。
一歩進むと半歩分隙間が開く感じだ。
「ぬふふふ。モーセのようなのです」
モーセってなんだ?
「あら、シオンはそのお話知っているのね」
「ん? そのシーンだけなのですよ?」
「モーセの十戒を一度だけ見ただけですが、あのシーンは私も印象に残ってますわ」
へえ、シーンってことは映画かなにかか、シオリに聞いて今度見てみようかな。
掲示板前につく頃には三人が並んだまま歩けるほど左右に人が分かれていた。
「えっすらっんくー♪ えっすらっんくー♪」
「ふふ、楽しみね」
シオンが真ん中で、俺たちの手を握りブンブン振り回す。
そしてついに掲示板の真ん前に到着した。
「あったのです! Sランククラスなのですよ!」
「ありましたわね」
「よし、これでスタートラインに立ったな」
ランク別に貼り出された試験結果。A4サイズのコピー用紙には、Sランクの文字がドンと印字され、その下に――
Sランク
長門 零
大和四織
大和四音
と、デカデカと三人の名前があった。
これで二年に上がればSランククラスになる。ランク別のクラスだから、今のところ一年でSランクは俺たちだけみたいだ。
「これで今日から学園のAランクダンジョンに堂々と行けるです」
「ですわね。私は何度かリバティと入ったことがありますが、驚くと思いますわよ」
驚く? モンスターが強いってことか? まあ、行ってからのお楽しみって言ってたからな、本当に楽しみだ。
「というかシオン、堂々って、こそこそも行ってないだろ?」
「行ったこと? 当然ないのです」
胸を張るシオンはなぜかドヤ顔だ。
「ふふ、ではホームルームが始まる前にランクカードの更新してしまいましょうか」
「職員室なのです? あまり行きたくないのですよ、悪いことしてないのに緊張するです」
「ああ、わかる気がするよ。俺もあまり行く機会もなかったしな」
「そんなことを言ってないで行きますわよ」
「だな。ほら行くぞシオン」
足が重そうな真ん中のシオンの手を、シオリと二人で引っ張り、掲示板の前を離れ職員室に向かった。
「これでAランクダンジョンに入れます。破損したり紛失したときは再発行しますので、すぐに職員室まできてね」
昨日試験官をしてくれた先生が俺たち三人にカードを一枚ずつ渡してくれる。
生徒手帳のクリアカバーに挟んでおいて、ダンジョンに入るときはこれを見せないと入れないってことだ。
「ありがとうございます」
「ありがとです。おおー、ピカピカのカードなのです!」
「そう、ですわね。はじめて見ましたわ」
「それはそうよ、現状Sランクの学生は今日のところは君たちだけからね」
今日のところってことは、この後の試験でSランクになる人がいるかもってことか。
「それに、学園が創立して以来、君たちを含めてまだ片手で数えられる人しかSランクになった人はいないから当然ね」
そんなに少ないんだ。そりゃ見たことなくても当然だな。
「でも今年はあなたたちの他にもう一人可能性がある子がいるの。転校生なんだけど、本当に今年は驚かされることばかりだわ」
「転校生、ですか?」
「そうよ、今日の試験次第だけどね。ほら、ホームルームが始まっちゃうわよ、教室に行きなさい」
「はい。先生は今日も頑張ってくださいね」
「頑張るですよ?」
「無事に終わるよう応援しておきますね。では、失礼いたしました」
「ありがとう頑張るわ。………………だってあなたたちがいないから今日は何事も無いはずだし……無いよね……でも転校生がいるのよね……」
途中から声が小さくなり、なにを言ってるかわからないけど……なにか取り憑かれたようにぶつぶつ言ってる。
そんな先生の机の上にシオンはチ○ルチョコをひとつだけ置いて、『元気出すですよー』と言ってた。
……まあいいか。昨日はちょっと自分でもやりすぎだった気もするし、先生も疲れちゃったんだろうな。
小声で『昨日はごめんなさい』と謝っておいた。
そんな先生を置いて職員室を出て教室に入ると、ザワザワしていた教室が静まり返って俺たちに視線が集まった。
そりゃみんな知ってるよな。聖一のせいだとしても、最底辺と言われていた俺がいきなりSランクだし。
席につき、ホームルームが始まると、隣のクラスから歓声が上がった。
「おお。騒がしいな。そうだみんな、うちのクラスからSランクが出たことは知っていると思う。それに、Aランクも出そうだと試験官が言ってたぞ」
「「「「「「おお!」」」」」」
「ははは。これでうちのクラスの声も向こうに届いただろう。それに向こうにはSランク候補がいるそうだ。今学期に転校してきた女の子だ」
転校生は隣のクラスみたいだな。
「っと、そろそろ時間だな。今日試験のものは準備して集合場所へ。昨日試験が終わったものと、明日試験のものはこれで終わりだ。気をつけて帰るんだぞ」
ホームルームが終わり、バラバラと教室から出ていくものたちの流れに俺たちも乗り、廊下に出ると――
「高田さん、Sランク頑張ってね」
「余裕だろ、今年は試験基準が低いみたいだしさ」
「そうそう、高田さんなら絶対Sランクになれるわ」
と、一人の金髪青目の女の子がたくさんの人を引き連れて隣の教室から出てくるところだった。
高田っていうのか、あの子がSランク候補ってことだな。でも先生に聞いた通りかもしれないな。
アレだけ取り囲まれて、接触もあるのに身体の軸がプレてない。
「応援ありがとう。頑張るわ」
強そうだな。




