第83話 思わぬ味方
Bランクダンジョンで手に入れた大量の魔石を、あらかじめストレージから移しておいた魔法の鞄から取り出し買い取りカウンターに出す。
次から次に出てくるBランクダンジョンのテニスボールほどもある魔石に目を丸くする買い取り担当のおじさん。いつも見かけるおじさんだ。
「これで魔石は全部ですね。あと、これもっと」
ズシっとカウンターが軋むオーガのこん棒を六本。もちろんシオンがどうしても残しておいて欲しいと言うので二本は残してある。
後は何本かドロップしたツーハンドソードや槍、斧に杖などの武器類を計二十三本。
防具類も使わないもの、後は素材系のドロップ品を次々と取り出した。
「お、おい、この赤い皮ってBランクダンジョンのボスドロップじゃないか……」
「そうですね。レッドミノタウロスの皮ですし、斧もそうですよ」
「赤くて大きい牛さんだったのです。ぶもー言ってたのです」
「君たち若いのに凄く強いんだな。この前まではゴブリン系のものしかなかったのに、頑張っているようで何よりだ。よし、査定するから探索者カードを出してくれるか?」
「はい。みんなの分ですか?」
「そうだな、君たちはパーティーだろう。だったら代表のものだけで大丈夫だ」
「なら俺のでお願いします」
さっきお姉さんに返してもらった探索者カードをおじさんに手渡し、査定が終わるのを待つ。
「あらあら、今日も大漁ね、ランクは違うみたいだけど」
話しかけてきたのは、よく買い取りしてもらってるお姉さんだ。おじさんとお姉さんの二人で買い取り担当をしている。
「ええ。今日は学園の試験でBランクダンジョンに行ってきたんですよ」
「レッドミノタウロスのドロップ品があるってことは……嘘っ、凄いじゃない! Aランク探索者だよ! 学生だと聞いたことないんだけど! ってことは三人のAランク探索者が増えるのよね! これは特別ボーナスが出るかも!」
目をキラキラさせてカウンターの上にある魔石を撫でている。
へえ。Aランク探索者が増えればボーナスが出るのか。この人たちにはほぼ毎日お世話になってるし、出ると……って駄目じゃん。
「そう、なる予定だったんですけど、新しい市長さんが信じてくれなくて、隣の市にランクアップの申請にこの後行く予定です」
「なんだと!」
「嘘でしょ!」
査定をしていたおじさんと一緒にお姉さんもホールに響き渡るくらい大きな声を出した。
「あの新市長なにやってるのよ! せっかくうちのエリアからAランクが出るっていうのに! 馬鹿でしょ!」
「馬鹿かあのヤロウは! だから私は探索者をしたことのないものにギルドマスターは無理だと言ったんだ!」
「は? え?」
「ちょっと待ってなさい!」
「ちょっと待っててくれ!」
そう言うとレッドミノタウロスの斧と皮、そしてソフトボールほどの大きさがある魔石を手に取り奥へ消えていった。
と思ったら帰ってきて――
「そっちの二人も探索者カードを貸してもらえるかな?」
「ちょっとあの馬鹿市長を締め上げてくるからよ」
シオンとシオリもその迫力に探索者カードをあわてて取り出した。
「君たちはそこでゆっくり待ってなさいね」
「そうだ、これでジュースでも買って飲んでいなさい」
探索者カードを持っていくお姉さん。五百円玉を渡してくれるおじさんは、今度こそ奥へ消えた。
「……何か飲む?」
「……伊藤○のコーンポタージュ」
「……緑茶を」
「じゃあ……買ってくるついでに受け付けのお姉さんに一言言ってくるよ。隣の市に行かなくても良くなるかもって」
五百円玉を握りしめ、他の職員や探索者建ちに注目されながら車をまわしてくるだろうギルドの正面に出た。
少しだけ待つと、黒の軽自動車が止まり、窓が開いたので、事情を説明すると――
「あの二人が! それならもしかするともしかするかも……、気になるし私も行くわ。だから君は戻っておいて」
「はい、って! 行っちゃったよ……」
ブオンと勢いよく走り出し、ギャギャギャギャとUターンを決めたお姉さんは、来た道を戻り、職員用と思われる駐車場に入っていった。
「コンポタと緑茶買って戻るか……」
自分の分はココアにして、熱々の缶を三本持ちながら買い取りカウンターに戻る途中、奥の扉から新市長を連れて出てくるおじさんとお姉さんが見えた。
これは……すぐには飲めないかもな。とりあえず急ぐか。早足でシオンたちの元に戻る。
「止めんか! 離せ! こんなことをしてただで済むと思っているのかお前たちは!」
「市長! なぜBランクダンジョンをクリアしたとわかるものたちをAランクに上げないのですか!」
「何を言っている! それは機械の故障だろ! 学生がクリアなどできるはずがない!」
「ならこの魔石やドロップ品はどう説明するんですか! 一目見てレッドミノタウロスのものとわかる! いいか、レッドミノタウロスは今日学園が試験をするため他の探索者は入ってないBランクダンジョンのボスだ!」
「そうよ! それもこの数を見なさい! 一回や二回じゃないは、何十回も倒してきているの! それにこの子達の鞄は魔法の鞄よ! それも三つあるの! 魔法の鞄、市長の給料でも買えるものじゃないの! 分かってる!」
おお、凄い勢いで市長さんが詰められてるな。
野次馬気分なのか探索者さんたちも聞き耳を立てて、こっちに注目している。
その注目の的である市長さんはカウンターに腰が当たり、それ以上下がることもできずにのけぞって苦しそうだ。
あ、このこと高橋さんにも伝えておいた方がいいのかな?
まだまだ市長攻めは終わりそうにない。ココアでも飲ん……シオンはすでに飲み始めていた。もう片方の手には栗饅頭。
完全に観戦モードじゃん!




