第67話 山本先輩の最後
「……そう、私は負けていたのね」
笑い終わった山本先輩は何か憑き物が落ちたようなスッキリした顔をしている。
「ええ。あの人たちは妖怪みたいなもので、そう簡単に打ち負かせないでしょうね。変に打ち負かしてしまっても、日本経済に多大な影響を及ぼしますので、事前に釘を刺させてもらいました」
「それで、私を佐藤家の暗殺から助けた意味はそれだけなの?」
「ええ。若い命が奪われたのですから、奪った方にはそれ相応の罰が必要だと思ったのもありますけどね」
「ふん。だとしたらクソ爺たちを引退させたのは失敗ね。山本家、佐藤家、成瀬家も次期当主は能無し揃いよ、だから私が御三家を纏める計画を立てたのに」
「そのようですね。あのような麻薬に手を出すなんて自分の首を絞めているようなものですから」
「それも知っているんだ。クソ爺たちは手を出さず、見て見ぬふりをして甘い汁だけ吸い取って……アレの経済効果は分かっていた。危険と隣り合わせのね。そっか、尻尾切りにされてたのか。あはははははははは! 本当にズル賢い妖怪共ね」
「ですが山本凛さん。あなたがでしゃばりすぎたので、ご両親たちの首が繋がったんですがね」
「そうなるのか、失敗しちゃったな……。それで、何を聞きたいの? こうなったらなんでも喋るわよ」
「レイくん」
「先でいいのですか?」
「ええ。そうでないと気になって仕方ないって顔していますし、あまり聞いてもらいたくない話も出るでしょうから」
知ることでヤバい状況になりそうな話とか、高橋さんの雰囲気からありそうだし、俺ひとりならともかく、シオンにシオリ、ミクは絶対巻き込みたくないもんな。
「分かりました、先に聞かせてもらいます」
高橋さんから椅子に座る山本先輩に視線を移す。この後どうなるか分からないのに、本当に落ち着いた顔をしている。
「……何が聞きたいか分かるから話すけど、レイくんのご両親はただの事故ではないわ。当事者じゃないから詳しくは知らないけど――」
山本先輩が話してくれたことは、佐藤先輩の件で可能性があるかもと考えていたことだった。
「――それをやった、指示したのは御三家の妖怪クソ爺たちよ。どう、これでレイくんが聞きたいことは終わり? ああ、もう一つ」
だから、やっぱりそうかと納得できた。終わりかと思った時、話を続ける。
「妖怪クソ爺たちが私たちに依頼したのはね、これ以上結果の出ないハズレスキルに金を出したくない、だからレイくんを探索者から引退させろと言われただけなの」
「え? でもモンスターハウスに置き去りにしたでしょ? あんなの俺が運良く覚醒したから切り抜けられただけだぞ」
「ホント、生きてるなんて思わなかったわ。私と豪ははじめ、足の一本でも切っちゃえばって思っていたんだけど、事故を装って殺そうと考えたのは聖一くんよ」
「……聖一、が」
「まあ、聖一くんは保育園の頃から妖怪クソ爺たちからレイくんの友達になれって言われてたんですもの、あの子の性格的に我慢できなかったんじゃないかな」
「そうだったんですね。でももう知りたいことも知れましたから大丈夫です。聖一とはもう二度と会わないと思いますけれど」
山本先輩はなぜかつまらなそうな顔で深く息を吐き出した。
「はあ……私が同い年ならよかったのかも。レイくんは顔も性格も結構好みだったし、まかり間違えば……ね」
どういうことだ? 俺と同い年ならどうなるんだ?
「ああ、でもこんな性格じゃ駄目ね、他人は駒としか考えられないんだもの。そう育てられたってこともあるだろうけど、染み着いちゃってるもの……」
ひとり納得したように目を閉じ、また目を合わせるように俺を見てくる。
「それに……リバティに大和四織さんを再起不能にしろって命令したのはある意味嫉妬だったのよね。一年で一番強いしアイドルやモデルみたいな美少女だし……そして妹の四音ちゃんを荷物持ちにして虐めようとしたのもかな」
嫉妬、そう言われて山本先輩が言いたかったことが分かった気がする。
そして俺から背後に目線がズレる。
「ごめんね、四織さん、四音ちゃん。こんなこと言えた義理じゃないけど、レイくんのこと頼んでおくわ」
「山本先輩。そう、だったのですね。分かりました。そのことに関しては、レイと出会うきっかけにもなりましたので、不問で良いですわ。それに先輩のためではありませんが、言われるまでもなく、シオンと二人、レイを支えていきます」
「んー、山本はレイが好きだったのですか? だったらバカなのです。好きなら一緒に楽しめばよかったのですよ。あと、りばていのムキムキたちは後でボコボコにするのですよ」
「ちょっ! バ、バラさないでよ! 鈍いレイくんだったら分からなかったはずなのに……でもありがとう二人とも。レイくんに話せるのはここまでかな」
そう言ってまた俺の姿を目に焼き付けるように見てくる。いや、意味は分かってましたよ。
「では、皆さんは席を外してくれるかな」
「わらわは残るぞ。ちと気になることがあるでな」
「じゃあ私とタマさんだけここに残りますね、自衛隊の方々も席を外してください」
「さようなら」
部屋を出ようとする俺たちの背中に山本先輩の震えているが、諦めたような声が届いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「さて、話の前に一言だけ。山本凛さん。あなたには死んでもらいます」
「……そうね。……はあ。こうなった以上、覚悟はしてたけどキツイわね。でも……そうしないと話がまとまらないんでしょ?」
「ええ。話を聞いてからになりますが。まず最初に聞きたいことですが――」
読んでいただきありがとうございます。
第二章完結です。
とりあえずのところ、ざまぁは消化?
かな?
まだ続きますので、しつこいようですが、ブクマや★★★★★で応援よろしくお願いいたします。




