第64話 俺がやらないと
ダンジョン前からヘリポートに移動する時に高橋さんからとんでもないことを聞かされた。
なんと、シティホール屋上に着陸したヘリを自衛隊が確保していたそうだ。
一瞬なんのこと? と思ったけど、山本先輩はそのヘリを呼んで逃げる算段をしているとわかり自衛隊員が変装して迎えに行ったとのこと。
正直に自衛隊スゲーと感心するしかなかった。飛び去ったヘリを見て、逃がしてしまったと思っていたのにカバーは完璧。本当に助かった。
だけど……搭乗者の女性パイロットと、乗っていた二人の女性たちを使った作戦を聞いて絶句した。
聞くとヒク作戦だったけど、その人たちと山本先輩たちがやっていたことを聞いて考えが変わった。
ヘリに一緒に乗っていた山本先輩の部下三人の他に、部下ではない一般人の女性は拉致されていた方だと聞かされたからだ。
全裸でヘリに乗せられ、何かヤバい薬を使用している聖一の相手をさせられる予定だったとのこと。
さらにその三人だけではなく、十数人を同じように拉致を繰り返し、聖一に与えていたと聞いて、自業自得だなと納得させた。
それからは時間との戦いだ。聖一たちがヘリポートに到着するまでの時間がタイムリミット。
多少は自衛隊員が操縦しているため時間は確保できるが、ゆっくりしている暇はなかった。
自衛隊員たちは、中部国際空港のヘリポートに巨大なエアクッション用意して、さらにプライベートジェットがある格納庫を制圧したりと大活躍だ。
さすが日頃からいろんな訓練をしているだけのことはある自衛隊の皆さんはすごいと素直に思えた。
だけどヘリポートについてから、俺じゃ絶対にできないようなことを一瞬で考え、指示して動かせる力を目にして、自分の非力さを再確認された。
自慢じゃないけど、この数ヶ月で相当強くなったと思う。いや、実際に強くなったと実感できている。
でも……そうじゃないんだ。自身の強さだけでなく、自分の意見を通せる世間的な強さをあわせ持たなきゃ駄目なんだとこの一時間ほどで思い知らされた。
将来的に妹のミクや奥さんになって欲しいシオン、シオリ。それにタマちゃんやエンちゃん、前鬼さんに後鬼さんたちとも楽しく過ごすためには今のままでは駄目だ。
自衛隊員たちに指示を出し、聞かれたことには一瞬で答えを出して答えている高橋さんのような強さが必要だ。
……これまで、たくさんの人に期待されていたのに、ほぼ期待に応えられていなかったと、今更ながら申し訳ないと心底思う。
でも本当に自分のスキルがなんの役にも立たなかったんだ。レベル5になるまでは。
友達すらできなかったのはそんなスキルのせいにしていたときもある。実際、スキルが発覚してすぐは、たくさんの人たちに囲まれていたと思う。
政府の方針で、たくさんの税金が育成補助金として投入されていたから研究所の大人が多かったけど。
でもそれでもよかった。俺のまわりには父さんと母さんにミクがいてくれた。そして、いじめっ子から一転『ともだちになろうぜ』とはじめてできた友達……聖一もいた。
それ以外は誰もよってこなかったけどな……。
まあ、それは御三家のせいだったことは佐藤先輩が教えてくれたけど……。
はぁ……俺、これだけ強くなったんだからと、うぬぼれてた。だって凄く頑張ったんだぞ?
……でもまだまだ頑張りきれてなかったんだな。
高橋さんの言葉や動きは一朝一夕でできることじゃない。たくさんの方との繋がりがあってできることだ。
俺は今回のことを解決させて、そんな強い男にならないと駄目なんだ。
だから――
『高橋さん! お願いがあります! 聖一のことは俺にやらせてください! 必ず倒しますから!』
――と。その場にいた全員が凄く驚いた顔をしていた。自衛隊員の方からも、『子供が出る幕ではない』とも言われたけど、ここは譲れなかった。
『これは俺が甘かったから起こったことなんです! お願いします! 俺があの時助けなければこんなにたくさんの被害者は出ていなかったんです!』
『レイくん。それは成瀬聖一くんを殺す覚悟があると言うことですか? 今回聖一くんの捕縛というのはそう言うことですよ』
『はい。騙され、裏切られたとはいえ、聖一は俺にとって唯一の友達……親友だったんです。だから俺が終わらせないと駄目なんです』
あのスタンピードの時に決断できなかった俺の罪だ。
……怖い。聖一の命を奪っても、俺はそのままの精神状態でいられるのだろうか。
……怖い。将来みんなと楽しく過ごせるのだろうか。
……怖い。またまわりに誰もいなくなるかもしれない。
……でも。
「必ず一撃で終わらせます。だから俺にやらせてください! お願いします!」
深く頭を下る。いいと言われるまで上げる気はない。
ピーピーと音が聞こえ、続けて人の声が聞こえてくる。そしてザワザワとまわりが騒がしくなる。そうヘリの音が聞こえてきたのだ。
「ヘリを黙視で確認! 配置につけ!」
そして――
『ではカウント始めます……3 2 1 投下』
「来ますよ! クッションで受け止めますから女性三名はみんなで確保! 成瀬聖一くんは、任せていいんだねレイくん!」
「はい! 任せて下さい!」
「聞きましたね! 成瀬聖一くんはレイくんが倒します! 邪魔は私が許しません! レイくん行きなさい!」
ガバッと頭を上げ、落ちてくる聖一に向かって――
「身体強化! トリプル!」
全力で地面を蹴り、一瞬で聖一の目の前に――
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