第42話 眠れぬ夜 ♡
曲がり角を何度か折れて、ダンジョンの出口までやって来た。
「シオン。そろそろ下ろしてあげましょう」
「ぬ? 重くないですよ?」
「……ごめん、下ろして。もう落ち着いたから」
シオンの肩にかつがれたままだ。
途中で何度も下ろすように言った。だけど下ろしてはもらえず、道中説教を受けていたわけだ。
だって仕方ないだろ? シオリを奪うようなことを言ったんだぞ? 怒るよな?
まあ佐藤先輩たちの最終的な目標はわからなかったけど、その計画の中に俺たちが含まれているのがわかったのは正直助かった。
「よいしょーです。レイ、今は行っちゃ駄目なのですよ?」
「う、うん。それと、色々教えてくれてありがとう……その、子供がどうやって作られるとかも」
そう。佐藤先輩たちが言ってたいただくの意味。それも教えてもらったけど、正直に言って男性と女性のアレコレはよく考えたら一度も授業で習ったこと無かった。
保健体育の授業はいつも聖一が俺を連れ出してたからな……。
……うん。これまで生きてきて最大の驚きだったと共に、シオリにそんなことしようとしていたアイツらのことが許せるわけもなく、またそこで下ろしてもらおうとしたんだけど、結局下ろしてはもらえずじまい。
それから自分の身体のことで、たまに大きく硬くなって邪魔だなと思っていたのに、そんな使い方があったなんてはじめて知った。
それを女性の……ついてないなと思っていたけど、俺のが入って……。
――っ! まだダンジョンの中だぞ、なに考えてんだ俺!
あっ……シオンとシオリの視線が……すいません。すぐにはおさまらないのでそんなに見ないでいただけると……。
三人共に顔を赤くしてダンジョンを出た。
帰りのバスはシオンとシオリが並んで座り、俺は一人で座った。
ダンジョンへ向かうときと同じなのに、真ん中の通路を挟んだだけの距離がものすごくもどかしい溝に思えて、仲良く話す二人を眺めることしかできなかった。
アパートに帰ってきても、二人の顔を見るだけで体温が上昇するのがわかる。これからもずっと一緒に暮らすのに、俺の心臓大丈夫だろうか……。
順番に汗を流し、さっぱりしたところで、夕食を食べ、食休みをかねて今回のことについて話しを始めた。
「二人は佐藤の顔を憶えていますか? 以前のではなく今のです」
シオンと目を合わすとふるふると横に首を振る。俺も身体強化のお陰で視力もグッと良くなってるけど、遠かったから完璧に憶えているとは言えない。
「そう、ですわよね。私もさすがにあの距離でしたから確認できませんでした。ですがそれは大丈夫でしょう」
「どうしてなのです?」
「転入生で、私たちに近づくものが佐藤でしょうから、すぐにわかりますわ」
「「あっ!」」
シオンと同時に声が出た。うん。シオリの言う通りだ。
「俺たちのパーティーにもぐり込むと言ってたもんな」
「言ってたのです」
「でしょう? それに研究所が学校に私たちが同じクラスになるように手配してくれていたことも幸いですね」
「そうか。元々は俺のクラスだけど、その、自慢じゃないが、俺によってくるクラスメイトはいない」
「ぼっちなのです」
「ぼっちだった、ですね。今は私たちがいますから、ぼっちは卒業で良いのではなくて?」
「おお~、レイ、ぼっち卒業おめでとうなのです」
「シオン。あなたも人のことは言えないでしょ? 奇抜すぎて誰も寄ってこなくなり引きこもったのですから」
「藪蛇どころかヤマタノオロチが出てきたのですよ! わたしにはお姉ちゃんがいたです! だからぼっちじゃなかったのです!」
いや、それ言うなら俺も三久がいたぞ。その前は偽物だったけど、聖一と二葉もいたし……。
あっ、目から汗が…………。
そういえばそうか、シオンもシオリの怪我を治すために部屋から出たんだったな。
そして病院のエレベーターで出会い、シャトルバスで隣に座り、その帰りにパーティーを組んだ。
まだ三ヶ月とちょっとしかたっていないけど、シオリも仲間になってくれたし。うん。ぼっち卒業だ。
「ぼっちはさておき、今日は復帰初日で、激しく動きましたから、もう休みましょう。早ければ明日。明日でなくとも数日の間に向こうから接触があるでしょうから」
シオリがあくびをかみ殺し、目じりをこすっている。
俺も結構疲れたから、横になればすぐに寝れる自信がある。
「そうだな。そこで転入生なのか確かめれば、ほぼ佐藤先輩で確定だ」
「簡単なのです。その後どうするですか?」
「シオン、そんなの決まってるでしょう」
「ん~、入れて監視するですか?」
「入れるわけないだろ? 本当の目的がわからないけど、シオリのことも目的の一つってわかってるんだぞ? だからこそアイツらには大切なシオリに近寄って欲しくない」
「大切な……レイ……その通りでしゅわ」
「ちょろいんです」
今度シオンに『ちょろいん』の意味を教えてもらおう。
コンコン。
ダンジョン再開で思ったより疲れていた俺たちは、早々に寝ることにした。
すっかり寝入っていたところに、部屋のドアが叩かれる音で目がさめたんだけど……誰だ?
「はい。開いてるよ」
「レイ、起きてたです?」
「シオンか、どうした? ……もしかしてシオリが!」
「ぬ? お姉ちゃんはぐっすり寝てるですよ? えと、入っても良いです?」
「ああ、構わないけど、どうしたんだこんな時間に」
シオンが抱き枕にも使える長い枕を抱きながら入って、うしろ手でドアを閉めた。
「あ、あの、ね、眠れないのです……」
「そうなんだ、なら話し相手にいっ! ってシオンなんて格好してるの! ぱ、パジャマは!」
「ううっ。帰りにえっちなお話しいっぱいちゃったからドキドキして寝れないのです。だ、だからレイが責任取るのです! 身体凶化! えいっ!」
「はっ? え? うげっ!」
凶化された力で投げられた枕で目の前が真っ暗に。そしてすぐあとに柔らかくてあたたかいものが抱きつくように俺を押し倒した。
「シ、シオン、お前、ちょ、待てそこは――」
「待たないです。救命処置だけど、もうちゅーもした仲。レイはわたしにプロポーズもしてるです。なんの問題も無いのです」
「いや、だけどこんなことは、こ、子供できちゃうんでしょ!」
「……レイならオッケーです。ほら、カチカチ」
なんとか枕をどけることに成功したけど、俺にまたがったシオンが見えた。それも裸だ。
常夜灯の灯りで照らされたシオン。モゾモゾと硬く大きくなり始めた俺のものを優しく撫でている。
「シオン……良いのか?」
断られることは無いとわかっていても聞いてしまう。手の動きが止まり、倒れこんでくる。
「レイ……好き」
「……俺も好きだシオン。後悔はさせない。結婚しよう」
こんなときだがちゃんと返事を聞きたい俺のわがままだ。
もう鼻と鼻がくっつく。
「とっくにそのつもりなのです」
鼻がふれ合い、少しずつお互いに首をほんの少し傾け、そしてゆっくり目を閉じた。
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