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【NTR+裏切り≠ぼっち】捨てられた俺は、騙され搾取されていた君と、友達から始めました。  作者: いな@
第一章

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◆第28.5話 裏切り者たち(聖一視点)

「聖一、モンスターハウスに行くの? 私と二人だと、ちょっと私がキツくない?」


 三階層へ下りる階段の途中で槍を背中に背負った二葉が横に並び、腕を絡めながら聞いてくる。


「いや、五階層のボス部屋まで行く予定だ。お前も知ってるだろ? オーバーフロー作戦」


「うん。半年後の予定を早めているのよね?」


「ああ、今の感じなら一ヶ月後には溢れる予定だ」


 なぜ早まったか。御三家のスタンピードに対する防衛体制が整ったからだ。


 自分達が起こしたことでダメージを受けるとか、馬鹿でしかないからな。


「だからそれをさらに早めれば探索者ギルドも、佐藤先輩の尋問とかやってられなくなるだろ? それに佐藤家が動いたなら先輩の奪還の手助けにもなると考えた」


「そっか! うん。それ凄くいい作戦だよ聖一! 探索者ギルドのバタバタしてくれるなら、佐藤家の先輩救出もやりやすくなるとか本当に凄い! 完璧だよ!」


「だろ? あの策士である山本先輩もまだ考え付いてないスゲー作戦だ」


 柔らかなふくらみを腕に押し付けながら弾む二葉を抱き寄せキスをする。


「んふっ。うん。本当にすごいよ聖一。あ、でもどうやればスタンピードが起こせるの?」


「それはな、五階層のボス部屋の奥にあるダンジョンコア見たことあるだろ?」


 階段を下りきり、二葉を離れさせる。


 このまま階段で一発と行きたいところだが、スタンピードを起こした後にしようと、腰の双剣を抜いた。


「うん。入場制限前は、夜に何度か行ったよね」


「あのダンジョンコアの魔力余剰分で、モンスターハウスのモンスターたちが出てきてるのは知ってるよな?」


「この前の授業で先生が面白おかしく話してたから」


 その通りだ。くだらねえ歴史の時間だったが、その話のお陰で俺もモンスターハウスのことがわかったからな。


「ならよ、今はスライム、スイーパースネイル、ゴブリンの微々たる魔石の魔力で調整してるんだが、そこに俺たちの魔力を足してやれば?」


「あ! そうか! スゴいよ聖一天才だよ! 大好き!」


「まあな。日に数十個のゴミみてえな魔力しかねえ魔石の魔力供給でオーバーフローを起こせるんだぜ? これくらい俺様にかかれば余裕だっての」


 単純計算で、俺の魔力は魔石千個分はある。今のところ魔力だけはSランク探索者と比べられるほどあるからな。


 特に俺は歴代でも並び立つものがいない魔力持ちだ。二葉もなかなかのもので俺の五分の一もないが、そこそこのBランクレベルの魔力が有る。


 そんな俺たちが持ってきた魔力回復薬も合わせれば、一ヶ月後を予定していた決行日なんてものは大幅に短縮間違いない。


 てかよ、探索者が帰った後のダンジョンは、暇ができるかできないかのちょうど良いタイミングで、ゴブリンと遭遇するからストレス発散にはもってこいだよな。


 なんだかんだで家から言われているからってのもあるが、俺たちならDランクダンジョンでレベル上げしても良いくらいだ。


 まあ、先輩たちも俺も嫡子だから過保護なのはしかたねえよな。


 おっ、サンドバッグ(ゴブリン)がさっそく歩いてきやがった!


「オラァアアア! クソザコがぁ! ぶっ飛べや!」


 あー、やっぱこれだよな。好き勝手できるの気持ち良すぎる!


 痛みや屈辱で歪む顔が見れないのは減点だがこれはこれでスカッとする。


 気分よく、五階層を目指して進みながらゴブリンどもを倒し、後ろで二葉が魔石を広い集めついてくる。


 そしてまた良いタイミングで――


「聖一魔力回復薬だよ~。今度は口移し~んちゅっ」


 ――と、魔力回復薬を補充してくれる。本当に気がきく良い女だ。


 だがなんだ? ダンジョンはいつも通りだよな。探索者がいなくなった夜のダンジョンだからゴブリンと遭遇する回数は多い。


 それに切った感じがいつもと違うんだよな。研師(とぎし)の野郎、手入れサボりやがったか?


 双剣の刃をじっと見て、触れてみるがいつもとの変化はわからない。


 わからないが……、だがまあ微々たるもんだ、気にしてもしかたねえな。





 三階層を通り抜け、遠距離攻撃がマジウザい四階層も違和感を感じながら通り抜けた。





 そして下りた五階層はボス部屋だけしかなく、階段を下りきったところにある、開けっぱなしにされた扉をくぐり、到着したんだが誰もいない。


 オーバーフローを進めている奴らも、いたはずのボスもだ。


「あれ~。誰もいな~いね?」


「だな。奥のダンジョンコアのところにいるんじゃねえの? ボスもいねえしよ。行くぞ」


「は~い」


 双剣を鞘に戻し、腕に絡み付いてきた二葉を引き連れ奥の部屋に入ったんだが、そこにも誰もいなかった。


「どうなってんだ? 魔石でも補充しに行ったのか?」


 四階層に戻れば魔石の補充はできる。が、そんな無駄なことはしてねえ。昼間、別グループが魔石を集め、夜のグループに渡しているからだ。


「いないね。どこかで休憩かな? どうするの?」


「……」


 二葉の言葉を無視してダンジョンコアを見る。知っているものと変わりはない。


 だがなにかおかしい。ここにいるはずのものたちがいないのもそうだが……。


 四階層は多少厳しいが俺ひとりで戦い、イライラを発散するつもりだった。


 謹慎中も夜に皆で入ってレベル上げしていたくらいだからゴブリンどもの強さは良くわかってる。


 だから二葉に魔石拾いだけやらせてたってのに、開けてみればいつもより多いゴブリンたちと、切れにくい双剣のせいではあるが、二人で対応しなきゃならなかったほどだ。


 何度も攻撃を受け、回復薬の使用頻度も、帰りが心配になるほど回数を重ねてきた。


 なんなんだ。確定で一撃だったゴブリンどもが一撃で倒せた方が少ないとか何が起こってる。


 ああー! くそ、なんで思ったようにことが進まないんだよ!


「聖一? どうしたの? 私なにかやっちゃった? だったらごめんなさい……」


「……考えてもしかたねえな。二葉、お前はなにも悪くねえよ。ちと予定と違っただけだ」


 引き寄せ唇を重ねると、緊張して固くなっていた体が、あからさまにホッとしてゆるんだ。


「考えてもしかたねえな、よし、二人で魔力をコアに流すぞ」


「うん。魔力回復薬もまだあるからいっぱい流しましょう」


 残り四本の回復薬を二本ずつ持ち、俺たちは部屋の中央にある台座に乗ったダンジョンコアに同時に触れた。


「なっ!」


「えっ! なにこれ一気に吸われてる!」


 触れて、魔力を流し始めた瞬間、コアの中心が強く光始めた。


「なんだこれは……くっ、魔力が――ヤバい気がする! 中止だ離せ二葉! って離れねえぞ! どうなってんだ! クソが!」


 触れた手が接着剤で固定されたように離れる気配がない。力いっぱい引こうが押そうがビクともしない。


「駄目、もう魔力が――」


「二葉回復薬だ! 早く飲め!」


 二葉よりは魔力のある俺でさえ、この勢いで吸われたら、あと一分も持たない。


「なんなんだよこれは! クソ! しかたねえ、壊すぞ!」


 双剣の一本を鞘ごと腰から外し、魔力を纏わせ全力でコアを叩き割っ――


 ガキン――


 ――た、はずだった。結果は砕けず、手がしびれただけだった。


「なんで壊れねえ! 壊れろ! 壊れやがれ!」


 ガキンガキンと連続でコアに攻撃するが、そのすべてが弾き返された。


「聖、一、もう、魔力、だ、め……」


「それどころじゃねえ! どうなってやがる!」


 白目を剥いて崩れ落ちた二葉にも構ってられず、コアに攻撃を続ける。魔力回復薬飲み切るまで。


「おい! 誰かいねえのか! 魔力回復薬持ってこい!」


 叩き続けるが、すでに魔力は纏わせていない。纏わせるほど余裕がなくなってきたからだ。


「は?」


 俺と二葉の手がコアに食い込んでる?


 それももう手首まで飲み込まれ――


「ひいっ! だ、誰か! 助けろ! なんなんだよ! 離せ! 嫌だ!」


 かろうじてだが抵抗できていた俺の腕が肩まで飲まれたとき、二葉の顔がコアの中に――――消えた。


「うわああぁあああああ! やめて、俺を飲み込むなぁぁあ! やだ、やだよ! 二葉だけにしとけよ! ヒャアアア! の、飲まれちゃう! ごめんなさい、もう悪さしないから! ま、ママ助けて! ママ! ママァァァア! 言うこと聞くからお願――」






「くっ、急激におかしな魔力を感じたと思えば、コアが真っ黒ではないか…………しかし、これは本格的にヤバいのじゃ」

読んでいただきありがとうございます。

ブクマや★★★★★で応援よろしくお願いいたします。

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