第100話 威力偵察
「何か用ですか? 俺たち買い物も終わったから帰るんだけど」
少し低い声で五人に向けて話しかけた。が、プルプル震え、顔を真っ赤にして俺を睨んでくる敷島先輩。
「……ぉぉぉぉおおおお前らのせいでぇええええ!」
そう言ってひとり殴りかかってきた。だけど敷島先輩は魔法職だ。
確かにムキムキで力はありそうだけど、まともに受けても今の俺ならダメージはほとんどないだろう。
それでも受ける気は無いから、受け止めてみた。
パシッ。
「くっ! クソ!」
パシッ。パシッ。パシッ。
そう言えばリバティの四人は学園のAランクパーティーだったけど、プロ登録はしていなかったらしい。
パシッ。パシッ。パシッ。パシッ。
退学と同時に学園探索者資格が取り消しになり、プロのEランクから再出発したそうだけど……。
パシッ。パシッ。パシッ。
「レイ~。どうするですか~? ぶっ飛ばすです?」
パシッ。パシッ。パシッ。パシッ。
「警察を呼びましょうか?」
「お兄ちゃ~ん。聞いてる~?」
「ちょっと待っててね。ねえ敷島先輩。こんなことしたって無駄だとわかりましたよね?」
パシッ!
「わかってるが、ヤらなきゃ俺たちがヤバいんだよ! 何ボサッとしてる! お前らも手伝え!」
腰が引けてた柊元先生とリバティの残りの四人が一斉に俺へと突っ込んできた。
「レイ!」
「俺だけで大丈夫だ! こうなったらちょっと痛いですよ!」
前鬼さんにさんざんヤられた技――
「砕けろ!」
まずは敷島先輩からだ。もう疲れたのか、ヒョロヒョロになっていたパンチを横に来ていた土佐先輩の顔に向けて弾き、敷島先輩の膝を真横から蹴りを入れる。
ゴキンと敷島先輩の膝が砕けた。一人目!
「イギッ!」
次は敷島先輩の腕をまともに顔に受けた土佐先輩の膝を――ゴキン。二人目!
「グアッ!」
土佐先輩と敷島先輩を残りの三人に向けて突き飛ばした。
「なっ!」「ひぃっ!」「だあ!」
二人と絡まるように抱えた残三人の膝を片足ずつ砕いて制圧した。
「ふう」
「手は足りたようですね。この方たちは以前佐藤くんのときに一緒にいた子たち、ですか」
「はい。それと学園の先生だった人です。敷島先輩。どうしてまたこんなことを?」
「うる、さい。お前たちがフライハイにちょっかいかけるから俺たちが派遣されたんだよ!」
それからは喋る喋る。あまり有効な話はなかったけど、結局威力偵察に使われただけのようだ。
学園を追われたリバティと柊元先生は、なんとパーティーを組ながらダンジョンにもぐっていたそうだ。
だけどBランクダンジョンでのドロップ品集めに失敗し、攻略用に購入したオーダーの装備の支払いが間に合わなくなっていたらしい。
これって……フライハイに借金していた紅の紳士と似てるな……。パターン化されてるみたいだ。
ということは、紅と敷島先輩たちを含めて結構な数の探索者たちがフライハイにこうやって使われているのかもしれない。
「敷島先輩。Bランクダンジョンで集めようとしていたのはアルラウネのトゲ、ですか?」
「……」
答えないけど、態度で正解だとわかった。
「高橋さん。これってやっぱりフライハイは完全に俺たちを狙い始めてますよね」
「ええ。先ほど連絡をもらいました。ダンジョン前で捕まえたフライハイの男も自供を始め、君たち四人が目標のようです」
やっぱり。
「相手がしっかりとわかりましたし、対策は進めていますので君たちは当初の予定通り進めてください」
「わかりました。今週末に俺とシオン、シオリは条件をクリアできそうだから余裕をもって達成できると思います」
話を終え、リバティたちを高橋さんの部下たちが回収した後、アパートまで送ってもらい濃い一日が終った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
side高田 蘭
「君の予想通りですね」
「ええ。シティーホールの一件は予想外でしたけど、こうも見え見えのことをしてくるということは、向こうは相当焦っているわね」
「そのようですね。外資系の動きも気になりますから、そろそろ本当の強者が出てくることになりそうです」
「ふふ。私の予想では中国が絡んでいるでしょうから劉ファミリーが出ると思いますよ。どうしますか?」
「まあ、どこが来ても跳ね返さないと。さて、そろそろ私はおいとまします」
「ええ、お疲れ様でした」
車のテールランプを見送りながらマンションに足を進めた。
色々考えないと駄目だけど、今日は良いことがあったし、はかどりそうね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
閑話入れるとすでに越えていますが、100話目……
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
現在、他のコンテスト用の作品執筆中のため無期限の休止となります。
作者 いな@




