第99話 スーパーの駄菓子コーナーに突撃
「レイくん、送るのはアパートで良いんだよね?」
「あ、はい。さすがに今からギルドで買い取りは面倒だし」
「そうですね、少し遅くなりましたからね」
本当に遅くなった。途中でお腹が空いてシオンに駄菓子を分けてもらったほどに。
それも今回のことで警察と消防の方たちに同じことを状況説明しなきゃならなかったからだ。
本当に長かった……。お腹空いたし……。車の外はもう完全に夜になっているし……。お腹空いたし……。少し眠いし……。お腹空いたし……。
あっ、コンビニ……もうコンビニ弁当でもいいから今すぐ食べたい気分だよ。本当なら今頃晩ごはんもお風呂も済ませ、ベッドに入っていてもおかしくない時間だ。
本当に長い一日だったな……。お腹空いたし……。
ダンジョンから出て紅の紳士に絡まれ、フライハイの一人を捕まえ、高橋さんとシティーホールに来たら今度は高田さんがいて、またフライハイのメンバーと遭遇して一人は倒したけど二人に逃げられて火事騒ぎ。
濃い一日だった。次の予定も決まったけど、高田さんと臨時でパーティーを組むことになったのは予定外……。
今回のことでフライハイが絡んでくるかもしれないからと、サブマスさんにお願いされたからだけど……。
言われればそうかもしれないけど、高田さんはおそらく俺たちと同レベルで強いと思う。
今回絡まれたときも、あの余裕の表情は相当な修羅場をくぐり抜けてきたから出せる表情のはずだ。
高田さんもはじめは――
『私は一人でも大丈夫ですよ? これでもソロでAランクダンジョンを攻略して来たので』
――と、組むことに否定的なことを言ってたから、高田さんの海外から来た刺客かもって疑いは少し晴れたかもしれない。
それでも少しだ。だからサブマスさんのほぼゴリ押しのお願いでパーティー入りが決まってしまったから、引き続き警戒はゆるめない方がいいだろう。
そして今も同じ車に乗っている高田さん。シオンの隣で話し相手をしてくれている。
「そうだ、高田くんの住んでいるところはハイフィールドマンションでしたよね?」
高橋さんが助手席から後ろをふりかえり高田さんに話しかける。
「はい。シオンさんたちが住むアパートの横にあるマンションです。そうそう名前が私の名字と同じなんですよ?」
どういうことだ?
「おお! 高がハイで田がフィールド! 完璧にランちゃんのマンションなのです!」
おお、なるほど。全然気がつかなかったよ。というか気づけたシオン凄いな。
「ふふ。そうでしょ? 本当はもっと学園に近いところにしようと思っていたんだけど、その名前で決めちゃったの」
「うらやましいのです。レイ、うちのアパートもヤマトアパートにしたいのです」
「いやいや、それはさすがに無理だろ」
思わずつっこんでしまった。俺の隣でシオリも笑いをこらえているし。
「そ、そうですわね。研究所が出資しているアパートですから、ナガトアパートならもしかすると変えてもらえるかもしれませんが」
「ずるいのです! ……あ! ナガトアパートでもいいかもなのですよ! レイのお嫁さんになればわたしも長門になるのです!」
「シオンお姉ちゃんとシオリお姉ちゃんははそうだよね~。私は最初から長門だから問題なーし」
「ふふ。モテモテね長門くん」
「あは、はは。でも隣だったのか」
「送る側の私には楽ができて助かりますね。そうだ、もうすぐスーパーですが、よっていきますか?」
「よって欲しいのです! 駄菓子を買いしめるですよ!」
「食べ過ぎるなよ。それに晩ごはんとか明日からの食材も買うんだからな」
「ふふ。私も少しオヤツを買って帰ろうかな」
「わかりました。ではスーパーによりますね」
スーパーに到着すると、高田さんの手を引き駄菓子コーナーに走っていくシオンを見送る。
カートに買い物かごを二つ乗せ俺とシオリは食材コーナーへ進んだ。
「シオリ。高田さんのことどう思う」
「今のところ疑わしい言動はありませんわよね」
「うん。でもあの会議室での出来事で高田さんが強いことはわかったよな」
「ええ。男の平手打ちは完全にみきっていましたわ。それにレイの動きにも反応していましたし」
「そなんだよ。これで予想通り俺たちを監視しに来た海外勢に雇われているなら手強い相手になるだろうな」
野菜コーナーから始まり鮮魚コーナー、肉コーナーと順にまわり、食材をかごに放り込んでいく。
「レイ、ダンジョン用にカセットコンロを買いませんか? そうすれば予定より攻略が長くなりそうなときでもインスタントものを温めたりできるでしょ?」
「いいね。今回、無性にカップラーメンが食べたくなったりしたから、お湯も沸かせるよな」
「はい。簡単な料理も、コーヒーや紅茶もその場で作れます」
「それ採用だ。えっとカセットコンロはどの列だ……」
スーパーで買い物を済ませ高橋さんが待つ駐車場にもどろうと店から出たところで――
「本当に濃い一日だよ……」
「本当ですわ……まだ懲りていなかったのかしらね」
――学園を退学した四人組。シオリの元パーティーメンバーのリバティと、学園を辞めた柊先生が俺たちの前をふさぐように立っていた。




