第93話 犯罪集団
「レイくん。彼らは……知り合いですか?」
上級回復薬を飲もうとしていた伊勢さんの横にいた高橋さんは、紅の人たちを見ながら聞いてきた。
「知り合いというか、被害者と加害者の関係ですね」
「それについてはこの通り謝る!」
前と同じように腰から上半身を曲げ謝る三人。一人は折れた腕を吊った状態だ。
「この感じですと、彼らが加害者のようですね。……もしかして三日前のギルドの件でしょうか? ミクくんが絡まれたと聞いたのですが」
「はい。そのせいでランクが下がって借金が返せないらしいです。それを俺たちに肩代わりしてくれないかって言ってきたんですけど、断わったんですよね」
「なるほど。……パーティー名は紅の紳士でしたね。私は高橋と言います。あなた方のことはギルドで聞いています。少々たちの悪いグループに入っているそうですね」
「高橋……さん? え? この人知ってるぞ……Sランクに復帰した高橋さんじゃないか?」
「え? 本当だ。本物の高橋さんだよ……マ、マジか……なぜここに……」
「私のことを知っているようですね。私はこの子たちと仲良くさせてもらっていて、今日は少し用事がありましたので迎えに来たのです」
「そ、そうなのですね……」
目がキョロキョロ動いて落ち着きが無くなり、顔色もどんどん悪くなってる。
パッと見た感じは不規則にキョロキョロしているようだけど、三人ともある一定の場所を見るとき視線が止まっている。
休憩所だ。一人だけタバコを吸いながら座っているのが見える。それも俺たちの方を凝視しながらだ。
……もしかしてこの人たちの仲間か?
そう言えばダンジョンに入る前に聞いた、ヤバそうなグループか? もしかするとこの人たちを見張ってる?
高橋さんが言ってたヤバいグループの人たちとおそらく一緒のグループだと思うし……。
そうだ。高橋さんのことだからわかっていそうだけど、メールを送っておくか。
「それで、私の質問には答えていただけないのですか?」
「いや、その、俺たちは装備のオーダーメイドを頼んだだけで……」
「そ、そうです。その借金が月に二百万の返済があって……」
「ダンジョンドロップの納品ノルマも……」
しどろもどろしながら口々にいいわけじみたことを言い始めた。
それを聞き流しながらメールの作成が終わり、送信しておく。
高橋さんは胸ポケットからスマホを取り出し、中身を確認すると、俺の方を向いて小さく頷いてくれた。
後は、伊勢さんにも教えておこうか。どうせ逃げ出そうとするはずだから、いつでも飛び出せるようにしておこう。
「なるほど。ですがそれをこの子たちに話を持ってくるのはおかしなことですよね? 違いますか?」
「い、いえ、まったくその通りです」
「でしたら君たちはこんなところで油を売っていないで、入れるダンジョンで少しでも稼いだ方が良いのでは?」
まったく正論だ。借金だけならゴブリンのモンスターハウスだけでもまかなえると思うしな。
伊勢さんのところに行き、紅の三人を捕縛すると話して回復薬も飲んでもらった。これで三人の確保は大丈夫だな。
「で、ですがBランクで取れるドロップ品の納品もありまして」
「でしたらギルドで欲しいドロップ品の採取依頼を出せば済むことでしょう」
「それは……依頼料を払えるあてが無くてですね」
「なら納品ができませんと素直に言うべきでしょう」
「その通りなんですけど……」
「では最初の質問に戻りますが、あなたたちがドロップ品を納めているところはどちらですか? おそらくたちの悪いグループですよね」
紅の人たちは答えない。するとシオリとシオン、ミクがよってきた。
「お姉ちゃんに聞いたです。わたしも捕まえるのですよ」
「私も協力いたしますわ。あちらの休憩所の人もですわよね」
「私もやりたいー」
両耳に三人が口を寄せそう囁いてくるから身動きが取れない。だけどさすがシオリ。あっちもわかっていたみたいだ。
休憩所は一人だから俺だけでも大丈夫だとは思う。だけど見えないところにまだいる可能性もあるよな。
この人たちなら一対一でもシオンたちが負けることはないだろう。前に見たときにしていた装備すらしていないし。
俺は頷いたあと、一人ずつ作戦を伝えた。
「……まあ、わかっているんですけどね。納める先は半グレの『フライハイ』で、納品する品物はアルラウネのトゲ、ですね」
「な、なんで知って……」
「伊勢さん。警察に電話を。そうですね、来てもらうのは麻薬取締部です」
「ああ。この子に聞いてすぐに連絡は入れてある。紅の、観念しな」
「嘘だろ! そんなことされたら俺たちは――」
「はっ、ダンジョンでの犯罪はそこそこあるからな、ボタンひとつですぐに呼び出せるようになってるんだよ!」
「くそ! 逃げるぞ!」
「「おう!」」
「レイくんひとりお願いします!」
「はい!」
「俺もひとりいただくぞ!」
背を向けバラバラに走り出した三人。こっちも高橋さんと伊勢さん、俺が別々の方向に走り出しす。
「みんながんばれーなのです。お姉ちゃんわたしたちも行くですよ」
「逃げられるわけありませんのに。ほらもう捕まりましたわ。行きましょう」
「レイ! 私が押さえておーくです! えい! 行くですよ!」
ジャンプしてきたシオン。俺はうつ伏せの男から手を離した瞬間――
ドン! メキョッ!
とうつ伏せの男の背中に両足で飛び乗るシオン。男は『グハッ』と息がもれ、さらにフレイルでヒザ裏を強打。
「ギャァア!」
折れたな。
「後は頼むぞ!」
「高橋さんもお願いします! 私も押さえておきますから!」
シオリも高橋さんが押さえ込んでいた男のヒザ裏を錫杖で突く。
「グギ!」
「シオリくん頼みました!」
「よおいしょっ! おじさんも頑張ってきてね!」
ゴン!
「グアッ!」
ミクも二人と同じようにヒザ裏を鞘付きのままワンハンドソードを振り抜き折ってしまった。
「おう! コイツは頼んだ!」
ほんの少しだけ俺の方が早い。休憩所の男は立ち上がり、逃げ始めたが――
「遅い!」
「なんだてめえは! くっ!」
一気に追い付き首の後ろを掴んで引き倒す。
「ダァ! なにしやがる! 俺はフライハイの――」
男が言えたのはそこまでだった。高橋さんがいつの間にか握っていた片手剣に仰向けに倒れた男の眼前に突きつけていたからだ。
「フライハイで間違いはなさそうですね。それもナンバー5の霧島くんですね」
「な、なんで名前を……」
「……俺の分は?」




