予感
今日はエピソードタイトル「夕焼けの空模様」から公開しています。
まだの方はそちらからどうぞ!
8時に「入隊と訓練」を公開します。
そちらもお楽しみに、次第に切なくなっていきます。
「明、そろそろかもね」
「そろそろって何ですか? 叔母さん」
「ほら、今は高校生でも日本のために戦争で活躍しているのよ」
「じゃあ、僕も……?」
「そうよ。おめでたいことじゃない」
学徒出陣の波が押し寄せてきた。
「明、征ってくるよ。お前もそろそろだな。その時は互いに頑張ろうな」
「ああ……小田」
学校では出征の話でもちきりだった。
「ほら、南君も赤紙が来たそうよ」
「そうなの……」
「どうしたの道子?」
「ううん……」
「そういえば、道子は南君のことが好きだったからね」
「うん……」
「大丈夫よ。道子。きっと活躍して帰ってくるわよ」
「そうね……」
時は容赦しなかった。
「友子、そういえば最近は空襲が多いのね」
「そうね、美鈴。わざと敵国を油断させているのよ」
「でも、空襲は怖い」
「大丈夫よ。防空壕があるでしょ」
「うん……でも、隣の家は燃えたみたいよ」
「大丈夫よ。日本軍が負けるわけがないでしょ」
「うん」
遂に明に悲しみの波が押し寄せた。
「明君か? よかったな」
「どうしましたか?」
「赤紙だよ。君に届けにきたんだよ」
「はい……」
「日本男児として誇らしいことじゃないか。おめでとう。明君」
「はい……」
美鈴さん
ついに僕にも赤紙がきたよ。
でも必ず、活躍して帰ってくるよ。
必ず約束を守るから。待っていて。
でも……
正直なところ怖いよ。
駄目だ。こんな弱音を吐いたら。
わからないんだよ。僕の気持ちが
日本男児として誇らしいことだけど
約束を守れるかどうか心配なんだ。
美鈴さん……
敗戦の色が濃くなっていった。
「おい、聞いたか」
「どうした、どうした?」
「なんでもフィリピン部隊が全滅したらしいぞ。しかも……」
「どうしたんだ」
「沖縄も危ないらしい」
「そうか……いよいよ本土決戦なのか」
「ああ……」
「大丈夫だろうか」
「馬鹿野郎、そんなことを言うな」
「そうだな……」
悲しみの予感が漂っていた。




