結び
「美鈴さん。授業も全部終わったから、そろそろ、二人で家に帰ろう」
「はい」
美鈴さん、遂に赤紙がきたんだ———
「僕たちはもう喧嘩はしないようにしよう」
「はい」
「どうしたら、喧嘩しなくなるかな?」
「そうね、明さんが優しくしてくれたら喧嘩をしないでしょ」
「失礼だよ。僕はいつも優しいじゃないか」
「時々、意地悪するでしょ」
「そうかな……?」
「ほら、それより、見て。あそこに可愛らしい野花が咲いているわよ」
「どこ?」
「ほら、あそこよ」
「本当だね。まるで美鈴さんのようだよ」
赤紙とは何ですか———
「もう、明さんの嘘つき」
「そんなことはないよ」
「本当かしら?」
「僕が嘘つきだと思うの?」
「だって、女の子と仲良くするでしょ」
「それとは関係ないじゃない」
「関係あるでしょ」
「そうかな?」
赤紙も知らないのか?———
「だって、みんなの前で、美鈴さんのことが好きだって言ったじゃないか」
「本当に本当?」
「ああ、本当だよ」
「ほら、下を向いた。嘘をついているのでしょ」
「たまたまだよ」
「どうして、私の方を見て言ってくれないの? 恥ずかしいの?」
「もう、いい加減にしろよ」
「だって、明さんは嘘をつく時は下を向くでしょ」
「わかったよ。ほら。こうやって手を繋げばいいのかな?」
「うん。やっと気づいてくれたのね」
まさか、戦争に行くのではないですね———
「美鈴さんが先に手を繋げばいいじゃないか」
「男性から積極的にするのが本当でしょ」
「美鈴さん、わかったよ。参ったなあ。どうして、そんなに僕を責めるんだ」
「もう、わからないの?」
「ほら、美鈴さん、あそこにチューリップが咲いているよ」
「どこ?」
「ほら、あっち」
「どこ?」
「ほら、美鈴さんの横に咲いているだろう」
「もう……どうして、ほっぺにキスするの? 恥ずかしいでしょ」
遂にこの時がきたよ———
「嫌だったかな……?」
「そんなに急にされても……」
「だって、男性から積極的にするって言ったじゃないか」
「それはムードがないのよ……」
「もういいよ……バイバイ」
「もう、怒らないで……明さん」
「もう、美鈴さんの機嫌をとるのは疲れたよ」
「ごめんなさい。明さん」
「じゃあ、僕のほっぺにもキスしてくれよ」
「じゃあ、あっちを向いて」
「うん」
「駄目よ。目も閉じないと。だって恥ずかしいでしょ」
いやです———
「あれ……どうしてしてくれないの?」
「やっぱり、男性からしてもらわないとできないでしょ」
「さっき、ほっぺにキスしたじゃないか」
「もう、いい。明さんの馬鹿」
「馬鹿という方が馬鹿だろう」
「どうして、そんなにひどいことを言うの」
「美鈴さんが最初に馬鹿って言ったじゃないか」
「明さんは女性の気持ちがわかっていないのよ」
「そんなことはないよ。それより、もう喧嘩しないって約束したじゃないか」
「それとこれとは別よ」
「もう、僕はどうすればいいかわからないよ」
「わかりました。やっぱり喧嘩はよくないですね」
「そうだよ。美鈴さん」
美鈴さん。征ってくるよ———
「あ、空から雪が降ってきました」
「え、降っていないじゃないか。美鈴さんこそ、嘘つきだよ。だって今は夏だろう」
「ほら、上を見て、空に雪が降りかかっているでしょ。もう一度見て」
「あ……」
「これでいい?」
「うん」




