願い
このエピソードは一部残虐描写があります。
お読みいただけたら、ご理解できるかと思いますが、エピソードタイトルのとおり
願いによるもので、純粋な想いで描いております。
しかし、残虐描写が苦手もしくは受け入れられないという方は、このエピソードは飛ばしてお読みいただければ幸いです。
美鈴は疎開先での生活を与儀なくされていた。
「美鈴、疎開先での生活はどう?」
「お母さん、ここなら安心ね」
「そうね」
「お母さん、ここは空襲がないですね」
「そうだね。よかったね」
しかし、忍び寄る影はそう遠くはなかった。
「空襲だ空襲。防空壕に逃げろ」
「うわあ、早く早く」
「お母さん、手を握って」
「美鈴こっちよ」
「わかった」
美鈴と母親は防空壕へ
「最近、空襲が増えたな、日本も‥‥‥」
「馬鹿野郎。貴様は日本人か」
次第に激化していく空襲
「お母さん、最近空襲が増えましたね」
「そうね」
空襲が一時期止んだ時のこと。
「お母さんここで知り合ったお友達と山の山菜を取りに行っていい」
「いいよ。そのかわり気を付けるのよ」
美鈴は山で友達と山菜を取っていた。
「山田さんほらここにもある」
「本当ね」
「ここにもあるよ」
「本当ね村井さん」
「村井さんこっちがいいかもよ」
「園田さん本当だ」
突然、戦闘機の音が鳴り響いた。
「みんな戦闘機よ。しゃがんで」
キャー
ダダダダダダダダ
そして、戦闘機は飛び立っていった。
「山田さん、園田さん、村井さん。大丈夫? 返事して」
「どうして、返事してくれないの…… え…… ああ、左足がお母さん助けて」
母親は戦闘機の音を聞き山へ美鈴を探しにいった。
「美鈴、ここにいたの?」
「お母さん、助けて……」
「大丈夫? 美鈴、心配してきたところだったよ。歩けないでしょ?」
「ううん、少しなら歩ける」
母親はなんとかしたかった。
「どうしたもんかね。お手伝してくれる人を探してくる」
「はい」
慌てて住民が駆けつけた。
「大丈夫かね? 足を銃で撃たれたんだね、さきほど、空襲の避難命令がでたから
防空壕へ急ごう」
防空壕内にて
しかし、美鈴の足の傷は酷かった。
「誰か病院の先生はいないですか?」
「私でよければ」
「ありがとうございます。娘が機銃で撃たれて……」
「ああ、これは傷が深いな。化膿するな……」
「先生どうすれば……?」
「私は内科医だが‥‥‥ああ、傷が深い。傷口をかなり縫わないといけないな」
「先生、私の足はどうなるのですか?」
「化膿がひどくなって……」
「先生、先生、私の足はどうなるのですか?」
「それは……」
「先生、手術はできないのですか」
「メスもないから無理だな……」
「先生……」
「どうした?」
「あれを見てください。あそこにノコギリがあります。あれで深い傷を切ってください」
「いや、それは出来ない……」
「無理だよ。だって、ノコギリだぞ……」
「はい。私は会いたい人がいるのです」
「いや、考えられない。ここには麻酔もないから激痛だぞ。耐えらないだろう」
「先生、縫わないとどうなるのですか? 足だけですむのですか」
「いや、化膿がさらにひどくなって命を落とすこともある。でも、手術できたしても
内科医の私に出来るだろうか……」
「先生、お願いします」
「やっぱりできないよ……私にはできない……」
「約束の場所で、婚約者と会う約束をしています。どうかお願いします」
「激痛で失神するぞ」
「大丈夫です。先生お願いします……」
「じゃあ、覚悟はあるのだな。本当に覚悟があるのだな?」
「はい」
「じゃあ、始めるぞ、お母さん、娘さんの、体を押さえていて」
「キャー、やめて、やめてください。明さん、助けて」
「……なんとか終わりました。失神しましたね……よほど、婚約者に
会いたかったのでしょう。後は必ず消毒を頻繁にしてください」
「わかりました。ありがとうございました。先生」
「彼女の強い願いだよ」
美鈴の願いはどこまでも強かった。
明さん、約束の場所に必ず行きますね。
待っててくださいね。
いっしょに自転車に乗りましょうね。




