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入隊と訓練

特別攻撃隊への志願はさまざまな形で語られていますが、ほぼ、強制的だったといわれており、志願するものは一歩前に出ろという、上官からの命令もあったと聞いております。

明は初夏の蝉が騒がしくなるころ、入隊の日を迎えた。


「貴様が吉田 明だな」

「はい」

「いい、面構(つらがま)えをしているじゃないか。今日から、わが隊への入隊を認める」

「はい。ありがとうございます」


美鈴さん。僕は遂に……

約束したよね

必ず帰ってくるから待っていてね


「貴様、何をボーっとしている」

「申し訳ありません」

「今から、訓練が始まるだろう。まさか、女のことを考えていたんじゃないだろうな」

「いえ、違います。上官殿」

「よし。しっかりするんだぞ」

「はい」


入隊後は過酷な訓練が待っていた。


「よし、今日は駆け足で二十キロだ。そのあとは匍匐ほふく前進」

「はい、はい」

「声が小さい!」

「申し訳ありません。上官殿」

「馬鹿野郎。何をもたもたしている。そんなことでどうするんだ」

「いち、に。いち、に」

「そんなことじゃ敵に見つかるじゃないか。次は銃剣だ」



美鈴さん。辛いよ。毎日が辛いんだ。

こんな弱音を言ったら駄目だよね

日本男児だからさ

情けないよな


「明、いよいよ、作戦会議があるみたいだぞ」

「そうだな、長友」

「ああ、御国のために尽くせる最大のチャンスだそうだ」


「整列!」

「はい!」


「よし、今から説明する。わが隊は特別攻撃隊への志願を求める」

「はい」

「よく聞け、今、日本は最大の山場を迎えている。わかっているな!」

「はい」

「よし、いい返事だ。特別攻撃とは聞いていると思うが、零戦に爆弾を積めて敵国の空母に体当たりをするんだ。今こそ自らの命を御国のために捧げる。わかっているな」

「はい」

「まさか、ここで辞退する日本男児はいないと思うが、志願する者は一歩前に前進しろ」

「はい。はい。はい……」

「吉田 明、お前はどうしたんだ。そんな弱腰で日本を守れるのか」

「はい……」

「よし、それでよろしい。覚悟はいいか!」

「はい……」

「貴様らは、わが大日本帝国の礎となる誇りを胸に刻め! 諸君の武運長久を祈る!」

「はい」

「そうだ、それでいい。見事に御国のために、桜の花を散らすのだ。わかったな」

「はい」

「貴様らには片道切符しかないが、残った家族には私が何とかするから、心配はない。わかったか」

「はい」


美鈴さん

僕は怖いよ

死にたくない……

何よりも美鈴さんと別れたくないよ

でも、こんな考えじゃ僕は弱虫だね

空に三日月が浮いているよ

美鈴さん……



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