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Ep1

見つけて頂きありがとうございます。

是非、最後までお読みください。

「なんだぁ! てめぇは!」


俺は今、恫喝を受けている。


右腕だけ機械に換装された、筋骨隆々の身体。

白いタンクトップを着たマッチョが、唾を飛ばして怒鳴ってくる。


俺は溜息を吐き、煙草を咥えながら火を点けた。

そして、街に入ってからの1時間余りを、ふと思い返す。


───


一時間前――


街を車で流し、事前にあたりをつけておいた不動産屋の前で停まる。

探偵事務所として使えそうな物件をいくつか紹介してもらったが、どれも今ひとつ、ピンと来なかった。


問題は、賃料だ。

無いわけじゃないが、低いに越したことはない。

そう言うと、不動産屋は渋々、ひとつ紹介してくれた。


メイン通りから一本入った場所。少し古いが、1階はガレージ兼作業場、2階が事務所になっている良物件。

ただし、“違法な住民”が居着いていて、それの除去が条件らしい。


───


そうして意気揚々と乗り込むと、中には5人の男たちが寛いでいた。


俺は優しく“対話”するために、手近の床に座っていた男の顔面に、挨拶代わりの蹴りを一発。

吸血鬼のように伸びた牙が宙を舞い、男は仰向けに倒れ込んだ。


――そして、今に至る。



男たちは、まるで下品なサイレンのように口々に喚いた。


「殺すぞっ! てめぇ!」

「なめんなゴラァッ!」


喧しさに眉根を寄せ、ふぅと煙を吐いて教えてやる。


「俺はこの物件の正式な住民だ。お前らは、せいぜい害虫だ」


「俺は優しいから、害虫でもむやみに傷つけない。さっさと出てけば、の話だけどな」


わかるか、と指に挟んだ煙草で入口を示してやる。


しかし、俺の優しさはどうにも伝わらなかったらしく、

1人が顔を真っ赤にして、野太い咆哮を上げながら突っ込んできた。



上半身裸の男が突っ込んでくる。

浅黒く焼けた肌は隙間なくタトゥーに覆われ、その顔は豹の異形。

迫ってきたその顔に、俺は挟んでいた煙草を弾いた。


くるくると回転しながら、火種が血走った目に当たる。

ぎゃんっと猫のような叫び声をあげて、目を瞑った顔を両手で掴み、下へ押しつつ膝を顎へ叩き込めば、

舌が噛み潰れる瑞々しい音と、骨がかち合う硬い音を合わせて、豹顔は無様に床へと沈んだ。



「なんだ。威勢がいいだけか」


そう言って鼻で笑ってやると、残り3人が俺へと殺到する。


1人は、太い機械の拳。

1人は、バタフライナイフ。

1人は、銃を腰裏から抜こうとしている。


まずは、機械の拳に重ねる形で腕を伸ばし、相手の顎を掠めるように殴れば、

腕を伸ばしたまま、俺を通り過ぎて前のめりに倒れ始める。


倒れ切るのを待たずに、片手でナイフを突き出してくる奴の手首を外側から強打。

痛みで手放したナイフを逆手でキャッチして、太腿に深々と突き刺す。


悲鳴を上げて仰向けに倒れ込む男の姿にビビって、銃を抜くのを躊躇している奴の眉間に、

俺の左脇腹に下がるホルスターから、黒鉄のリボルバーを抜いて銃口を突き付けた。


流れるように突き付けられた銃口に驚き、固まった男の眉間からわざと耳へと銃口をずらして、間髪入れずに引き金を引く。


轟音と共に放たれた銃弾は、耳を貫き、壁に弾痕を残す。


そうして、強烈な痛みと音に耳を抑えて倒れ込んだ男を含めて、

室内に立っているのは俺だけになった。



「で? まだやるか?」


まだ煙を上げる銃口を、咥えた煙草の先に押し付ける。

紫煙が昇る中で言ってやれば、仲間を担ぎつつ、害虫たちは挨拶もなく慌てて出て行った。


しばらく経って、様子を見に来た不動産屋に顛末を説明してやると、

重い溜息を吐いた後に浮かべたディスプレイに契約者を表示させた。


俺は満足気に堂々とサインして、事務所を手に入れた。



最後に、不動産屋が家具は用意して運び込んでくれるというオマケもついて、

上機嫌のまま、俺の“城”とも言える事務所を軽く見回す。


壁は打ちっぱなしのコンクリート、天井には剥き出しのパイプ。

床は、もとは白かったであろうが、薄汚れと日焼けで茶色くなっている。


下に降りる階段を進めば、シャッター付きのガレージへと繋がっていた。

中はがらんとしていて、静かだった。


この何もなさから、何をしていこうかとワクワクしながら、

とりあえず車をこのガレージに入れることから始めた。


――ここから、俺の探偵事務所を始めよう。

お読み頂き、ありがとうございます。

次回も、よろしくお願いします。

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