運命の終わり
書いては消してを繰り返していたら投稿期間が空いてしまいました。申し訳ありません。
これからも恐らく、少しづつ長くなったりすると思います。
先の展開のことも考えつつ、矛盾点が無いように気をつけているのですが、もし存在するようでしたら即刻修正いたします。
「よし、できたー!!」
アシェンは、最近覚えた字を使って日記を書いていた。なかなか、綺麗に書けている。
「おじいちゃん!日記、書けたよ!!」
「…」
「おじいちゃん…?」
「っ、アシェン、すまない。少し考え事をしていた。おお、どれどれ。うむ、上手く書けているぞ。」
「…うん、ありがとう!!」
※ ※ ※
最近、おじいちゃんの様子がおかしいです。
ずっと何も無いところを眺めてたり、変な宝石がついてる首飾りに向かってブツブツと語りかけています。
前まではこんなことしてませんでした。
きっと、何か不安なことや悲しいことがあったのです!だから、元気になってもらうために森にお花を摘みに行こうと思います!
おじいちゃんには、このお家の近くなら自由にしていいと言われています!なんでも、この辺には危ない動物さんが居ないそうです。
なんで?って聞いても理由は教えて貰えませんでした。
いつか教えてもらえるといいな。
※ ※ ※
森の中を一人の少女が歩いていた。
言わずもがな、アシェンである。
自分で編んだ籠を片手に持ち、目的のものを探しに森へ来ていた。
「んーと、どのお花にしようかなぁ…」
少女は足を止め、色々な種類の花を眺めながらカプリスを想う。無骨ながらも温かい手、どっしりとした胸板、優しさで溢れている笑顔、柔らかな朱い眼差し。そして…
「………紫のお花にしよう!」
しばらく考えた結果、薄くなりつつある髪に焦点が合ったらしい。カプリスは泣いていいかも知れない。
だが、幼い少女に情を求めるというのは酷である。決して、カプリスの悩みが「髪が薄くなっている」などと言うことは、考えすらもしなかった。
アシェンは再び紫の花を探すべく、周りをよく観察しながら歩み始めた。
しばらくすると…
「あった!!」
目的の花を見つけた。辺りにはまだまだ色々な種類の花があったが、その中で己の存在を主張するかの様に一輪の紫が咲いている。
アシェンは適当な長さで茎を折り、それを優しい手つきで籠に入れた。
「一つ目~!」
花の入った籠を空に掲げる。所々に空いた隙間から微かに漏れる光が瞼を照らし、瞳を細めた。
「………あれ?」
――なんで?
おかしい。普段なら聞こえてくる音がしない。小動物などの、生きるが故の必然的な音が、姿が、見えない。聞こえない。
一度疑問を持つとより注意深く観察するのが人間という生き物だ。
アシェンはゆっくりと周りを見渡すと、明らかな森の異常に気が付いた。生命が、存在していない。静寂が辺りを包み込む。
――こわい…
今までに体験したことがない森の異常。
不安、恐怖、様々な感情が胸の中に渦巻くが、そんなときに思い浮かぶたった一人の家族。
「…おじいちゃん」
今まで、何があっても助けてくれた。
アシェンが言いつけを破って、危険な獣の居る森の奥へと足を踏み入れた時も。滝の様な汗を流しながら駆け付けてくれた。
世の中の残酷さを知り、現実に打ちひしがれた時も。優しく声を掛け続けてくれた。
こんな関係が、これから先もずっと続いていく。だから――
――また、おじいちゃんが助けてくれる。
こんなことを考えてしまうのは、仕方がなかったのだ。カプリスに対する絶対的な信頼。
それを、少しも疑うことはなかった。
幼い少女は小屋へ戻ることにした。
いつもと何も変わらない、ゆったりとした歩みで。今までの経験から来る慢心が、自分の運命を大きく変えてしまうとは、考えすらもせずに。