日常
段々と文字数増やしていくので最初短いのは許してください。
あぁ、幸せだなぁ。
彼女は幼いながらにも、そう思っていた。
「おじいちゃん、これどこにおくの?」
「あぁ、机の上に頼むよ。」
いつもと変わらぬ日常。これが、この暮らしが、永遠に続けばいいのに。
そんなことを考えてしまうほど、それは幸せに満ちていた。
ここは、森の中にある小さな小屋。
森に生えている木と同じ素材で建てられたこの小屋は加工なのか年季なのか、少し黒ずんでいた。
ふと、少し開いた窓から優しい風が吹き込む。全てを包み込むかのような柔らかい風だ。
「ふふ、くすぐったい」
ふわりと靡く髪を軽く押さえ、少女は笑った。流れ来る太陽の光を反射し、さらさらと流れる黄金の髪。全てを見透すかの様に透き通った天色の瞳。形の整った鼻に、綺麗な弧を描く薄桃色の唇。
傍から見たそれは、まるで人形の様に整っていた。
――アシェン
それが、少女の名である。
そして、その顔に浮かんだ笑顔を優しい目で見つめる老人――アシェンがおじいちゃんと読んでいた男。
薄くなりつつも未まだにその存在を主張する髪は青紫色で、その顔には過ごしてきた時間を連想させる深いシワが刻まれている。
アシェンを見つめる瞳には全てを飲み込むかの様な深い朱。しかしその視線は温かく、家族への愛情を確かに感じる。
――カプリス
それが、老人の名である。
※ ※ ※
アシェンは、拾われた。カプリスに。
まだ言葉を話すことも出来ないし、自力で立つことも出来ないほどに幼かった。
『ほら、頑張れ。両方の脚を使うのだ。』
『おーじーいーちゃーんー!』
「おーしーいーてぃゃー!」
『そう!それだぁ!』
アシェンは、教わった。カプリスに。
森の外での常識、一般的な学び、森での生き方。
そして、人としての道徳心を。
――グギャァァァァァァァ
「おじいちゃん…こんなのって…」
『これが罠だ。人間が生きるためには、生きている生命を頂かなければならないのだ。』
「…うん。」
アシェンは、守られた。カプリスに。
「ひっ…」
『アシェン!!』
「おじいちゃん…!」
『馬鹿者!1人で森の奥に入っては行けないと何度も言っておるだろう?小屋の周りには獣は居らんが、それ以外ではちゃんと生きているのだ!!』
アシェンは、救われた。救われ続けてきた。カプリスに。
たった1人の、家族として。