7 推しが隣にいるぅ〜〜〜〜〜!!!
「それでは、実技試験を始めます」
魔術実技担当の先生だけでなく、数人の魔術科の先生がいる緊張した雰囲気の中、そう告げられ、魔術実技が始まる。
……私はと言うと、壁際で座って待機。
毎度思うんだよね。私はこの時間に試験ができないんだから別にいなくてよくない?って。だけど、最後の方になることを理由に私は万が一のための防御結界を張る役割を任せられているのだった。
しかぁし!!
「リーナ、よろしくね」
先生がふわり、と微笑むと同時に銀の髪が揺れる。
なんと!私の隣には先生がいるのです!
「っ、はい!」
この時間のに、いいことがあるとすれば、それは先生がいることかな。
推しが隣にいるとかマジ最高すぎです。神ってる。幸せすぎて死にそう。いや、死にたくないけど。
「リーナ、今日も結界なの?」
エイミーが私の隣に座った。
「ん。また後日じゃないかな」
私が実技試験をするときはそれなりに大掛かりになる。
リンパル先生か、魔術科の先生が4、5人がかりで結界を張るのだ。……いやぁ、毎度大変そうだ。迷惑をかけているのは私だけど。
「そう。まぁ、リーナが結界を張ってれば安心だよね」
「どーゆー信用のされ方?」
「知ってる?リーナの結界を破れるかどうか賭けがあるって」
「エイミー、それ初耳になんですけど」
なんじゃそりゃなんだけど。
「まぁ、リーナの結界を破れるかだからねぇ」
「ちなみに破れたら?」
……なんだか嫌な予感がする。
「最初に破れた人は自分の望むものがもらえたりできたりするよ!」
……なんでそんな賭けを始めた……?
「というか、私にはなんの徳もなくない?」
「ん〜、……きっとあるよ!」
無責任な……。
「じゃ、リーナ、頑張ってね〜」
「ん。エイミーもガンバ」
「ありがと〜」
手を振り、待機場所に戻っていくエイミー。
「……あぁ、なるほど」
「?どうしました?」
「あ、いえ……少し納得して」
何に?
疑問符を浮かべる私に先生は説明してくれた。
「ほら、リーナが実技場を試験で破壊して結界担当になったじゃない?」
「はい。というか、私って結界担当っていう括りなんですか!?」
「そうだよ?」
まじか……。後回しじゃないくて別の担当になっていた。どうりでその日のうちに順番が回ってこないわけだ。
「その後の試験から、異様にみんな、ものすごい魔術をぶっ放してくるようになったんだよね」
そ、そんなことが起きていたのか……。
2回目の試験の時、前回よりやけに飛ばすなーって思ったのは、もしかして……。
「賭けが始まったから……」
「うん。だから納得したの」
なるほど。
「……そろそろ始まるわね。リーナは全体の結界を頼んでもいい?」
「分かりました」
学校で試験に限らず、こういう壊しちゃまずい室内で大規模な魔術を使う時は基本的に2つ結界を張る。
1つは建物を内側から補強する結界。もう1つは中にいる人を守る結果。
もしも結界が破れたら結界で守られいた人や建物が被害を受ける。建物を壊すのもまずいけど、人に危険が及ぶ方がもっとまずいのだ。だってここ、学校だし。
そういうわけで、必然的に小規模ながらも人を守る結界を張る魔術師の方が責任は重くなる。
……サラッとその責任が重い方を引き受ける先生、マジかっこよくない!?イケメンすぎて惚れてしまうやろ。
先生だからっていうのはあるかもしれないけどさ、サラッと言えるところがいいのよ。これ重要。
というか、先生は薬医学もできて結界も張れるとか、すごすぎない!?
ちらり、と横を見ればすぐ近くに先生の横顔がある。……綺麗だなぁ。ずっと見てられる。
整えられた美しすぎる前髪、スッとした目元、くっきりとした鼻筋、小さな口。
「っ!」
バッチリ目が合う。
先生がニコリと優しい笑みを浮かべる。
はっ。
見惚れている場合じゃない、と私は慌てて顔を逸らす。……チラ見してたことがバレた。
慌ててそらしたけど絶対バレてるよね!?というか、微笑んだ先生まじ可愛すぎなんだけど。綺麗すぎてやばい。語彙力崩壊するんだけど!?
心臓がバクバク言いすぎててやばい。というか、可愛すぎて綺麗すぎなんだけど。
……だけど流石にこれ以上これ以上見てるのはよろしくないね。私の精神的にも。
そう思い、一人一人順番に魔術を放っていくのを私はぼーっと眺める。……確かに威力は必要以上に高い。賭けはマジなのか。
そして、結界は破られることなく無事、試験終了。そして授業終了。
「それじゃあ、リーナは明日の放課後、ここでね」
「分かりました。ありがとうございます」
「ん。頑張ってね……って言いたいところだけど頑張られすぎると私も困っちゃうかなぁ」
「あはは……」
推しが近くにいるとドキドキしちゃうリーナちゃん(16)