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5 薬医学と料理って似ているよね?

「薬医学と料理って似ていますよね?」


 推しの顔が驚愕に染まった。




 ◇◇




「でさ、遊ばない?街行ったりミニパーティーしたりして!」


 何が発端なのかはわからない。が、こういう話になった。


「……もしかして雪華(ネーヴェ・フィオーレ)の日にやるの?」


 雪華(ネーヴェ・フィオーレ)の日。

 冬休みの始まりにある、祝日のことだ。大体はこの日からが冬休みになる。

 ちょうど雪が舞う時期であること、ある地域で花祭りが行われていて、それが今では多くの地域で行われていることからそう呼ばれている。

 雪華の日の前後はお店もいつも以上に出ていてとても賑やかだ。だから、私たち学生が遊ぶのにうってつけなわけ。


「そうそう!正確にいうと、雪華の日にに街に繰り出して遊ぶ!次の日にミニパーティー!どう?みんなでやらない?」


 ルームメイトの一人、ミノエがいう。

 ちなみに寮で同室なのは私を入れて4人。エイミーとミノエ、あとはマリーナっていう子だ。


「さすがだね。そんなこと考えるの」

「でしょ〜?エイミー、もっとウチを褒め称えていいのよ?……っていうのは言い過ぎだけどさ」


 そう言ってミノエはカラカラと笑う。その動作に、ボブの髪が揺れた。


「で、どう?」

「私は大丈夫だよ」

「私も」


 最後の冬休みだから全力で楽しまないともったいないもん。


「私も大丈夫〜」

「っしゃ!決定!行こ!楽しも!」

「おー」

「え、真面目に返事してくれるのってエイミーだけ?」


 ……。


「お〜!」


 のんびりとマリーナが答えたところでみんなの視線が私に集まった。……言わなきゃダメかなぁ。


「またしてもリーナ、変なところで照れてるよ」

「そうだね。ノリと勢いで進んでいる時はすっごいノリいいのに」


 ……おい、聞こえているぞ?


「リーナ、私と言う〜?」

「マリーナ、そんなお子様みたいな気遣いしなくていいから」


 マリーナはのんびりと言っていて揶揄っているつもりはないはずだ。素で言っているあたりが恐ろしい。


「そう〜?」

「そう」


 ホント、子供扱いしないでほしいよ。


「じゃあ、せーの?」

「…………………………おー」




 ◇◇




「それじゃあ、レッツゴー!」


 私達は学園を出て、街へと繰り出した。

 今日の目的は遊ぶ&明日の買い出しだ。買い出すものは事前に決めてあるから見つけたら買うらしい。私は途中で投げ出して全てミノエに任せた。こう言うのは任せるべきだ。うん。


「うわぁ、すごい人……」


 右見て人左見て人、前も後ろも、四方を囲まれている。

 ……人に酔いそうだ。まじで疲れそう。


「リーナ、マリーナ、そんなトロトロしてたら迷子になるよ」

「なんでそんなにキビキビ動けるの……?」


 謎でしかないんだけど。


「ん〜、慣れ?」

「リーナ、諦めよう?私たちには遠い世界の話みたいだよ〜」

「そうだね、マリーナ。分かり合えるのは私たちだけだ……」

「おい、二人の世界に入るなよ」


 エイミー、変なツッコミを入れないの。雰囲気がぶち壊れるじゃないの。


「気を取り直して、レッツゴ〜」

「「お〜」」


 ……。


「ちょっとリーナ!?」

「え、今いう流れだった?」


 私にはそう思えなかったです。

 てっきり、ミノエの独り言かと……。


「……全く、マリーナもマリーナでのんびりしているけど、リーナもリーナだよね」


 ん?ミノエ、何か言った?


「ほら、細かいことは気にしなぁ〜い、いくよ!時間は有限!」


 向かったのは射的屋。


「何これ」

「エイミー知らない?」

「いや、やり方はわかるよ。だけどこの筒の意味がわかんない」


 そうか。


「じゃあ、私が説明しようか?」

「……なんか嬉しそうだね」

「そんなことないよ?」


 間違ってもエイミーに教えられることができて嬉しいとか思ってないからね?


「まず、この筒の中にコルクを入れる」

「ほうほう」

「引き金を引くとコルクが飛び出してくるから、コルクで景品を倒したらゲット」

「へぇ〜」


 それにしても、エイミーが知らないなんて珍しいね。


「私の地域じゃこれ、魔術もアリだったよ」

「何それチートすぎるんだけど」


 魔法があれば1発でいくつもゲットできるじゃん。


「もちろん、強すぎる魔術はダメだけどね」


 ……そっか。


「リーナは絶対に魔術禁止になるよ」

「そんな悲しいことを言わないでほしいなぁ」

「あはははは。ごめんね?」

「いいよ。許す」


 それにしても、とエイミーは筒を手に持った。


「これ、コルクが飛び出してくるんでしょ?よくできてるね」

「ん、そうだね」

「おじさ〜ん、これ、分解していい?」


 え!?

 屋台のおじさんも目を見開いている。


「エイミー、流石にダメだって!」

「え〜。気になるのにぃ」


 そんな残念そうに言われても屋台のおじさんのものだろうし……。


「ほら、筒を離して、おじさんに謝る!」

「……はぁ〜い。おじさん、ごめんなさい」


 いかにも不満げにエイミーがいう。


「……君たち、ナチュラルに僕のとおじさんおじさん言ってるけど、まだ30だからね……?」


 その言葉は聞かなかったことにした。


「リーナ、これ食べよっ!」

「何これ」


 露店といえば串焼きとか焼き物だと思うんだけど、エイミーが指さしたのはキラキラと光る赤色。


「すっごく美味しいよ。カリってしてシャきってするの!」

「へぇ……」


 見た目はりんごっぽい。けど、りんごじゃないのかなぁ。てかってるし。


「はい」

「買ってくるのはや!しかも4人分!?」

「もちろん〜」


 私は渡された食べ物(?)を見つめる。

 指で突っついてみても硬くて、本当に食べるのか疑わしい。


「ん〜!おいし〜!」


 エイミーが幸せです、という顔をしている。

 ……一応食べれるっぽいね。

 私は恐る恐るそれを口に運ぶ。


「ん!?」

「どう?美味しいでしょ?」

「美味しい……」


 なんだ、この食べ物は。

 エイミーが言った通り、カリってしてシャキってする。シャキっていうのはりんごみたいだ。


「りんご飴って言うんだよ〜」


 学園に入って4年目、新たな発見だった。

 ……なんで私はこの美味しい食べ物を知らなかったのか、不思議でたまらない。






 翌朝。

 私は学校の調理室に来ていた。

 行動力抜群のミノエの提案・実行により、学校の調理室を借りることができたらしい。


「お邪魔しまーす」

「あ、せんせ〜」


 ミノエがブンブン手を振っている。……が、これはどうなっている!?

 何故に推しがここに!?


「ウチが調理室借りていいですかーって聞いたら、何それ楽しそ〜、行っていい?って言われて」


 ミノエさん!?

 あなたとても度胸のあることをしてますね!360度回って尊敬するんだけど!


「と言うわけでよろしく」


 こ、こちらこそお願いしますですよ……。

 私は異様な鼓動を打つ心臓を落ち着かせ、料理台の前に立つ。

 私の担当はローストビーフだ。煮て切るだけだし、多分できるだろう。やったことないけど。

 ちなみに相方はエイミー。心配ナッシングだね。


「ところでリーナ、料理できるの?」


 昨日買ってきたお肉を取り出しながらエイミーが尋ねてくる。


「心配ないよ。やったことないけど多分できる」

「え?」


 だってそうでしょ?


「薬医学と料理って似てるよね?だから多分できるよ。あんまりやったことないけど」


 家だとお母さんにお願いしてたからねぇ。時々手伝う程度だったけど大丈夫でしょ。


「リーナ、正気……?」

「大真面目ですけど」


 なんでみんなそんな絶望した顔になるのかがわからない。

 そんなか、先生が恐る恐る聞いてくる。


「……ちなみにリーナにとって料理とは」

「切って焼くなり煮るなりするものです」


 推しの顔が驚愕に染まった。




 その後、私の担当は味見係になったことだけ言っておこう。

 ……私、料理できると思うんだけどなぁ。

りんご飴だけじゃなくていちご飴も食べたい……

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