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3 推しの司会進行

 広ーい講堂に集まった4年生。

 年度始め恒例の学年集会だ。

 学園の学科は普通科、騎士科、文官科、魔術科とあり、各学年200人ずつ、学科別の比率は5:2:2:1。つまり、魔術科は各学年20人。いかに魔術科が、そして魔術師がいかに少ないかよくわかるよね。


 話は戻り、今は集会です。

 ……はぁ、毎回思う。やる意味あるんかね?

 いえ、あります!

 リンちゃんを見るためです!

 ……いや、ふざけてないよ?マジだよ?


 なんたって、魔術科は向かって1番左端!さらに魔術科の中でも女子列は左側!

 そう、私は1番端っこの列にいるわけ。そして、毎度の如く、講堂の左端は先生の溜まり場になっており。


 いやまじほんと、2年生になって驚いたよ。

 1年生の時は学科に分かれてなかったから私、A組だったんだよね。左端にこんなに先生が溜まっているなんて知らなくてさぁ。2年になっていきなり右端から左端になった時、横に先生がたくさんいて驚いたよ。そして同時に慄きました。変に目を瞑って休むなんてことできないじゃん。めちゃくちゃ長い話に遭遇した時どーすりゃいいんだーって思った。もう慣れたたけどね。

 でも、端っこになって新しい発見もあったんだよ?


 そう、先生もいるんだよぉ!

 つまり、私より前にいれば先生も見ることができるってこと。

 ……残念ながら私の背があまり高くないこととガッツリ左の方を向けない関係で、自然に視界に入るっていうことは少ないけどね……。

 言っとくけど、私は背が低いわけじゃないから。そう、極めて平均的……ただ、クラスの平均身長が高いだけだよ。


「それでは学年集会を始めます」


 司会の先生(※学年主任)の先生の一言により、集会が始まった。

 それからは長い長い。

 やれ今年の学年目標だの、やれ進路についてだの……。大切な話なのはわかるからせめて重点だけ言ってほしい。なんでそこでいきなり飼い猫の話が出てくる!? 飼い猫が可愛いから許すけど!


「では、周りの人と話してみてください」


 ……先生の飼い猫について。

 私は後ろに座っているエイミーの方に振り向く。


「エイミー、これって学年集会だよね?」


 エイミーはニコリと微笑むと私の肩に手を置いて言った。


「諦めな」


 そんな!


「だってあの先生が飼い猫ラブなのは分かりきってるじゃん。お約束ってやつだよ」

「私は早く司会進行が別の人になることを祈るね……」

「それは私もだよ」


 話してみてください、と言われたものも、しているのは雑談。周りも似たようなものだ。


「話すのをやめてくださ〜い」


 ん?

 こ、この声は!?


「それでは……」


 せ、せせ、せんせ!?

 司会進行を先生がやっておりますよ!

 そういや、いつのまにか学年主任の先生の姿もない。つまり、司会進行が先生にバトンタッチ!?

 司会進行が変わっただけでなく、先生が司会進行してる!?

 いわゆる、推しの司会進行ってやつ!?

 なにそれ、最高すぎなんですけど!マジ神すぎるんですけど!

 はぁ、相変わらず綺麗な声だよ……。マジで最高すぎる。この場にいてマジで良かった。生きててよかった。


 それからは至って順調に進んでいき。そう、スピードとしては今までの2倍速。学年主任、どれだけ猫の話をしていたのだろう。聞き流してたから正確にはわからないけど。とにかく、真面目に聞こう。先生の声を、言葉を一文一句残さず耳に焼き付けるために!


「日常的にしゅしぇ……しゅしゃ、選択をするようにしましょう」


 噛んだ。

 先生が噛んだ。

 推しが噛んだ。

 取捨選択で噛んだ。





















 なにこれ!?

 マジ可愛すぎるんですけど!?

 まじ神ってるぅ!!

 噛んだ自身に対する苦笑いも可愛いし次は噛まないように気を付けて言ってるのも良きなんですけど!?

 その時に舌足らずさがあるのがまた可愛いんですけど!

 この世界まじで最高か!?






 ……という内心の荒ぶりを必死に押し込める。

 ここで一人でニヤニヤしてたらやばいやつになっちゃうからね。

 ……世の中キツすぎない?


 その後、学年集会が進み。司会進行がもう一回猫好き先生に移ったから私は興味関心を半減させられ、聞き流し。そしてさっきのダメージを噛み締めていた。


 まぁ、4年目となれば目新しいことなんてほぼない……わけではない。学年内でこそ少ないが、学校全体となればそれなりの変化があるってもんだ。

 そう、例えば新しく来た先生とか……。




「リンパル先生とカーナ先生って雰囲気似てない?」


 寮のロビーにて、そんな声が聞こえてくる。

 そして私の耳もぴくり、と反応する。


「リーナ、どおどお」

「私は馬じゃない。あと、リンパル先生とカーナ先生は似てないから」


 カーナ先生は今年からこの学校に来た先生だ。確か、4年生の副担任だったと思う。


「例えば?」

「話し方。二人は一見似ているような話し方をしてるけど、全然違う」

「ほうほう」

「リンパル先生もカーナ先生もふんわりとした、若干間延びしたような話し方をするけど、全然違うの」

「何が違うの?」

「……わからないの?」


 この子、仮にもリンパル先生に4年間も教えてもらってるんだよね?

 エイミーは1年生の時から担任だったから……なんて羨ましい。


「いや、なんとなくはわかるけど、リーナの意見を聞きたいなって」


 そういうことか。


「まず、リンパル先生の話し方としてはゆっくりめなの」

「ほうほう」

「でも、カーナ先生は結構早口で捲し立てるような感じ」

「へ〜」

「あとねっ!リンパル先生は一見天然っぽいけど、実際は違うの。ただ、話す時の雰囲気っていうのかな。それが引き込まれる話。あと、話すのがめちゃめちゃ上手くない!?」

「それは同意するね」

「それとそれと……!」

「……うん、もうわかった。リーナがどんだけ好きなのかがわかったから」


 そう?もっと語れるけど?

 だけどエイミーは若干呆れたような顔をしているし、やめてこう。

 私は表情が読めるいい子なのだ。


「というか、取捨選択で噛んだ先生、可愛すぎなかった?」

「リーナ……」

「マジでニヤつくのを我慢するのが大変だった」

「……表情が読めるいい子じゃなかったの?」


 はっ。


「そんな、はっ、っていう顔されても……」

一見言いやすそうなのに噛む言葉がありますよね……消費者とか…………(私だけ?)

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