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10/20

10 推しの〇〇

「あれ……?」


 ガセボの屋根の下にある石造りのテーブルと椅子。

 そこに、誰かいる。

 そっと進めば。


「せんせ……」


 確実に聞こえるだろうその距離。だけど、聞こえていないようだった。

 もう少し進むと、先生の姿が見えた。

 テーブルの上に乗せた腕に顔を埋めている。というより、枕にしているようだ。ただ、左耳を下にしているから顔が見える。


「寝てる……?」


 その呟きは中に消えていく。

 そっと近づいて少しだけ覗き込めば、寝息も立てずに寝ている。間違いなく寝ている。

 腕の下には少しだけクシャッとなった紙があり、近くにはペンが置いてある。

 ……寝てる。マジで寝てる。

 それを確認すると私は少し離れ、先生に背を向けた。




「ほわあぁ!?」


 かわいっ!マジでかわいいっ!

 寝顔かわいい。初めて見た。


 もう一度少しだけ近寄り、そっと寝顔を見る。

 本当に化粧をしているのか?っていうぐらい自然なメイク。閉じられた瞼には少しだけキラってするアイシャドウが見えた。

 薄い唇がわずかに動いて、呼吸をしていることがわかる。耳元の髪も少しカールし、飛び出ていた。


 かわいい。

 それはとってもいいんだけど。

 ……私、課題を提出しないといけないんだよね。

 休んでいた昨日の課題を。今日、頑張って休み時間とかも使って完成させた。偉くない?


 で、提出するために先生を探してたってわけ。だけど先生って結構神出鬼没なんだよね。一瞬視線を外したら見失っていたことは数知れず。今日も全然先生が見つからず、ここでやっと見つけ……!しかも寝ている!寝てるんだよっ!(大事だから2回言うのっ!!)


 ……さて、どうしようか。

 このまま見ていた気持ちもあるが流石にそれはマズイ。選択肢としては


 ①そっと帰り、課題は明日提出する。

 ②先生を起こして、課題を提出する。


 だね。

 いやだけどここにずっといたら流石に風邪引く……けど、寝る時間は大事だよね!?私、気持ちよく寝ているところ起こされたら嫌だもん。ほんと、どうするのがベストかなぁ……。



「ん……」


 あ、やばい、起きる?

 そっと距離を取る。今まさにきましたよーって言うみたいに。

 だけど、首の向きを変えただけだった。セーフ。

 いや、セーフってなんだ?って自分にツッコミ返す。


 セーフどころの話じゃないんだよ、こっちは。どうするか、真面目に悩んでいるのです。

 え?どうする?マジでどうする?マジのマジでどうする?


 エイミーを呼んでくる?

 いや、その間に起きて行動してたらやばいな。


「ん……?」


 そうこうしているうちに、ゆっくりと、瞼が半分だけ開いた。

 ……起きちゃった。


「だれ……?」


 ゆっくりと身体を起こし、目を擦っている。

 え、かわい。マジでかわいい。猫みたい。


「リーナ……?」


 私は観念して口を開いた。

 今から逃げてももう遅い。


「はい。……リーナ・ヴィルネです」


 いや、答えはこれしかないよね。

 とろんとした目が次第にいつもの少しキリッとした目になる。


「……リーナ!?」

「……はい。リーナです」


 自分でリーナっていうのはどうなんだ?と思いながらいう。


「わ、私、寝てた……?」

「……っぽいですね」


 ごめんなさい、若干嘘です。寝てました。ガチガチに寝てるところ見て可愛いって内心悶えてました。マジかわいかったです。ごちそうさまでした。


「ちなみにいつぐらいに来たの……?」


 恐る恐る、というように言われる。


「……ついさっきデス」

「何その微妙な間……」


 そんなものはないですよ??ニコリ。


「えっと……それで、何の用?」


 落ちた髪を耳にかけながら先生が問いかける。


「これを提出しに来ました」


 そうだよそうだよ。本来の目的はこれです。忘れちゃダメだよね。


「これ、お願いします」


 差しだしたノートを見て先生は納得を顔に浮かべた。


「あ、昨日の課題か」

「はい。その……遅くなってすみませんでした」

「大丈夫だよ。それより、病み上がりで疲れが溜まってたりしてない?」


 若干いつもより疲れているかもしれないが、多分気のせい。


「……多分大丈夫です」

「そう?無理しすぎないようにね」


 推しからの心配その2!?

 これは何が起こってますか!?


「それにしても、リーナが体調を崩すなんて珍しいね」

「そんなこと、ないです」


 私だって人間だからねぇ。先生も人間です。ウフッ。……と考えてやばいやばいと思い、表情を引き締める。

 変な表情をして引かれて嫌われないようにしなければ。もし先生から嫌われてたら私、悲しすぎて絶望する。世界がモノトーンになるわ。


「明日の魔術実技、楽しみにしてるね」


 先生はそういうと、ガセボから去っていった。

 え、何、去り際の後ろ姿まで美しいんですけど。髪が風で美し〜くなびいてますぜ?何これ最高すぎる。

 それにしても今日はついているよ!!




 推しの寝顔が見れるとか、何これ天国ですか?

推しの〇〇→推しの寝顔

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