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戦火の山茶花  作者: 冬野柊
3/3

横浜の死闘

「残りの隊員をまだ紹介してないよな。こっちの部屋だ。戦況もそこでわかる。」

香川がそう言って藍原と共に、泉咲を案内する。

「ここが部隊司令室。つまりはミーティングルームだ。残りの5人は現在ここで情報収集と、各部隊との連絡を取り合っているところだ。」

そう言いながら、香川は手を2回叩き、5人の注目をこちらに引き付けた。そして藍原が話し出す。

「みんな、聞いて!新しい隊員が加わった。泉咲賽くん。高校生よ。色々教えてあげて。くれぐれも優しくね。コンプライアンス!で、賽、紹介する。うちの参謀、鳥牧(とりまき)謙介(けんすけ)。BITESきっての戦略家。そして、弓枝(ゆみえだ)星羽(ほしば)。射撃名人ね。私より若いけど腕は確か。

そして通信担当の大橋(おおはし)広夢(ひろむ)。機械オタクよ。そしてうちのエンジニア、東金(とうがね)蓮次郎(れんじろう)。エリートのエンジニア。我々の武器の性能も彼のおかげ。そして、そして救護班としても活躍してくれてる、妹尾(せのお)(なえ)よ。」

個性の強そうな、頼りになりそうな、つまりは未知数な何かを感じながら、「泉咲です。」と小さく一礼しながら挨拶をした。

「泉咲くん!わからなかったらなんでも聞いてね!」

弓枝が口を開き、そう言って安心させてくれた。しかし、男どもは仏頂面で、こちらを軽く見るだけで特に何も言ってこない。

「そしたら、訓練しておきたいって言ったわよね。星羽、お願いできるかな?私は残りの部隊の状況を確認する。」

そういって、泉咲は弓枝と行動をすることになった。

「うーん、私女だし、組み手はできないから、射撃練習しておこっか!武器は初めてだろうし、そこら辺の説明はしておくね!」

そう言って弓枝は泉咲を訓練ルームへと案内した。様々なトレーニング機材、そして武器の格納庫も併設されていた。

ここでまず、泉咲は射撃訓練を受けることになった。拳銃やらライフル、ナイフなどの物騒なものが並ぶが怖気付いてもいられない。防音用のヘッドセットを装着し、ゴーグルをする。

「的が人の形してて、その中の円を狙って撃つんだけど、実際はその円に当たらなくても的に当たってれば、敵のどこかしらには当たってるから。無理に致命傷与える必要もないしね。注意としたら、撃ってみたらわかるけど、反動が結構すごいの。だから、狙っても、引き金を引いた瞬間どうしても上振れする。ま、そんなところかしら?色んなタイプのマシンガンとか使えば、連射が可能だから、威嚇にも使えるしね。」

ものすごく得意げに話す弓枝だが、どうしてそんなに武器に詳しいんだろう、などと首を傾げつつとにかく説明を聞いていた。その他に装填の仕方や、小型のナイフ等接近戦に使える武器についても教わった。実際に何発か撃ってみるも、やはり衝撃がすごく、反動で体が仰反(のけぞ)る。

「接近戦担当しようかな…銃を撃つのは疲れますね。」

訓練だから疲れて当然だが、想像以上だったようだ。ぐったりしていると訓練ルームに藍原が入ってきた。

「賽!何へばってんのよ。もうすぐ我々も戦場に行くのよ?」

藍原の言葉はあまりに現実からかけ離れてるように聞こえるしかしこれは紛れもなく現実であり、泉咲が受け入れなくてはならないものである。

「でも、澪さん、この子、筋は良さそうですよ。覚えた早いですし。体力の問題は多少あるけど、腕力とかも、なんとかなりそうなレベルです。」

藍原はそれならいいけど、とため息をしながら怪訝そうに泉咲を見つめていた。そのうち、もう1人訓練ルームに入ってくる。大柄でマッチョ、体育会系を絵に描いたような男だ。

「おお。なんや藍原ァ。こんなとこにおったんか。いつになったらワシと結婚してくれるんや?あん?もうこちとら待ちくたびれとるぞ。」

関西弁で求婚してるこの男、外部の人間であるのは間違いない。

「水町さん!応援、感謝致します。しかしながら結婚は当分考えておりませんので、ご容赦ください。」

ふんっ!と鼻息を荒げる男、水町(みずまち)空海(くうかい)。相原が深々とお辞儀しているように、明らかに年齢は藍原より上。彼こそが兵庫に拠点を置く反政府部隊「HARBOURS(ハーバーズ)」の隊長である。応援要請を受けて横浜へと駆けつけてくれたのだ。

「随分貧弱そうな新入りやのう。ワシが性根から叩き直したろうか。」

鼻につく。バカが言いそうな悪口。そう言う類を大人が言ってるようでは話にならない。時代錯誤も甚だしい。

「まぁ筋肉ない方なので貧弱は否定しませんけど、そう言うことしか言えない時代に取り残された昭和の残党の方がよっぽど性根腐ってると思いますけどね。」

なんだテメェ!!と殴りかかってきた水町の右腕を泉咲は軽やかにかわし、涼しい顔をして水町を睨みつけた。

「あんたと争ってる時間はない。無駄な体力使いたくないんです。澪さん、この人の部隊が到着したと言うことは、いよいよってことですか?」

藍原は無言で首を縦に振る。

「気になっていたのですが…。なぜこんな部隊があるのでしょうか。戦争は現代日本において、起きることはまず無かった。なのに何故、このような部隊が各地で結成されてるんですか?」

今度は藍原はかぶりを振り、「あなたは知らなくていい。」と制した。泉咲は、藍原が何かを含んだような顔をしたように見えたが、とにかく今はその言葉を咀嚼した。これから戦いが待っているという現実を未だに飲み込めていない泉咲だが、もう遅かれ早かれ始まってしまう。何か、得体の知れない巨大な渦に巻き込まれていくような感覚がしているが、それが何なのかはまだわからない。

「賽。あなたはまだここで訓練を積んで。実戦には残りのメンバーで行く。水町さんこっちです。行きましょう。」

そう言い放ち、藍原、弓枝、水町は部屋を後にした。ようやく1人になった泉咲は、色々と状況を整理した。まず何故自分がここに幽閉させることになったのか、そして日米戦争にまで至った経緯、





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