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戦火の山茶花  作者: 冬野柊
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不確かな夜明け

何も生まれない。

あるのは確かな「生」と確かな「死」だけ。

何もかもを力で押し付けて支配する。

地球上で最も愚かな文化だ。


人間は愚かだ。古来から力で解決することを未だやめていない。「国を守る」という体裁よろしく、武力を行使し、弾圧を図る。それは解決と呼ぶには遠すぎる実態だ。強制終了、有無を言わさず、相手に無理矢理「YES!」そう叫ばせただけである。「No!」と言う言葉はどこにも届かない。儚く散る運命となってしまったその命を賭してでも…。子孫繁栄という動物的本能を持ち合わせていながら、其の命を(なげう)って戦火の中に消えていく。そして、また誰かの命の炎を容易く消していく。


目に余るほどに愚かな文化、悪しき文化だと言うのは明らかなのに何故人はそれを避けて通ることが出来なかったのであろうか。人類の歴史において切り離せない大きな出来事として、我々も当然のようにそれを習い、今を生きてきているが、その事実を学んだところで然程(さほど)意味はないと思っている。

果たして誰もそれを止められなかったのか。止めた人もまた、そこで命を落としたのだろうか。そのサイクルに意味はあったのだろうか。いや、無いのではないか。だが無かったら命に意味がないことになる。結果として、現在の世界があるのが意味なのか。この文化がなければ今の世界は生まれていないのか。

もしかすれば人間は昔から、現在に至るまでこの堂々巡りを続けているのかもしれない。答えを探すために、命を賭したのかもしれない。しかしそこに存在する生と死をもってしても、善悪は推し量れない。領土の広さは正しいとイコールにならない。だとすればアメリカや中国が全てなはずで、小さな島国には発言権さえ与えられないだろう。何故力を、正しさの指標にしてしまったのか。そして残念なことに、現代になっても、その答えはおよそ出てはいないだろう。何故ならまだ武力による争いがあるからだ。自分自身も「止められなかった」1人なのだろうか。そんな現代を夢見てかの日の命は散ったのだろうか。それは余りにも報われないではないか。今こうしてつらつらと話してる最中も、まさにその戦渦の中で怯え、逃げ惑う子供達がいて、それでも攻撃をやめず、戦果を上げるべく人に銃口を向ける者がいて…。思いとどまれないだろうか。その銃口は自分にも向けられていることを理解しているか?

それにしても「せんか」という言葉だけでこれだけ種類があるのがもはや恐ろしい。命を擲って、その命を葬って、その戦いを終えたあと、子供達にその命の尊さを説けるのか?「だからこそ重い」とでも言ってたのだろうか。命の無駄遣いもいいところだ。

 過去は事実だ。歴史を教える必要も、0ではないだろう。問題の本質はそこにはない。何故、「戦争」をしなくてはならなかったのか、ということだ。人の世の中は当然ゲームではない。正しいルートを選び、正しいエンディングを迎えるわけじゃない。勿論、やり直しも効かない。過去には戻れない。そして、ゲームではない以前に、我々は「正しさ」に辿り着くことがまだ出来ていないのだ。だから争うのだ。「正しさ」を「証明」したいからだ。その方法として戦争を選んでしまったに過ぎない。改めて、愚かだ。愚かな歴史でしかない。「黒歴史」などと言って囃し立てる事が出来たらどれほど楽だったであろうか。だがそんな言葉で片付ける事など到底出来やしない。悪しき歴史だ。それを、子供達に英雄伝の如く伝えていくなど、傲慢の極みだろう。

その力は、知能は、勇気は…こんなことのためにあるのだろうか。それぞれの夢、未来、希望は、そんなところに捨てなきゃいけないのだろうか。

なぁ…?誰か教えてくれないか。特に国の偉い人達。本当にそれでいいのか。それしか出来なかったのか。そんなことにどれだけの意味があるのか。何を産むのか。いや、何を産んだんだ。生死を持ってお前らは何を手にしたのか。


しかし現代を生きる人間も、その答えに辿り着かなかった。

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