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午前0時のスケアリータウン  作者: 三森れと
Prologue『スケアリータウン』
1/13

Prologue『スケアリータウン』1

【17:00】


学校帰り、寄り道をして遊んでいた子供たちがそれぞれの家に帰っていき、その日あった出来事を親に楽しそうに語っている。


ある子供は「この前お兄ちゃんに教えてもらった問題が授業に出てきてね、バッチリ答えられたんだー!お兄ちゃんのおかげだよ!」と誇らしそうに語り、


ある子供は「今日の給食で出たパン、めちゃくちゃ美味しかったんだよ!フライされてて、お砂糖がたーっぷりまぶしてあって…ねえねえ!今度ママも作ってよ!」と目を輝かせながら語っている。


そんな子供たちの話を、それぞれの家族も又楽しそうに聞いている。


「夜ご飯までまだ時間があるから、それまでに宿題やっちゃいなさい。話の続きは夜ご飯の時にしましょう」


「…はぁ〜い」


母親の作る美味しい夕食にありつく為には宿題をしなくてはいけない。


それまでの目の輝きが嘘のように暗い顔をさせながら、通学鞄の中からテキストとノートを取り出した。


………


【19:00】


1日の仕事を終えた大人たちが帰宅する。


大人の帰宅と夕食の開始を待ちわびた子供が、元気に「おかえりなさい!早く着替えて、ご飯食べよー!」と大人…この子供の父親を急かした。


「今着替えてくるから、ちょっと待ってね」と苦笑いしながら着替えの為クローゼットのある寝室に向かう。


少しでも早く夕食を食べる為、自主的にテーブルセッティングの手伝いをする子供。


この子供の家の本日の夕食はハンバーグがメインディッシュのようだ。


子供の好みでトロッと溶けたチーズがのったハンバーグ、お皿にはハンバーグと共にマッシュポテトと人参のグラッセ、ケチャップを和えたショートパスタがのっている。


他には育ち盛りの子供がよろこぶ大盛りライス、かぼちゃのポタージュ、そしてさまざまな葉野菜をブレンドしたグリーンサラダが用意されている。


葉野菜が苦手なこの子供だが、先日スーパーマーケットで安く売られていたドレッシングを使って作ったサラダは、これまでの葉野菜嫌いが嘘のように勢いよく食べていたのだ。

先日だけの気まぐれでなければ良いのだが…母親はそう祈っていた。


着替えを終えたもう一人の親がリビングダイニングにやって来た。


子供の手伝いのおかげでテーブルセッティングも完了している、皆で席に着いて楽しい夕食を始めよう。


………


【22:00】


楽しい夕食の時間もあっという間に終わり、1日の汚れと疲れを取る為あたたかい湯船に浸かる時間だ。


湯船から手を伸ばし、先に入浴を済ませた子供が乱雑に置いたシャンプーボトルたちを綺麗に並べる。


普段はスーパーマーケットで売られている安い入浴剤を使っているが、今日は"自分へのご褒美"にと特別な入浴剤を使ってみた。


結婚するまで一切の家事をしてこなかったこの母親にとって、朝から晩までありとあらゆる家事をこなすことは本当に大変なことだった。


それも、自分一人の為の家事ではなく、家族の為の家事なのだからより気を使うしイレギュラーなことだって起きる。


「専業主婦の私でもこんなに大変なのに、働きながらで家事もしてる人って本当にすごいなぁ…」


母親はそう呟きながら目を閉じ、入浴剤のラベンダーの香りと湯の温もりをじっくり噛みしめる。


………


【23:30】


母親の次に入浴を終えた父親も髪を乾かし終わり、あとはもう眠りにつくだけとなった。


先に眠りについた子供の様子を伺うと、眠りについてからわずか1時間少々しか経っていないというのに布団は蹴飛ばされ頭から外れた枕がベッドから落ちそうになっている。


寝具の激しい乱れとは裏腹に、子供の寝顔はとても穏やかだ。


一体どんな夢を見ているのだろうか…母親と父親は顔を見合わせ苦笑する。


父親が子供を起こさないよう寝具をそっと元の位置に戻し、そのまま優しく頬を撫で「おやすみ」と囁いた。


母親と父親は子供部屋を後にし、自分達の寝室に入った。

揃ってベッドに入り「おやすみ」と挨拶を交わすとベッドライトの明かりを消し眠りについた。


………


【23:59】


この街の全ての建物から明かりが消えた。


営業している店はひとつもなく、住宅にも明かりがともる家はひとつもない。


この街に住む、全ての住人が眠りについているからだ。


深夜営業を行う店はひとつもないし、夜ふかしをする家庭も住民もいない。


ーーこの街の住民は、いや、例えば旅行でこの街に足を踏み入れた者も含め、この街にいる者は皆、街にいる間のみ"ある特異体質"になる。


『0時から6時までの6時間、一度も起きることなく眠り続ける』


例え23時59分まで眠気がこなくとも、0時になった瞬間、強制的に眠りについてしまうのだ。


住民にとってこの体質は生まれた時から当たり前のものとして根付いている。


その為、大抵の住民は規則正しく23時半頃には眠りにつけるよう日々生活している。

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