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中編

この世界で1番自分が美しいと信じて疑わなかったバロック様は、初めて私と顔合わせした時、私の幼いながらも人間離れした美しさに嫉妬した。


バロック様6歳。私が4歳の時、ナルシストの幼いバロック様は私の美しさに見惚れるのではなく、ただただ嫉妬心を燃やしてしまった。そして、私の見た目を普通以下にする事によって自分自身が誰よりも美しいという自尊心を保っていた。


成長と共に美しさを讃えられる自分と、「ブス」と見た目を貶される私を見て満足感を得たバロック様は本来の私の姿など過去のものとして記憶から消し去っていたのだろう。



バロック様も18歳になりナルシストな自己中心的な性格は変わっていないけど、自身が美しいと感じたものに嫉妬するのではなく、美しい物をどんな手を使っても集めるという事が趣味となっている。


美しい自身を引き立てるのは美しいもの。

美しい者の近くには美しいものしか存在が許されない。

そんなおかしな理論を持っている。


もちろん女性もその一つ。

バロック様は美しい女性に目がない。

婚約者の私がいながら美人と言われている色々な令嬢との噂が絶えなかった。


近くにいる現在の私の本来の姿を知ろうともせず……




私は周りの声に惑わされず、自分自身を見失わずに自分磨きを常に行ってきた。


ひっつめ髪のお団子頭で髪の毛を隠しながらも毎日ケアを欠かさず綺麗に伸ばして来た金色の長い髪。


大きい眼鏡に隠されているけど、どんなに忙しくてもスキンケアをしっかりおこなってきた透明度の高い白い絹のように滑らかな肌。


ひっつめ髪で吊り上げられていたキツめな目は本当はクッキリとした優しい印象を与える大きな目。


例えドレスが地味なものでも、アクセサリーなど着けていなくても私が身につけているものは全てが美しく華やかな印象になる。


本来の私の美しさに誰もが目を奪われ、言葉を失う。



「ア……アリーネ……本当にお前なのか? いや……そんなはずは……」

「正真正銘わたくしはアリーネですよ。婚約破棄、確かに承りましたので今まで我が家が行ってきた支援に関しては再度お父様に検討していただきますね」

「いや……ちょっと待て。婚約破棄は冗談だ。ちょっとした余興だよ。友人の夜会を盛り上げたくて……」


……婚約破棄で夜会が盛り上がる? その考えは一体どこからくるのでしょうか? 逆に周りの皆様はこの状況に若干引いている感じがしますが……



「バ、バロック様……私との約束は? お腹には貴方の子がっムグッ……」


私に対して弁解するバロック様にマリアが焦った声を上げる。

そんなマリアの口をバロック様が慌てて手で塞いだ。


でも、しっかり聞こえていましたよ。

見た目だけのナルシスト最低男だとは思っていましたが、まさかここまでクズ男に成長するとは……



温厚な近衛騎士団長として有名なバロック様の父上のターミネド公爵も流石に今回の事は黙っていられないでしょう。




ここ数十年。力ある我が家マルチナ辺境伯騎士団のお陰でこの国は他国からの侵略も国境付近で全て完結して、王都は安全そのもの。


治安が安定して平和な我が国は王都にいる近衛騎士団を始め、王都にいる騎士達は力を奮う機会が少ない。


そうなるといくら鍛錬をしても自然と王都に所属している騎士そのものの実力も士気も下がって来てしまう。


それを阻止する為に、辺境伯であるお父様は近衞騎士団を中心に王都にいる騎士を辺境地区で無償で預かり鍛錬させて、いざという時の為に実施訓練をさせている。


もちろん、お父様が自発的にやっているのではなく騎士団を統括するターミネド公爵と国王から頭を下げられての事。そんな中で国王主導でほとんど無理矢理結ばれた私とバロック様の婚約。


要は私は人質のようなもの。


力ある辺境伯とはいえ、王族や王都の騎士を敵に回すのは流石によろしくない。


我が家から断る事も無碍にする事も出来ず、お父様も頭を悩ませていた私とバロック様の婚約。きっと、お父様はバロック様からの婚約破棄を喜ぶ事でしょう。



「バロック様、ご自身が一度口にした事。崇高な騎士ならば責任を持ってください。婚約破棄は確かに承りましたのでマリア嬢とお幸せに」


「ま……待てっ‼︎ アリーネっっ‼︎」


私がバロック様とマリアに対して笑みをむけると、バロックは隣にいたマリアを軽く突き飛ばして顔を赤らめながら私の手を掴んできた。


私は咄嗟に掴まれた手を捻り、自身の体を回転させてバロック様の背後をとると、空いている手でバロック様を床に叩きつけるように押さえ込む。


素早い身のこなしに、周りでこの状況を眺めていた皆が息を呑む。


「私はこの国1番の兵力を持つマルチナ辺境伯の娘です。それなりに武術も身につけていますのよ。まぁ……代々この国の騎士団をまとめ上げているターミネド公爵家の唯一無二の後継者であるバロック様にはこのくらいかわして頂きたかったのですが……」



私の言葉にバロックは先程とは違った意味で顔を赤らめた。


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