第二章 第十七話 【 魔術② 】
「〝太陽の下僕達よ·····」
大事なのは、体の奥の奥に居座っている魔力を引き出すこと·····
「···我が手に集いて力となれ❨ファイアボール❩!〟」
胸の奥で、何かが引き摺り出された感覚と同時に、手の中に炎の球が出現した。
「すげぇ·····」
できた───、魔法が使えた!
感動に飛び跳ねるリョーガの手の中で、炎の球は、みるみる縮んで、消えた。
「あれ?消えた·····」
「当たり前····」
近くでリョーガを見守っていたアルティマとコロルが、近づいてきた。
「魔法の炎は魔力を可燃物、術者の操作、または詠唱を着火として形を保ってる·····お前さんは今、魔力を止めたから火も消えたんだ」
「なるほどね·····」
人差し指を立てるコロルの説明に、納得する。
着火と酸素と可燃物·····理科で習ったなんちゃらの三要素だ。可燃物の魔力を手から出して、詠唱で着火────魔法にもちゃんとしたカラクリがある訳か。
「それにしてもお前さん·····」
「?」
「いや、試した方がいいか····」
コロルに言われ、両手を挙げる。
右手をコロルと左手をアルティマと手を繋ぐ。
「····何してんだ?」
「よし、流すぞ」
何も理解できないリョーガの横で、アルティマが頷いた。
その瞬間、体の中を何かが走った────
「来た····」
「おい、嘘だろ?」
アルティマの呟きに、コロルが信じられない様子でリョーガの手を離す。
「いや、いい事ではあるが·····」
「ねぇ、だからなに?なんなの?」
リョーガを他所に、しばらくコソコソ話していた二人がやがて、何やら深刻そうな顔でリョーガに向き直った。
「なんだよ····あれか?魔法の才能がないとかそういう事か?」
「いや、そういうわけじゃない····むしろ逆なんだが、それにしてもなぁ·····」
まさかこの展開はあれか?魔法的なチートか?チートなのか?
「お前さん、魔力伝導が異常な程良いな····」
「キター!·····ん?マリョクデンドウ?」
聞き慣れぬ言葉に一瞬目を見開くも、頭の中で文字が一致したのか、手を叩くリョーガ。
マリョクデンドウ····魔力伝導。名称通りの意味なら、魔力の伝わりの事だろう。
「具体的にはどれぐらい?ハウメニーマイマリョクデンドウ?」
「腹立つからあんま言いたくないが·····オレでも底が見えん。少なくともオレとティーを圧倒してるな」
「え、マジ?凄くね?」
あれ?もしかしてこれ、確定ですか?楽々異世界ボーナス俺TUEEEEチーレム展開確定ですか?
魔物が怖くて村から出ていけないとか悩んでた昨日までの俺が馬鹿みたいだ。まぁ行く宛がないのは変わらないが·····。
「そーかー····ぐふふっ」
「ムカつく·····」
「グハハハッ!これで世界は俺の─、グボッ!?」
まさかの才能を見つけて高笑うリョーガの背骨が、アルティマの蹴りを受けてボキリと嫌な音を立てる。
「酷くない?ねぇ!?」
「あー、リョーガ·····」
地面でのたうち回りながら背を押さえるリョーガに、今まで黙っていたコロルが口を開いた。
「ん?なんだ?····はっ、まさかこの俺にまだチートが?」
「いや·····」
自らの両手を眺めて、これから世界を侵略するラスボスみたいな笑みを浮かべてアルティマを煽るリョーガの言葉をコロルが否定する。
「ひじょーに言い難いことなんだが·····お前さん、魔力が全然ないぞ?」
「え?」
しばし、場が静寂に包まれる───。
「ないって、どんぐらい?」
「ぜんっぜんない····そこのテントウムシといい勝負」
コロルの指さす先のナナホシテントウムシが、草のてっぺんから空に飛び立った。
あれと同じ魔力値·····ま、まさかそんなことは·····。
「ほんとだ、全然ない·····」
リョーガの魔力を見たのか、アルティマがコロルの言葉に肯定の意を示す。
「·····」
ポトリ····と、別の草の葉にとまったテントウムシが、アリにつつかれて地面に墜落した─────




