第二皇子、ヨシュア・クインの熱誠
エリオットはまだ学生で、未成年のくせに、なかなか話しがいのある奴だった。
自分の側近候補を、帝国に放り込んで学ばせているだけはある。
それで用事が済めば、考えているのはもう彼女の事だけだった。
バイス王国の王女が、俺にあからさまな好意の視線を向けてきていたな。
頭空っぽですぐに遊んでくれそうな女の子は、少し前なら都合がよくて好きだったけど、今はもうなんの興味もない。
あ、そうだ。
彼女へのお土産は、稀少鉱石クインタイトがいいかな。
帝国の技術を集約して、精製したものだ。
着飾る為の宝石などではない。
機械工学に利用できる、貴重な資源だ。
国外へ持ち出せる量は少ないけど、彼女ならこれを上手く使うのではないか。
で、それのついでで本物の宝石も少しだけ。
多分、彼女は宝石には見向きもしないのだろうけど、俺的には味気なくて悲しいから、宝石箱にそっと添えてみた。
早く会いたいな。
自分の腕の中にすっぽりと収まる華奢な身体なのに、勇ましい姿も見せる彼女の事が頭から離れない。
今回はお礼が口実で会ってくれるけど、肝心なのは、その次の約束を取り付けられるかだ。
俺、信用なさそうだしなぁ。
「あのお嬢さんを妃として帝国に迎え入れる事ができれば、貴方の地位は安泰です。弟皇子や、兄皇子に対抗できますね」
「いや、いいよ、俺は。俺は婿になるって決めたんだ。帝国内に留まるつもりはないよ。アリアナ、結婚してくれないかなぁ」
アーネストが余計なことを横から言ってくるけど、アリアナとの事は真面目に考えたかった。
ほんの短時間を一緒に過ごしただけだけど、あの子を逃したら、俺は結婚しようと二度と思わないはずだ。
「この訪問に賭けるしかないな」
自分で百戦錬磨と言っていたのに、今までの経験が、彼女に対しては何一つ役に立ちそうになかった。