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 王女、シンシア・エラージュの嘘


『あ、お兄様?今回の長期休暇は、帰るのが少し遅れそうなの。それが、同じ寮の同級生の子が体調を崩して、アニー・ロッソって子なのだけど、他に誰も看病する人がいないのよ』


『……え?家族?御両親はすでに亡くなっていて、お姉さんが一つ上の学年に在学しているのだけど、彼女、もう街に遊びに行っちゃって、連絡が取れないのよね』


『……え?いつもそんな事があるのかって?うーん、あんまり私の口からは言えないけど……うん、言えないから、それは聞かないで。だから、私の愛しい婚約者様にも、そんな風に伝えてくださる?』


『……彼が寂しがってる?分かったわ。私からもお手紙を書いておくから。あ、この魔道具の通信機はもう彼の所にも配備されたのかしら?』


『……あらぁ、じゃあ、これを使って連絡しておきましょうか』


『……はい』


『……はい』


『お兄様が心配するようなことは何もありませんわ。私、よく看病を頼まれるから、慣れているの』


『……あ、違うのよ。お姉さんの事を悪く言わないで。きっと、御両親を早くに亡くされて、姉妹で苦労されたでしょうから、今は羽を伸ばして遊びたいのよ。大丈夫よ。大したことではないわ。これも、王族の慈悲の一つだと思えば。じゃあね、お兄様。落ち着いたらすぐに帰るから』


 通話機を切って、台座に戻す。


 手元に届いたばかりの魔道具は、便利な事この上ない。


 丸い台座に、数字が書かれた小さなボタンが円形に並んでいる。


 全体的に茶色で、縁に金色の金属が使われていて上品な見た目だ。


 このデザインは気に入っていた。


 管を通して声を伝えるわけでもなく、どこにも何かで繋がっているわけではないこれ、一体どんな仕組みになっているのか。


 これを作った人を誉めてあげたいわ。


 ふふっ。


 寮の自室で、一人ほくそ笑んでいた。


 おかげで、アリバイ工作はバッチリね。


 城に帰る前に、城下で少し遊べるわ。


 城に帰れば、王女としてまた勉強ばかりしなければならないもの。


 婚約者のあの人もつまらない人だし。


 私の国、バイス王国は平和だけど娯楽も少ないし。


 学園に入学して寮生活が始まれば少しは遊べると思ったのに、ちっともそんな機会はなかったんだもの。


 少しくらい、いいでしょ?


 ホント、便利なものができたわぁ。


 魔道具の、通話機っていうものはね。


 さて、どこに行こうかなぁ。


 まずは誰にも見つからないように、学園から外に出ないと。


 その為には平民風の服に着替えて、一般の学生が利用するような乗り合い馬車に乗って人混みに紛れるのが一番ね。


 私の人並み以上の容姿を隠さなければならないから、何か頭から被るものも必要よね。


 それで、部屋を出る頃には、留学生姉妹のことなんかすっかり頭から忘れ去られていた。









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