教室
「おい、青木ィ〜!助かりたいならそこで叫べェ!」
水浸しの教室の中。
体育教師の松田が僕に向かってそう叫んだ。
僕の足元には、複数の死体が転がっている。
薄白い肌を露わにし、気味の悪い笑みを浮かべながら傘の増していく水中にぷかぷかと浮かんでおり、何も分からない僕の事を見つめている。
死体のひとりが話しかけてくる。
「ネェネェ、青木クン。大丈夫だよ、叫ばない方が良いよ」
「なんで......」
「ダって、叫んでも何も良いことがナいジゃない?」
死体はそう言って、体温の奪われた薄白い肌をゆっくりと動かして、俺に手を伸ばした。
彼女の腕が、艶めかしく僕の手をとる。
彼女の四肢が、艶めかしく水面を揺らす。
学校だというのに制服も何も着ていない死体は、無表情で歪に笑いながら、僕のことをそそのかそうと語りかけてくるのだ。
「おい、青木ぃー!早くしないと置いてくぞォー!?」
松田が叫ぶ。
もはや半分ほどが水浸しとなってしまった教室の外から、苛苛した表情でコチラを眺めている。
「......たく、この後にも試験入ってんだよ。最近の若いヤツは"叫び"もろくに出来ねぇのか?」
死体が転がっている。
ぷかぷかと浮いたり沈んだりを繰り返して、コチラを見つめている。
「青木クン、死ぬって、なんダろうね?」
「痛イのかな、怖いのかナ?苦シィのかな......?」
「世界って、どうやって出来てルのかな?」
「脳って、美味シいのかな。不味いのかナ?」
「私たちは、いったいなンなのかな?」
「始まりは、アイツだヨ?」
「あいつかヤッタンダヨ?」
「言うこト、聞かナい方がイイよ」
「わたしの声、かわイいでしょ?」
「好きナんでしょ?嫌いナんデしょ?」
「わたしの裸、見たくナいの?」
「ねェ、青木クン、どうしテ......わたしは死んじゃったのかナ?」
彼女のその言葉に、僕は、静かに涙を流すしかなかった。
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