星願
この時期になると、私は星を眺めることが増える。
太陽の落ちた暗い空に、沢山の瞬く星。
何千、何万では済まない程のそれらを見渡して、
"今日こそ私の見たいものが見えるんじゃないか?"
……そんなことを考えて、ぼうっと星を眺めるのだ。
しかし、何年それを続けても、私の見たいものが見えることは無い。
それをわかっていながら、今日も私は空を仰ぐ。
眼鏡のレンズ越しに映る、綺麗な星を眺めながら白い息を吐いた。
空は、数え切れない程の光で満ちている。
そんな風に眺めていると、いつも考えてしまうことがある。
日本人、いや世界中なのかもしれないが、昔を生きた人々は星の瞬きに"故人の姿"を見たという。
儚く輝く星の光が、消えていく命の灯火の様に思えたのかもしれない。
その他にも、神だったり、精霊だったり……
とにかく、星の光は昔から大切なものとして人々に信仰されてきた存在という訳だ。
……けれど、実際はなんてことは無い。
殆どが恒星の核融合によって生まれた熱と光の余波が伝わり、私たちの目に瞬きとなって見えているだけだ。
科学が世界を究明している現代では、信仰も、伝統も、伝説も、逸話も、理論の伴わない作り話でしかない。
そんなことを考えて、いつも通り明かりの消えた家の中に戻って眠りにつく。
───そんな、なんてことも無い日の、なんてことも無い夢の中。
その日も少しだけ曇った暗い空に、幾重もの星がきらきらと瞬いて見えた。
周囲にはどこか見た事のある面々が揃っていて、一様に暗い顔をしていたように思う。
寒々とした夜の空気に、独特な匂いが漂う。
……そんな中、私の隣にいた人が、泣いている私に声を掛けた。
『───は空から見守ってくれている』
昔、友人の葬儀で誰かに言われた言葉だ。
その声は、皆と同様にとても苦しそうで、辛そうで……
線香の香りと共に現れたその声は、これからも私の心の奥底にこびりついて離れることは無いのだろう。
……そんな、とある冬のお話。