空から落ちた少女
また同じ夢だ。
黒い雲が地面まで降りるそう、波のように沸き返っている。雷の光と轟きはあの雲を貫通し、大地に届く。
凄まじい嵐が、何もかも全部を巻き込まれて壊した。
慟哭。
悲鳴。
そうしている人も。そう、希望も全部、あの漆黒の翼にぶち壊された。
大地が燃えている。
炎の真ん中に、まだ子供の俺が泣いている。
倒した廃墟の下の小さな手を見て、俺が号泣している。
そして俺の隣に、ぼんやり見える小さな影がいた。でもあの時の俺は全く『あの子』のことを気づかれなかった。
今更に、ますます『あの子』のことを思い出すことができず、記憶の底に封じれている。
「エリナ…」
目を覚めた同時に、口からこの名前を出した。目じりの涙を拭いて、必死に意識を夢から取り戻す。
なんでまたこの夢を見ただろう?
あれからはもう10年過ぎ、あの頃のトラウマすでになくなったはずなのに…この夢だけは時々見た。
(ねむい…)
目覚めたばっかりなのに、何だかまた眠気を襲ってきてるように、二度寝しようと思って…
「下の人、どいてください!」
声を聞いた。
下の人?俺じゃないだろう…まぁ、無視しようか。
「はやくどいてくださいぃぃぃ!」
「うるさいなぁ。誰かよ、人が寝てるのに。」
ちょっとムカついて、文句を言うつもりだけど。なにもかも突然すぎて、残酷だ。
「!!!!!!!!!」
い―――――――――た――――――――――い!
言葉で話せない痛みが電流のように瞬時で全身に襲い、叫びたいが痛くて声もできず、心の中に絶望の悲鳴を叫ぶことしかできない。
男性として一番大事な部位をかばって、俺は木陰の中に縮こまっている。
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
全身に痺れたようで痙攣を催しつつ、涙も止まれない。精一杯目を開けて、今の状況を確認したい。
涙のせいか、おぼろに見える彼女の姿は太陽の光によって、光の中から歩い出す女神のように美しい。
「大丈夫ですか?」
風に乱れたしろすみれ色の髪の間に、繊細な手は俺に出した。
完璧な鼻筋の線の末に、ピンク色の唇が小さくて可愛い。清らかな紫の瞳の中に俺の顔もよく見える。
大丈夫わけねぇだろうと怒鳴りしたいけど、彼女の顔を見たとたん全ての怒りと痛みが消えていた。
この一瞬、俺は『可愛い子は何をしても許される』って言葉を理解した。
「だいじょう…」
あの手を握るつもり瞬間、彼女の手が俺の手を避けて通った。そして、俺の隣にいる青い鳥を抱き上げて、自分の子供みたいに優しく羽根を整理してあげた。
俺に…聞いていなかった…
股間の痛みが急に激しく、唇を噛み破れるほど全身に蔓延した。
「踏まれたのは俺だろ!謝ることもできないのか!」
俺の叫びを聞いて、彼女はすごく悲しそうな表情になった。
「そうですね。気づかれませんでした。痛いよね、ごめんなさい。」
「鳥じゃなくて、俺に言ってよ!ちくしょ!」
「そんなに元気そうなのに、大丈夫じゃない?」
「どの目に見えるんだよ!」
ちくしょう…女神の顔をして、実は悪魔だ、この女。
俺にこんな酷いことをして、まったく謝る気がないなんて。
すこし考えた後、この女は鳥を抱いてまま俺の方に蹲ってきた。
「あなたの○○に傷つくことに申し訳ございません。」
○○を言った!年頃の乙女は○○を言った!
「お詫びとして、これから私が責任をもって、あなたの○○の面倒をやりましょう。」
近づいて来る。
「ナイフを持ってなにをするつもり?!近づくなよ!やめろ!いやだ、やめろ!」
より近づいて来る。
「わかった!わかった!あんたはわざとじゃないことがわかった!だからナイフを締めてよ!」
「ご理解ありがとうございます。これからクエストの報告がありますので、失礼します。」と彼女は走っていた。
危なかった…本当に男の証拠が奪われると思った。
そして長い休憩を取って、ようやく立てるようになった。教室に戻りにしようと思って、チャイムが鳴らんた。
「やっぱり痛い…くそ…あの女…」
足を動く度に股間から痛みを感じる。
でも、あの女の胸に付けた徽章は『ユニコーン』だことは…三年生の先輩か。それにクエストの報告って、彼女が抱いている青い鳥に関係があるだろ。
ブルーバードは、町から遠く荒野にしか生きていないはずだ。三年生一人が荒野に行くなんて、自殺行為だ。
「もしかして…」
まぁ、いずれにせよ俺と関係ないことだ。
荒野とは、『世界の終わり』の後現れた場所である。文字の通り、なんもない大地だ。
いや、なんもない大地と呼ばれるも不適切だ。なぜなら、あそこには人間以外の色んな生き物が生きてる。
その生物たちは極めく危険なので、人は安易に荒野に近づけない。
そして『世界の終わり』とは、今から遥かの昔の時期のこと。数字で説明されても、『1』の後ろに『0』を何桁付けばいいのか俺にはわからない。
あの時期全球的の災害が起こし、人類は滅亡寸前に至しまった。人類の文明も殆ど壊滅した。
あれ以来、この地球の大半は人が住めない荒野となった。
しかし、人類はこの地球に生きてる以上、やむ得なく荒野にある様々な危険と遭遇する。その場合、危険を排除できる者が必要だ。
そして、この『トラヤスカ学院』はそのような者を育成する学校だ。
最低入学年齢は14歳、上限はなし。学校は五つの学年を分けて、それぞれ違うバッジで学生を区別してる。下からは『シールド』、『ソード』、『ユニコーン』、『グリフォン』、『ドラゴン』五つのバッジがある。
ちなみに俺は『ソード』をつけてるので、二年生だ。
「先の女、絶対に先輩と呼ぶのはいやだ。」
くそぉ、今でも痛い…
一歩一歩、ゆっくりと、ようやく俺は教室に着いた。
「よぉ、リオ。また授業をサボって校舎の後ろに昼寝したか?」
うるさいやつが来た。
胡桃色の天パー、そして紅色の瞳、いつもあほみたいにニヤニヤしてる彼は、俺の幼馴染。じっとするとモテるはずの、いわゆる残念系男子。
「俺、何の授業をサボった?」
「初級薬学。」
「やっば、必修かよ。」
「何の授業もわからずにサボったか、お前は。」
「眠れたくてどうしようもないからだ。」
「まぁ、睡眠もとったから、これからヒューズさまと一緒にクエストいかない?次の授業もさぼれるよ。」
このトラヤスカ学院は授業をする以外、町の人から様々のクエストをまとめ、学年別の掲示板に貼っている。掲示板のクエスト表紙を取って、学生会のクエスト会館に登録すればクエストを始める。そして、同じ会館にクエスト達成の報告をして、報酬をもらえる。
もちろん、クエストを完成したら単位ももらえる。
「疲れたから、遠慮する。」
自分の席に伏せた。
「うそだろ?!世界一のサボリ屋のリオが授業をサボるチャンスを自ら手放すなんて…誰だ、お前は!本物のリオを返せ!」
「揺れるな!揺れるなよ、ばか!マジ疲れてるから、行きたくない。」
本当は股間の痛みがまた残ってるから。
「金がないよ…このままじゃ生活もできないんだ。」
「この前クエストやったばっかりじゃない?もう金がないかよ。」
「じゃんじゃん!この子を見て、きれいでしょう?この金属の輝き、この切れ味、この形!この子を買うために僕の全財産をかかった!」
剣を『この子』と呼んてるか…
ヒューズはとんでもない武器マニアで、金は殆ど武器のために使った。
でも実のことは、報酬の大半を彼は家計の手当にした。自分の趣味に使ったのはほんの少しだけってことが、子供の頃からずっと一緒にいる俺は知っている。
だから、いつも彼の無茶を付き合ってた。
「それに、僕たち、せっかく『全クエスト解禁』の許可を得たのに、より活躍するべきじゃないか。」
危険に晒すか、やれるクエストが減らすか、難易度高すぎるクエストも、低すぎるクエストも、学生には良くないから。生徒たちは自分の徽章と同じマークがつけてるクエストしか受けれないと決めた。
しかし、特例がある。
それは『全クエスト解禁』の許可を得る学生、いわゆる『解禁者』だ。そして残念だけど、俺とヒューズはその『解禁者』のメンバーだ。
「僕が前衛として、モンスターたちの目を付け、何回も何回も剣で攻撃を防いて、リオのために隙を作る。その隙を狙ってリオは、銃で…」
「お前をぶっ飛ばす。」
「なんで僕だよ!」
「うるさいから。」
実にうるさいからこいつは。
「でも、解禁者になってからもう何ヶ月なのに、僕たちは他の学年のクエスト一つもやってないじゃん?やりましょうよ、ね?」
「別に単位が同じじゃない?」
「ちっちっち…わかってないな、リオは。このトラヤスカ学院の3000人の生徒のうち、全クエスト解禁の許可を得た人は、『五年生』2名、『四年生』1名、『三年生』1名、そして僕とリオを含めてただの6人だ!」
「『五年生』もいる?意味ねぇだろ?」
「いいえ、クエストはすべて学生向きわけじゃないんだよ。教師へのクエストや他の直々指名のクエストも受けれるんだ!そして、一番大事なのは、解禁者になった学生は首都の騎士団に入った人が、多い!」
そうか、ヒューズの夢は首都騎士団に入ることだっけ。
(首都騎士団…姉さんは今元気かな…)
「なになに?首都騎士団と聞いて、レイナス姉さんを恋しくなった?」
「ちげぇよ、ばか。」
本当だ。
「大丈夫さ、僕もレイナス姉さんに憧れて首都騎士団を目指してる。あぁあ〜レイナス姉さん強くて格好いいな、僕の憧れなんだ。」
「そんないやらしい顔で人の姉さんのことを語るな!」
そんなこと、俺は当然わかっている。両親がいなくなってから、姉さん一人が俺を育ててきた。姉であり、親であり、それに俺とヒューズの剣術の師である姉さん、俺は憧れないわけがないだろ。
「いいよ、わかった。行けばいいだろう。まったく、先からうるさいなお前は。」
「それこそ僕の相棒だ!…あれ?リオ、動きがおかしいよ?」
痛いからだ。クソ…まだ痺れが残っている…
ヒューズがうるさくてたまらないから、適当に三年生のクエストを受けてさっさと終わらせようと思いながら、三年の掲示板の前に歩いてきた。
三年生の先輩たちはすぐに俺たちを気付いて、こそこそ何を言っている。
「見て、あれは二年生の解禁者じゃない?」
「そこまで強そうに見えないな。本当に解禁者なのか?」
「あの黒い髪の子は可愛い、わたくしのタイプだわ〜」
「確かに!黒い髪と黒い瞳、細い体、女装したら、絶対に可愛い!」
「ね〜」
(ね〜じゃねぇよ!女装しないし!)
こころの中に突っ込みした。
「でも、あの子の動きなんか変だよ?足も震えてるし…まさか、隣の子とあんなことを!受けなの?受けだよね?」
(あんなことはなんのことだ?変な想像をするなよ!)
うちの学校の先輩はまともな奴いねぇかよ。
「いいや、首輪を付けて犬にする方が余程彼に似合うわ。踏められて喜ぶ彼の顔が、想像しただけで興奮するわ〜」
「おいそこ!勝手に何を想像してるんだ!無視したのに、ますますハードの方向に行ったよね!」
人がそんな目をあったばっかりなのに、言い放題だ。
しかし、この瞬間の俺、まだ本当の危機を気付いていない。
「でも、美少女に踏まれたら、本当に喜ぶではありませんか?」
「!!!!!!!!」
急に、俺の一番大事な部位から激痛を襲ってきた。
何を怖がっているよう、悲鳴を出し、必死にここから逃げたい。
(あんたが逃げたら俺は男になれなくなったじゃねぇ!?)
先の声…まさか…
「あなたの○○、大丈夫かしら?」