3:火災現場からの脱出とその被害
なるほど、何となく状況は掴めた。頭を抱えながら、考えを巡らせる。
前の私はこの世から消えたいと願った。そこにひょんなことから、私の記憶が入り込んだらしい。こんなおとぎ話みたいなことがあるんだねぇ。(←思わず遠い目)
そして今、今までの辛い思い出と前世の私の記憶は私の中でしっかり合わさり、1つの人格となった。
親がしょうもないと大変よね~。子供は親を選べないしさ。まあ、前世で病弱な子ども連れ回して、海外を渡り歩いてた私が言えないけどね。ははは。
でもね、前の私。最初からこうすれば良かったのよ。簡単にあの父親から逃げられる方法があるじゃない。
前の私の得意魔法は、私にとっても最高の魔法なんだから。
とりあえず、この火災現場から逃げ出したい!
さっきまでのシャーロットは死にたがってても、今のシャーロットは死にたくない!
ふと、床に散らばる魔石が目に入る。
「そっか、自分を強化すれば良いのよね」と、まだ使ってなかった予備の魔石をかき集め、自分を強化してみた。
試しに…えいっ バキッ
ベッド破壊←
よくあるゲームの無敵状態をまさか自分が味わえるとは…こんな感じなのね(笑)うん、今は戦ってる訳じゃないけど、なんだか負ける気がしないわね!
今の私はどんな攻撃も効かない無敵状態なので、バンバン扉にを叩き割り、倒れてくる障害物を叩き割り…安全地帯を目指して走り出した。
誰か衛兵が見つけてくれれば、シャーロットの新しい人生の始まりだと私は心を踊らせた。
◇◇◇
【弟視点】
一方で、あわただしく城内を駆け回る男の子かいた。
「姉様っ!姉様は?…衛兵!何をやっている?!姉様はおそらく父上の部屋だぞっ」
近衛兵に掴みかかる勢いで叫ぶのは、この国の第一王子ルイ・オブ・ローズグレイであった。
「それが…かなりの厳重魔法がかけられていまして…びくともしません。」
「何のための近衛兵だっ!!外からの様子は?魔法で追えるだろうっ?!」
まだ10歳の子どもであるはずだが、その顔色は子どもらしくないほど怒りに満ちていた。
「窓からの侵入も模索しましたが、かなり凝固な魔法がかけられていまして…中も火の海で様子を伺うことが叶いませんでした。」
そこで弟は、1つの考えに至った。
父上の部屋には、護身用の魔石が大量に置いてあったはず…
姉様はもしかして!!!
「…自ら部屋に魔石で強化魔法を?…私は間に合わ…なかっ…」
誰にも聞こえないような小さな声で、拳を握りしめながら、うつむいたその時。
「ルイ様!シャーロット様が発見されましたっ。」
「…っっ。すぐに向かう!案内しろっ」
右手で少し目元を擦りながら、ルイは走り出す。
ルイが本当の意味で言葉を失うのはこの後すぐであった。
◇◇◇
しばらく歩き、衛兵に連れられたのは城内の来場者用の休憩室であった。
すでに何人もの医療魔法使いが集まっていた。しかし、奥の方で一際騒ぎ立てている人物を見て、事態は深刻であることを確信した。
「父上、姉様の様態はっ?!」
医療魔法使い達の合間を縫って姉様のベッドの前に飛び出すと、ルイは言葉を失った。
姉様の美しかったあの顔は、頬から上が焼けただれ、見るに堪えないお姿であった。他にも背中や腕にも酷い火傷があるようだった。
「あね…さまっ」
ルイはそれ以上、言葉が出なかった。
「様態も何もっ!おいっ!!!魔法使いどもは何をしておるっ?!さっさと、我が愛しのシャーロットを治さぬかっ!」このままでは見るに堪えないではないかこの役立たずどもめっと王である父上は大声でわめき倒す。
すると、魔法使い達は口を揃えて「何度魔法をかけても治らないのです。」と言った。
「姉様の身体的には問題ないのですか?姉様が無事なら一先ず良しとしましょう。」こういう時こそ冷静にならねば、とルイは魔法使いを見る。
「はい。それが身体的には問題なさそうなのです。ただ、酷い火傷が治らないだけで…」
申し訳なさそうに語る魔法使い達を横目に、バンッと父上は立ち上がる。
「火傷が治らぬとは、話しにならぬ。必ず治すように。シャーロットには火傷が治るまで会わぬっ!」と部屋を後にした。
命よりも容姿とは、なんと薄情な父親かーーー
まあ今に始まったことではないな、とルイの心は急激に冷めていった。
しばらくして、このままでは埒が明かぬとルイは医療魔法使い達を下がらせた。自分は目が覚めるまで姉様の側にと、ベッド横の自分では足が少し届かないくらいの大人用の椅子によいしょと腰かける。
こんな大規模な火災で、軽傷者はポツポツいるものの、重症者が姉様だけという衛兵の報告書にいささか疑問が残った。
城の混乱と姉様の負傷。被害はあまりにも大きかった。
「早く、元気になってください姉様」ルイはシャーロットの手を握ってただ静かに見つめるだけだった。
すみません。主人公魔法使えること隠してたのに、使えるみたいに書いてたので修正しました。