2:今世の自分の現状
現在13歳、今世の私は追い込まれていた。
この世界はローズグレイを含め六つの大国があり、母はエレノア・ラナ・ジェイドというジェイド国の姫であった。
我が父、アーノルド・オブ・ローズグレイはあろうことか、母欲しさに戦争を起こし、戦利品として母を手に入れた。
その執着は凄まじく、実の子どもでも母にはなかなか会うことが叶わなかった。
そこから父は味をしめたように、欲しいものがあれば武力で奪い始めた。おかげで隣国からは戦好きの国として注視されている。
シャーロットが10歳のある日、母が護衛の隙をつき、城の塀から飛び降り自殺をした。高位の医療魔法使いによって、あらゆる魔法を試したが、行きを吹き返すことはなかった。
葬儀では魔法で傷は消えており、シルバーの髪も艶やかで、ただただ寝ているだけのようだった。そして、その顔はやっと父から逃げ出せてほっとしているような顔をしていたのが印象的だった。
父は荒れ狂ったが…すぐに立ち直った。
生前の母への執愛の矛先が私へと向いたのだ。
シャーロットは母に似ていた。
父に似ているところといえば、プラチナブロンドの髪ぐらいだろう。
父の溺愛は凄まじく、次第にどこにいくにもシャーロットを連れていくようになる。執務でも戦争でも寝るときでも…
隣国とのパーティーで私の婚約者の話しになろうものなら、大人でも子どもでも刃を向けた。
父が「頭の良い女は嫌いだ。少し馬鹿くらいが可愛い」と言われれば、シャーロットは物凄い勢いで勉強をした。嫌われるのに必死だった。
シャーロットは父という檻の中で生きていた。
そんな中でも、弟との時間はシャーロットが唯一安心できる時間だった。3つ下の美しい美少年、ルイ・オブ・ローズグレイ。
サラサラと流れるプラチナブロンドの髪に母譲りの翡翠の瞳。
ちなみに私も弟と同じ髪色、同じ瞳だ。
シャーロットも弟を可愛がり、弟も姉を慕った。大きな声では言えないが、弟も今の戦いばかりの統治では今後が危ういと認識をしていた。
いずれこの子が王になれば、私は解放されるのだとそれがシャーロットの希望であった。
ーーー火災が起きたあの日。
シャーロットは執務室で父が側近と話している話をうっかり聞いてしまったのだ。
「シャーロットは将来、オレの妃にする」と。
実の娘だ。頭は正気か?!と思うが、あの父親のことだ。本気だろう。
私は絶望した。母と同じく死んでしまいたかった。
そんな時に、凄まじい稲光を放った一筋の雷が城を直撃し、火事が起きた。
家臣が城の修復や消火、居合わせた貴族が逃げ惑う中、「ああ、神様は私の味方をしてくださってるんだわ」とシャーロットは喜びで体が震えた。
しかし、このままでは、騎士達が助けに来てしまう。シャーロットは強化魔法が使えなかった。
そのため父の部屋にある護身用の魔石をかき集めて、魔石を使って部屋に強化魔法をかけまくった。幸い火事が広まっている部屋と父の部屋は近い。消火は不可能だと確信した。
これで、部屋へ侵入されることはないと安心し、火がこの部屋を覆い、我が身が焼かれるのを祈りながら静かに待った。
前世を思い出したのは、そんな時だった。