1:前世の記憶を思い出す
精一杯頑張ります!
これから宜しくお願いします!
燃え盛る炎の中、私は思い出した。
元大女優にして、監督業、プロデューサー、脚本家など裏方も極めた"大黒咲子"としての人生を…。
前世の私はシングルマザーで身体の弱い娘「瑠美」を育てながら、女優業をこなしていた。
世界的女優になるんだと、病弱な娘を世界各国に連れ回し……今となってはひどい話だと思う。映画もバンバン出て、忙しい毎日。そんな時に、娘の様態は急変、15歳の若さでこの世を去った。あっという間だった。私は45歳の時だった。鮮やかに見えていたエンタメの世界は突然色が抜け落ちたようにモノクロに見えた。
葬儀も終わり、一区切りついたところで、ロバート・ピットという有名な映画監督に残念だったねと声をかけられた。
「生前、娘さんとは病院で一緒になったよ。賢く、君のことが大好きだった。かなり売り込まれたよ。娘さんの話を聞いて、あの作品に君を抜擢したんだ。」君にはこれからも期待しているよ、と去る彼を見ながら、私は気づいた。
今まで実力だと思っていたあの配役は娘が売り込んだものだったのだと。涙が止まらなかった。
そこからの私は娘が私にやってくれたように、自分が出るのではなく監督業、プロデューサー、脚本家など裏方の仕事もやり始めた。裏方の才能はあったようだ。私が手掛けた作品は数々の賞にノミネートされた。娘の死を忘れるためにただ、がむしゃらだっただけだった。そんな私は激務の末、58歳で人生の幕を閉じた。
………
…
やっと娘に会える!そう思っていたのに。
目を開けるとそこは…冒頭に戻るが、火災現場の真っ只中だった。
あーーー。記憶が回ってガンガンをする。火で熱いけどそれどころじゃない。
今世の私の記憶と前世の記憶が混じりあって気持ち悪い。目がぐるぐる回る。
私は誰か?部屋の鏡を触りながら自分の顔を見る。
私はシャーロット・オブ・ローズグレイ。この国の第一王女であった。
短いですがここで切ります。