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第3話(僕と彼女の異世界捕獲)

 何かフワフワとした心地よい揺れと、身体を包む柔らかさと暖かさ。何ともこのまま微睡(まどろ)みたい気持ちでいっぱいになる。半分覚醒した頭でポヨポヨと現状を整理してみる。異世界転生して、モルモットになって、(ほむら)ちゃんと会って、町に行こうと歩き出して、ダッシュして、気絶した。


 あ、これは気絶したままだと(ほむら)ちゃんが心配するヤツだ。僕は頭を振って眠たげな感覚を飛ばして意識を覚醒させると、フワフワとした揺れが収まり、可愛い声が僕に語りかけてくる。


「モルさん?」

 僕は目を開くと足元は柔らかい肌色に、背中は心地よい柔らかな重みに挟まれていた。

「モ?モル?モルル??(え?あれ?コレは??)」

「良かったぁ。気付いたんですね」

 (ほむら)ちゃんのちょっとグズッて鼻に掛かる声が僕の背中の上から聞こえてくる。上を向こうにも首が回らないし、柔らかな何かで押しつぶされていて動かせない。


 クイックイッと上を向こうと、首を上に上げる動作をする。


「あ、あんっ!ダメですよぉ、モルさん……」

 僕は脇の下に手を入れられて、足がプランプランしたまま持ち上げられる。そのまま(ほむら)ちゃんの顔の前まで持ち上げられて、ちょっと(とが)める様な目で見られる。


「モルさんのエッチ……」

 僕は意図せずに胸を突き上げてしまっていたらしい。(ほむら)ちゃんは気絶した僕を両手で優しく胸の下に抱えて運んでくれていたようだ。

 そんな(ほむら)ちゃんの顔を見ると、目の下が赤く腫れていて、うっすらと頬に涙の跡が見て取れる。


「モルル。モルルルモルルゥッルモル(ごめん。心配かけちゃったね)」

「え?!あ!コレは違うのっ!!」

 僕を持っている為に両手が塞がっていた(ほむら)ちゃんは肩で目を拭う。まぁその動きをされると僕はグリュングリュンと宙を舞うのだけれども。


「モ、モルモモル!(め、目が回る!!)」

「あっ!ごめんなさいっ!!」

 今度は(ほむら)ちゃんが勢い良くペコペコと頭を下げる。その反動で腕が上下に揺られて、僕の身体は上下にシェイクされる。


「モ、モルモル……(も、もうダメ……)」

 僕は再度意識を手放すのだった。


-☆-☆-☆-☆-☆-☆-☆-☆-☆-☆-


「あー。またやっちゃったぁ」

 私は軽い自己嫌悪に陥る。昔から慌てると身振り手振りで何とか説明しようとしてオーバーリアクションしちゃう癖がある。普段だったら大丈夫なんだろうけど、モルさんを両手で持ったまましちゃったら、それは気絶する位に振り回しちゃうよね。


 私は草原の所々に露出している岩の中から、なるべく平らになっている所を選んで腰をかける。ちょうど良い高さの岩だったので、太ももが地面と平行になったので、私はスカートが()れないように伸ばすと、その上にモルさんを横たえる。


 気絶しているみたいだけど、目を閉じて、鼻がスピースピー言いながら呼吸しているのが可愛い。私は首元から背中、お尻にかけて毛を整えるように丁寧に撫でる。ふわふわな毛と柔らかい身体は撫でてるだけでこっちも気持ちよくなってくる。アニマルセラピーってやつかもしれない。たまに指を毛の間に入れて()くようにして撫でると、モルさんは無意識でキュイキュイ鳴いてしまうようだ。その鳴き声も可愛くて、胸が締め付けられるように愛しくなってしまう。


 日はまだ高い。だけど人の気配はないし、町の影も見えない。地図もないし、どんな危険があるかもわからない。草原で所々地面が露出しているから、底なし沼みたいな所に落ちる危険性はなさそうで、安定して進む事が出来ているのは不幸中の幸いといった所かな。


「あーぁ。町はどっちだろう」

 空を見上げながら誰に聞くわけでもなく呟く。空にはワシだかトンビだかわからないけど、鳥が気持ちよさそうに飛んでいて、キュィィィィィッ!!と甲高い鳴き声を上げながら旋回していた。

 そして、そのまま鳥を見ていると、少しずつ旋回半径が小さくなってきて、やがて獲物を見つけたのか、一直線に地上に向かって降りてくる。そう、()()()()


「え?あ、あの?えぇぇぇぇっ!!」

 私は素っ頓狂な声を上げて、ワタワタと慌ててしまう。鳥の影はどんどん大きくなって、まだ結構離れているのに影の大きさは人間並み。え?何この鳥、すごい大きいんだけど!!

 パニックになっている私にどんどん鳥の影は近付いてくる。兎に角、モルさんの安全を確保しないと!!


 えっと、手に持ってると戦えないし!落としたりするとダメだし!ポケット……あーっ!この服は着物がベースなんでポケットなんてなかったっ!一応袖には物入れられるけど!えっと、えっと!!あ、ココなら安全かも?!


 私のところまで到着した時の鳥の大きさは、羽を広げると5mにもなる大きさだった。物凄い勢いで滑空し、ワチャワチャしている私をその鋭い鉤爪のついた足でヒョイっと持ち上げると、そのまま大空へと羽ばたいていく。


「え?あの?その?私食べても美味しくないよ?!」

 私は慌ててアピールするが、そんなのを聞いてもらえるわけもなく連れ去られてしまう。


 どんどん高度が上がり、草原の全貌が明らかになる。私は捕まってしまって餌になってしまうかもしれないという恐怖を感じながらも、眼下に広がる雄大な景色に見入ってしまう。

 草原は広大だった。TVでみたオーストラリアとかの大平原みたいで、大きな巨石や雄大な河、森や林が点在していて、自然が台地をキャンバスとして描いた、全く人の手が入れられていない雄大な風景が広がっていた。

 ちなみに草原の近くに町なんてありませんでした。神様も酷い転生をさせたものですね。私を掴んだ大きな鳥は羽ばたきながら、険しい山へと向かっていくので、恐らくあそこに巣があるのだろう。


 そんな事を考えていると、転生してかなり大きくなった私の胸にある谷間がムズムズしてくる。私はその原因が落ちないように脇を締めて胸を寄せて谷間でギュッと挟みこみながら、両腕を交差して優しく胸の谷間を包み込む。すると私が咄嗟に胸の谷間にしまったソレが身体を反転して顔を覗かせると絶叫を上げる。


「モ、モッルモモルルルモルルモルル!ッモモルルモルーーーーーーーッッ!!(や、やっと満足に息ができる!って何だこれーーーーーーーっっ!!)」


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