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目標を仕留めるのに必要なのは1発の銃弾とたっぷりの爆薬

……………………


 ──目標を仕留めるのに必要なのは1発の銃弾とたっぷりの爆薬



 我々が奴隷解放から暗殺に抵抗運動レジスンタンスの行動をシフトさせてから、初めての暗殺任務が実行されることになった。


 暗殺というと夜中にひっそりと目標を始末する印象があろうが、別に白昼堂々と公衆の面前で対象を殺害してもそれは暗殺と呼ばれるのだ。暗殺という単語の持っている印象から来る誤解だが、そういう暗殺というものもある。


 そして、今回行われるのはその白昼堂々の暗殺であった。


「準備は?」


「できています」


 今回、その暗殺任務に動員されたのは自由エトルリア同盟の兵士とミラ国内軍の混成部隊。総勢2個小隊80名だ。


 これは自由エトルリア同盟とミラ国内軍の連携がどれほど上手くいくかを試すための作戦でもある。実戦経験豊富な自由エトルリア同盟と地の利があるミラ国内軍が上手く連携できれば、こちらの戦闘力は大幅に強化される。


 兵士たちは彼らの指導者たちよりも青妖精族(フロスト・エルフ)と打ち解けていた。兵士であり、これまで弾圧されていた下層民である彼らは、同じく兵士であり、これまで虐げられた種族である彼らが意見が合うことが多く、今ではぎこちないながらも打ち解けていた。


「目標はこの付近の炭鉱を所有する貴族だ。貴族は街にいる。ルーアン市だ。都市で生活しているのは貴族とそれに傅く傭兵、そしてごく一握りの下層民になる。我々はここで精霊帝国の貴族ブルーノ・フォン・デム・バッハ=ツェレウスキーを暗殺する」


 目標はこの東部山岳地帯において大規模な炭鉱をいくつも有する富豪ブルーノ・フォン・デム・バッハ=ツェレウスキーだ。


 彼はルーアン市の統治者も務め、炭鉱に送り込む奴隷をここで売買していた。ここで奴隷たちが売り買いされ、炭鉱へと連れて行かれるか、別の鉱山に送られるのだ。


 彼の悪行は分かっている。だが、俺はそれに関心を持たない。


 奴隷売買の実績ならば日本情報軍もこなしているのだ。軍閥に渡した資金洗浄マネー・ロンダリングされた米ドルで、軍閥が奴隷や子供兵を買うのを見ているのだから。見ていただけで何もしなかったのだから。


 奴隷は金銭でやり取りされ、道具として扱われる。肉のある機械。それは強化外骨格エグゾの人工筋肉のように、荷物を黙々と運び続ける“ドンキー”のように、肉のある機械として扱われる。そこに自由も尊厳もない。


 軍閥は奴隷を使ってレアメタル・レアアースを採掘し、先進国にいくつかの合法化の手続きを受けて輸出する。そして、彼らの手元にさらに奴隷を雇うだけの金が入り込んでくるというわけである。まさに負の連鎖。


 だが、誰かがそれを止めようとしても無力だった。


 国連は中央アジアの内戦について何度も決議を発し、軍閥を非難したが、軍閥を止めるような軍事力を有していなかった。中国も、ロシアも、アメリカも、自分たちの支持する軍閥のために手を回し、決議は穴だらけのざるであった。


 NGOも活躍はしていた。彼らは子供兵を社会復帰させるためのプログラムを組み、さらには奴隷たちを軍閥の支配から解放するプログラムも立てた。しかし、その軍閥から子供たちを解放しようという試みも、奴隷を解放しようという試みも、いずれも失敗した。


 理由は簡単。NGOには軍閥に意見を述べられるだけの立場がなかったのだ。NGOの現地オフィスは襲撃されて、皆殺しにされた。彼らは自分たちを支えてくれる、そして守ってくれる軍事力もなしに理想だけを掲げて中央アジアに入ったために大勢が死んだ。


 もっとも、上手くやったNGOもいる。彼らは民間軍事企業(PMC)を雇い、PMCの護衛と軍事力を背景に軍閥に子供兵の解放と奴隷の解放を迫った。


 今日日のPMCにはアジアの戦争後の軍縮で早期退役を迫られた退役軍人たちが大勢おり、実戦経験豊富な彼らは即戦力となった。ドローンや攻撃ヘリの運用から、人質救出作戦まで、あらゆる軍事作戦をPMCは行える。


 最終的には悪化し続ける中央アジアの情勢を鑑みて、国連が複数のPMCに業務を委託し、彼らが中央アジアの混乱から少しでも人々を助けてくれることを祈った。


 だが、そう簡単に事は進まない。


 PMCが正規軍に嫌われるのはその統率力のなさと名誉の欠如だ。彼らは自動小銃で武装したビジネスマンであり、自分たちの利益になることならばなんだってするが、利益にならなければ何もしない。


 そして、法で処罰されることがないのをいいことに、もうひとつの軍閥が現れたかのように、民衆を殺しまわっていた。渋滞に嵌った装甲ハンヴィーが周囲の車列に向けて機関銃を浴びせかける光景はネット上にアップロードされ、何十万回と再生された。そして、それを雇っていたNGOや国連が国際世論の場で叩かれる始末になっている。


 結局、誰にも奴隷は救えず。


 俺は青妖精族の奴隷がどうなろうが知ったことではないが、精霊帝国に打撃を与えることには関心がある。貴族が死ねば東部における精霊帝国の統治は揺らぎ、精霊帝国はまた一歩崩壊への道を辿ることになる。


「作戦は?」


「まずは爆薬を大量に積んだ馬車を城門に突っ込ませる。東城門だ。それを炸裂させ、衛兵たちの注意が東城門に向かった隙に城壁を越えて侵入。そして目標を始末する」


 たっぷりの爆薬。10階建てのビルを崩壊させされるだけの爆薬。


 それを無人の馬車に積んで、東城門に突入させる。


 大混乱が起きるだろう。全ての衛兵たちの注意は間違いなく、東城門に向けられる。その隙に我々はロープで城壁を越え、都市内に侵入する。


「ブルーノはこの土地の統治者であり、混乱を前にして姿を見せるだろう。我々は城壁からそこを狙撃して仕留める」


 貴族を殺す直接的な手段は狙撃。


 もっと確実な手段をとっても良かった。至近距離から銃弾の雨を浴びせかければ確実に死んでいただろう。その代わりこちらの戦力にも打撃が生じる恐れあった。


 今の段階では兵士を使い捨てにするのは避けておきたい。もっと彼らが任務に集中し、犠牲をやむを得ないという状況に至ってから、その手の攻撃は始めたい。


 今は彼らに成功体験を与えることが先決だ。彼らが成功体験を得たならば、今後はちょっとばかり無理な作戦にも付き合ってくれるだろう。


 そういうことで今回は犠牲が少ないが、不確実な狙撃という手段を使う。


「各分隊に選抜射手の訓練を受けた兵士がいるかと思うが、彼らの中でもっとも優れた狙撃手に今回の仕事は任せたい」


 俺はそう告げて兵士たちを見渡す。


「それでしたら俺が」


 兵士の中のひとりが声を上げた。


 自由エトルリア同盟の兵士だ。鍛え抜かれた体にドラグノフ狙撃銃を手にしている。


「距離400メートルから600メートルの狙撃になるだろう。自信は?」


「あります」


 その若い兵士は俺の問いに戸惑うことなくそう返した。


「では、君に任せよう」


 これまでこの兵士がどれだけの戦果を挙げてきたのかはある程度知っている。これまでいくつかの作戦に参加し、そこで貴族を狙撃するなどの戦果を彼は挙げてきた。信頼のおける兵士であることは分かっている。


 ちゃんと今回は使える人間を連れてきている。誰が立候補しても大丈夫なように。後は兵士に殺しの意欲がありさえすればいいのだ。


「作戦開始時刻は1500(ヒトゴマルマル)。その時刻に馬車を城門に突っ込ませる。それから1個分隊が城壁に上り、残りの部隊は脱出支援に当たる。大規模な戦闘にならないことが一番だが、そうなることに備えないわけにはいかない」


 肝心なのは部隊を無傷で脱出させること。


 ここにいる兵士の誰もが青妖精族の隠れ里の存在について知っている。我々はそこを拠点にし、これまで戦闘を繰り広げてきたのだから。


 となると、下手に負傷者を出して、それが隊列から脱落し、精霊帝国の捕虜になるようなことがあっては困るのだ。そうすれば青妖精族の隠れ里は発見され、我々は重要な拠点を失うことになってしまう。


 そういう観点からして部隊の無事な脱出は必要不可欠なことだった。


 兵士が捕虜になるまいと自決してくれることに期待することや、他の兵士が味方の兵士を射殺するということに期待するわけにはいかない。間違いなくここにいる兵士たちは自決などできないし、まして味方を殺すこともできまい。


 そうなるにはもっと追い詰められて、危機的になるか、そうすることが必要だと徹底的に理解するか、頭にナノマシンを叩き込んで人間性を失くすかだ。


「それでは諸君。我々に勝利を」


「我々に勝利を!」


……………………


……………………


 今回は夜中の襲撃ではなく、白昼の襲撃だ。


 時間帯はこの東部において、攻撃後離脱し、森の中に隠れる頃には日が落ちる時間帯である。ここは山林からかなり離れており、我々はかなり用心しながらルーアン市に近づいた。馬車の中のRDX混合爆薬はしっかりと樽の中に隠し、暗殺の実行と部隊の離脱を支援する部隊は道なき道を進んで、ルーアン市に近づいた。


 そして、作戦開始時刻である1500(ヒトゴマルマル)にルーアン市に到着。


「爆破班。準備は?」


『できています。既に検問を通過。これより市内に爆弾を突っ込ませます』


 俺がインカムに向けて尋ねるのに、爆弾を満載した馬車を操る4名の1個班からそう返事が返ってきた。彼らはペネロペが準備した偽装した身分を利用して、ルーアン市付近の検問を通過し、馬車を城門に突っ込ませたら、即座に離脱することになっている。


 そして、混乱の最中に我々は城壁をよじ登って狙撃位置につく。


「ロープの準備を」


「了解」


 我々は城壁に張り付き、索発射銃を準備する。


 それから15秒後。城壁が揺れた。


『こちら爆破班。馬車は予定通り爆発。凄い爆発です。何もかも吹き飛んでる!』


 それはそうだ。今回使用した爆薬は鉄筋コンクリートで建造された10階建てのビルを崩壊させられるだけの量の爆薬を使用しているのだ。城壁ぐらいは簡単に吹き飛ばし、周辺の建物にも致命的なダメージを与えられるだろう。


「爆破班。離脱に問題はないか?」


『問題ありません。このまま合流地点に向かいます』


 爆破班が衛兵に追われることが懸念材料だったが、それがクリアできたということは、第一関門を抜けたことになる。


「では、諸君。始めよう」


「了解」


 我々は索発射銃を城壁の上部に向けて、引き金を引く。


 鍵爪がしっかりと城壁に食らいついたのを確認するとまずは俺が城壁を登っていく。こういうときに強化外骨格エグゾがあると便利なのだが、残念なことに今回の任務にその手の装備は持ってきていない。


 というのも、強化外骨格も生きた生物の筋肉を動力源にしている代物だからだ。一定の栄養素を供給してやらねば、それは使えなくなってしまう。人工筋肉は干からび、弾力を失い、本来の機能を発揮できなくなる。


 また、他の工業製品がそうであるように、人工筋肉は定期的なメンテナンスを必要としている。定期的に必要な栄養源を供給し、人工筋肉を生かしてやらねばならないのだ。


 そう考えると魂の消費から考えて、それは効率的ではない。これまで使用した強化外骨格は自滅モードにして破棄してきているのだから。自滅モードというのは敵による鹵獲を防ぐための措置で、人工筋肉内の必須の酵素の供給を遮断し、人工筋肉の細胞を死滅させるためのものである。そのまま放っておけば、相手が遺伝子情報を探らない限りは、機密保持ができるというものだ。


 そんな使い捨ての装備のわりに魂の価格は高く、おいそれと使えるような装備ではなかった。ここが地球であるならばそういうことを気にせずに常に日本情報軍のドレスコードを揃えることが可能なのだが。


 そんなことを頭の片隅で考えながら、俺は城壁を登り切った。


 高さ6メートル程度。


 ここからは東城門で起きた爆発の様子がよく見える。城門は粉々に吹き飛び、炸裂した爆薬が黒煙を吹き上げている。衛兵たちはそちらに注意が向かっているようで、その反対側から登ってきた俺に気づく様子はない。


 俺は3本のロープをしっかりと城壁に固定すると、下にいる部隊に合図した。


 ロープを伝って、1個分隊10名の戦力がよじ登ってくる。俺は周囲にG28Eマークスマン・ライフルを向けて、警戒に当たる。ひとり、ひとりと城壁の上部に到達し、俺に続いて周囲への警戒態勢に入っていく。


「全員上りました」


「よろしい。では、行こうか」


 この爆発騒ぎが起きれば街を統治する貴族ブルーノ・フォン・デム・バッハ=ツェレウスキーが動くだろうというのは予想であった。絶対に動くという保証はない。だが、街の責任者として何かしらの行動を起こすことは確実だ。


 俺たちは城壁の上を駆け抜け、爆破現場の見渡せる位置まで移動する。


 ブルーノを暗殺できなければ、この都市の衛兵の指揮官を暗殺する予定だ。これだけの騒ぎを起こしたのだから、何かしらの行動を起こさなければもったいない。


 やがて爆破現場が完全に見えてきた。地面に穿たれたクレーターに、飛び散った肉片が補正された視野に映される。


 同時に我々の目標も見つけることができた。


 下層民とは明らかに異なる豪華な衣装に身を包み、マントを翻し、杖を握った人間が衛兵たちに命令を叫んでいる。流石にまだ何を告げているのかは聞き取れないが、明らかに苛立った様子で衛兵を捕まえ、口を大きく開いている。


「見えたかい?」


「見えました。ここから狙撃を?」


「いや。もう少しばかり近づく」


 ドラグノフ狙撃銃の有効射程は800メートルだと言われている。ドラグノフ狙撃銃は狙撃銃と名がついているものの、射程としては中距離だ。西側で言うマークスマン・ライフルの類だと言っていいだろう。


 最近の狙撃手たちは効率化された訓練課程と頼りになる観測手スポッターを得て、距離3000メートルの狙撃を成功させるまでに成長している。カルロス・ハスコックの伝説から70年余りが経過し、狙撃手たちはさらに進歩した。


 効率的なVR訓練。優れた狙撃銃と弾薬。同じく専門の訓練を受けた観測手。狙撃手たちは戦場で欠かせない存在となっていた。事実、俺も第101特別情報大隊に配属される前に上官の強い勧めで狙撃手養成コースを受講している。


 だが、その講座もでも散々繰り返し教わったことだが、狙撃手が重視すべきは如何に遠距離の目標を撃ち抜くかではなく、いかに確実に目標を仕留めるかだ。


 確かに3000メートル級の狙撃は実現できる世界になった。だが、そんな長距離の狙撃は確実に目標を撃ち抜けるかと言われればそうではない。3000メートルより2000メートルの狙撃が、2000メートルより1000メートルの狙撃が、1000メートルより500メートルの狙撃が、相手を確実に仕留められる。


 つまり、狙撃手に必要な才能のひとつは如何に目標に近づけるかにある。


 ギリースーツに身を覆い、環境適応迷彩を使用し、敵に発見されることを避けて、目標に近づき、辛抱強く待って狙撃を行うのが狙撃手の仕事だ。遠距離射撃だけが狙撃手に求められる才能ではないのだ。


 そういう点からして、今回も目標に可能な限り接近することが求められた。選抜射手は確かに簡易ながら狙撃の訓練を受けているものの、やはり距離が離れ、かつ観測手の支援がない状況では、距離は可能な限り詰めた方がいい。


 幸いにして敵の注意は東城門の爆破現場に釘付けだ。このまま接近することは不可能ではないだろう。可能な限り接近し、目標を確実に仕留める。


 距離800メートル。距離700メートル。距離600メートル。距離500メートル。


「そろそろ限界か」


 ここから先は警戒態勢が固まっている。迂闊に近づいて敵に気づかれ、目標に逃げられては本末転倒だ。ここで仕掛けなければ。


「選抜射手、撃ち方準備」


「了解」


 俺が告げるのに分隊についている選抜射手が城壁の壁を利用して目標に狙いを定める。その間、他の兵士たちは周辺の警戒に当たる。


 俺もG28Eマークスマン・ライフルを構え、選抜射手が撃ち漏らしたという場合に備えて、目標に狙いを定める。


 光学照準器の向こう側にいる貴族はやはり衛兵たちに向けて何かの指示を下している。その声は聞き取れないが、対応を急げとでも言っているのだろう。


 爆破班が無事に離脱できているといいのだが。


「選抜射手、撃ち方始め」


 そして、俺の合図と同時に選抜射手が引き金を引いた。


 血飛沫が舞い上がる。ドラグノフ狙撃銃の7.62x54ミリR弾が貫いたのは貴族の胸だった。選抜射手たちには無理にヘッドショットを狙わず、安定して命中が見込める胴体を狙うように告げていたが、彼は正確に教えを守ったようだ。


 貴族は血を吐き出して倒れ、衛兵が混乱した様子を見せる。


 少なくとも相手は対狙撃手訓練を受けていない。目の前で撃ち殺された貴族を見ても、相手はただただ動揺しているだけである。


「撤退開始だ。これ以上の騒ぎは必要ない」


「了解」


 我々は敵に発見される前に離脱地点に向かう。


 離脱地点は侵入地点よりやや近く設定してある。爆破による混乱と狙撃による混乱があれば、衛兵たちはすぐには活動しないだろうというある種の希望的観測からだった。


 離脱地点には友軍が待機している。我々は友軍が地上で待つ場所にロープを下ろし、ファストロープ降下で地上に降下する。この手の作戦行動も実戦に慣れている自由エトルリア同盟の兵士たちならば余裕をもって可能だ。


「貴族は?」


「始末した。離脱だ」


 ミラ国内軍の兵士が尋ねるのに、俺は短くそう告げて返す。


「撤収、撤収」


 インカム越しに指示が下され、兵士たちが撤収に移る。


「クソ。騎兵がいるぞ」


 我々が城壁を離れて30分程度の地点で爆破された東城門の方から騎兵集団が現れるのが見えた。こちらは騎乗していなければ、強化外骨格も纏っておらず、追いかけっこをすれば間違いなく追い付かれるだろう。


「後方に警戒しつつ、撤収を継続。可能な限り戦闘は避ける」


 今回は機動力を重視して予備弾薬はあまり持ってきていない。真正面から敵と撃ち合うと弾切れという悪夢が待っている。


 だが、索敵に出された騎兵を相手にすることぐらいはできるだろう。恐らく敵は索敵に出した騎兵の報告を待って、本隊を送り込むはずだ。ならば、騎兵に発見されることを避けるか、あるいは騎兵を殲滅してしまうかだ。


 俺は後方に注意を向けながら、撤収を続けさせる。


 そこで騎兵のひとりが声を上げたのが見えた。


「敵が気づいた。撃ち方始め」


 こちらの位置を報告されるわけにはいかない。ここで死んでもらうことにしよう。


「撃ち方始め!」


「撃て、撃て」


 後方を警戒していたミラ国内軍の部隊が一斉に発砲する。


 AKM自動小銃が火を噴き、PKM汎用機関銃が敵をなぎ倒す。


 俺も逃げそうになっている敵を狙って7.62x51ミリNATO弾を叩き込む。騎兵が落馬し、そのまま馬だけが逃げ去っていく。馬は自分の厩舎に帰っても、我々のことを報告したりはしない。放っておいていい。


「敵騎兵、全滅」


 40名あまりの騎兵は撃ちだされた鉛玉に薙ぎ払われて全滅している。文字通りの全滅だ。ひとりとして生き残ってはいない。


「撤収を続けよう。今の銃声で敵が気づかないとも限らない」


 ミラ国内軍と自由エトルリア同盟の連携は上手くいった。


 兵士たちには兵士たちの結束があるのだろう。戦友という絆が。



 日本情報軍情報保安部の密告者の影に怯え、戦友が殺されても怒りも、悲しみも覚えない我々日本情報軍の軍人たちにはないものを、彼らは持っているのだ。



……………………

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