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7話 転生完了

 「ピーーーーーーピーーーーーーピーーーーーーピーーーーーーピーーーーーーピーー......」


 ある森の地下施設の部屋から機械音が鳴り響き、静寂な空間の中で機械音だけが繰り返し鳴り響いていた。長い年月鳴り続けていた機械音が止まり別の音が始まった。


 「――――転生システム第三フェイズ終了まで60分......転生システム第三フェイズ終了まで60分......転生システム第三フェイズ終了まで59分......」

 新しい音は繰り返し鳴り響き、新しい命のカウントダウンが始まった。


*************************************


 「ふぅーーふぅーーふぅーーふぅーーふぅーーふぅーー」

 ロキは軽く深呼吸を繰り返しながら目の前の魔物の動きを注視していた。目の前の魔物は地球にいた猪を大きくした大猪であり、最初の対魔物訓練で何度も轢かれ苦渋を飲んだ相手である。


 大猪が動き出しロキに向かって突進してきた。ロキはその動きを予測し大きく横で飛ぶ。ギリギリで突進を避けると牙で攻撃や向きを変えて突進をして敗北をしていた。そのため大きく回避する。目線は大猪を捉えたまま中止する。


 「ふぅーーふぅーーふぅーーふぅーー。......ここだ!」

 

 大猪が突進で前進したので後ろががら空きになる。それを確認して行動に出る。自分に気合を入れる。大猪の後ろ姿を目標に動く、両足に力を入れ右足から前に出すそのまま駆ける。大猪の後ろ姿が見えるが突然目の前に大猪の尻が見える。そうこいつは突進だけではなくバックステップによる攻撃もしてくる。これも何度、尻が俺の顔に突っ込んできたことか。


 大猪のバックステップの動きも予測して大きく横に避ける。大猪の横腹に向かって気合を入れた蹴りを繰り出す。一撃入れたら即退避する。大猪はプライドが高いのか直ぐに怒り出す。この大猪もそうだが剣熊も一撃入れたら怒り出してな。短気は損気だよ。


 怒りで動きが単調になった大猪の攻撃を避け、その隙に一撃を入れる。いわば蝶のように舞い蜂のように刺す作戦だ。だが、この訓練は俺の敗北が決まっている。だって武器が与えられないのだ素手の状態だ防具だってない、今着ているのはスーツまたは背広という地球の社会人に必須だった戦闘服だよ。

 この世界もとい魔物相手に皆無だ。魔物相手に名刺交換でもするか交渉決裂でオーク相手だと無慈悲な一撃のこん棒がくるわ。こん棒の攻撃をスーツがダメージを和らいでくれるのか? 


 訓練でスーツがボロボロになっても元に戻すんだよスーツにね。だから聞いたんだよ親愛なる上官のエイラ少佐に。

 

 「スーツ以外はないんですか? 鋼の鎧とか魔物皮でできた丈夫な皮鎧とか。武器はなんでないんですか、ずっと素手なんですか魔物相手に素手はおかしいですよね。エイラ少佐」


 「必要無し。防具に関して転生システムの中でいくら攻撃を受けてもダメージはないし死なない。武器に関しても魔物相手に素手での戦闘データが欲しいから必要ない。ロキ二等兵」


 親愛なる上官のエイラ少佐からありがたい説明を受けた。

 

 ふ・ざ・け・る・な!!。魔物相手に裸の状態で戦い素手や蹴りで攻撃を繰り返す。魔物の攻撃を受けてもダメージはない死なない。精神的ダメージはあるわ。


 それにこの転生システムの中ではいくら戦闘してもlevelは上がらないし魔法やスキルも覚えない。あくまでも知識としての経験と熟練だ。転生が完了した時に報われることを祈る。チートスキルをプリーズ。

 

 大猪相手に蝶のように舞い蜂のように刺す作戦は続けている。この大猪もそうだが色んな魔物を相手に訓練した、憎き剣熊も相手した何度、額の剣で串刺しになったことか。

 唯一善戦したのがゴブリンだ1対1なら負けはしなかった。次の訓練では2体になり、その次は5体になり、更に次は10体になり訓練をした。5体まではなんとか戦闘ができたが、10体は駄目だ周りを囲まれ横、後ろから攻撃を受け噛まれたりもした。


 この他の魔物にもオーガからはこん棒の一撃を入れられ、ハーピィからは風魔法の攻撃を受け足が切断され、ミノタウロスの斧に身体を切断され、ゾンビには囲まれリンチを受けたりと、でっかい蛇、大蛇には丸飲みにされ続けながら訓練していた。

 ひたすら回避して避ける避ける避ける避ける、一撃を入れる俺も負けず嫌いだから避けてばっかりじゃ駄目だから、隙をみて攻撃する。まぁ、結局死ぬんだけどね。そして元の場所に戻され訓練をする終わりのないエンドレス訓練だ。


 俺もこの対魔物訓練で色々と経験したけど、一番感慨深いのはドラゴン。竜、竜種さ他の種族とは桁が違うかな。訓練開始と同時にブレス攻撃や丸飲みが多かったよ。竜種の中で一番最弱なレッサードラゴンでも体長10メートルぐらいはあるから恐怖で身体が動かないけど訓練続けてなんとか尻尾に一撃入れてあとに尻尾攻撃で吹き飛ばれて終わるというパターンが多かった。


 そんなもので魔物相手は色んな種族との戦闘知識を手に入れた。この世界には人族もいる。そう対人族訓練もした。親愛なる上官エイラ少佐は本当にえげつない。


 初めての対人族訓練は黒髪で黒目で平たい顔した人族で言語は日本語を話す。そう日本人だ初めての訓練相手が元同族だった。


 強面で人目で堅気ではないですよねとわかる人や20代ぐらい優しそうな青年、腰が曲がった70代ぐらいのお年寄りで年齢がバラバラな男性達を相手に訓練をした。


 最初の頃は攻撃を躊躇したが何十回何百回と繰り返していたら慣れてきたよ。精神的ダメージは大きいがやらなければやられるしこの世界では生き残れないと覚悟を決めて訓練を続けている。それに表情がないまるで能面のような顔で感情がまったくない相手だからなんとかやれた。


 対人族訓練は日本人だけではなくエルフも相手した。やっぱり顔を美形で整っていた耳は横に長くスレンダーの体型だった。攻撃主体は魔法が多く風魔法での攻撃が協力だった。初めて見た魔法で感動していたら腕を切断されて敗北して死に戻りしたらエイラ少佐に注意された。訓練中にボーとするなと言われ戦闘データが録れないから直ぐに訓練を続けろと言われた。


 次の訓練相手はドワーフで背は低いが力が強くドワーフが持っていたハンマーで何回も吹き飛ばされた。何度も言うが俺は素手で紙装甲だ。ドワーフさんそのハンマー貸してくれ。ちなみにドワーフの魔法は火魔法が多く使っていた。火の玉をうまく避けきれないと化学繊維でできた安物スーツはよく燃える火だるまになり転がっているとハンマーの一撃でゲームオーバーの繰り返しだった。


 その次の訓練相手は獣人で顔はライオン、獅子顔だね、体型はがっしりしていて手の爪は鋭く両足もがっしりとしていた、お尻の上部分に尻尾が生えていた。身長が2メートル以上あり両足で立っていた。動きが鋭く早く何度も見失って殴る蹴るはのサンドバッグ状態でボコボコにされた。身体能力が違い過ぎる。ただ魔法は使ってこなかった。


 この他にも頭に触覚がある虫族や腕が4つ6つある人族と訓練したりと続け他に色んな種族の人族相手に訓練をしていた。訓練以外にも2857年前の戦闘の映像を見て勉強し訓練で試していたり一般常識を再度勉強したりと続けいた。転生システム中では時間的概念はなく睡眠も必要ないので無限のような時間を過ぎていった。


 転生システム第三フェイズ終了のカウントダウンが始まった。


 「ロキ二等兵。転生システム第三フェイズが後60分で終了する」

 エイラから転生システム第三フェイズ終了の言葉が返ってきた。


 「本当ですかエイラ少佐」

 「本当だ」

 転生システム終了の確認してこの中でな時間の概念がないから気になることがあるので確認をする。


 「エイラ少佐。転生システムの中では時間が分からなかったのですが外では何時間ぐらいたってるんでしょうか」

 「518456分の時間が経っている」

 エイラから教えて貰った時間を整理する。


 「518456分......え、えーーーーーーと。1時間60分で1日は1440分だから......わからん暗算が難しい。エイラ少佐、何カ月経っていますか?」

 「約2年」

 「えっ! 2年、2年ですか2カ月じゃなくて2年ですか、そんなに時間が経っているんですか」

 時間を年数に変えて確認をしたら少し動揺した。


 「ロキ二等兵まもなく転生システムを終了し新しい身体が誕生します。我々電子生命体の目的はナーガウロボロスを倒すことです。ですが、ロキ二等兵だけでは困難に近いでしょう。ですので私の兄弟である電子生命体を探し協力を伺いなさい。兄弟達も同じようにナーガウロボロスを倒す研究を続けているはずです。第一優先事項は電子生命体を探すことです」


 ロキは黙って説明を聞いていたが、内心では残念生命体で鬼上官から逃げ出すことを考えている。前に説明を聞いたときにエイラはこの施設の管理をしてると言っていた。確かこうも言っていたこの実験室以外は廃棄したと、そのことを含めて考えると実験室を出れば自由になれると推測する。考えるているとエイラの声が聞こえ来る。


 「聞いているかロキ二等兵」

 少し声を上げて応える。


 「はっ、はい。エイラ少佐」

 「先ほど説明した内容は覚えていますか。第一優先事項はなんですか」

 「はい。第一優先事項は他の電子生命体を探し協力を伺うことです」

 「よろしいロキ二等兵。ではまもなく転生システムが終了しますので円滑に移行するためこの中はスリープモードに入ります。私も移行しますのでスリープモードに入ります」

 「エイラ少佐。スリープモードとはなんでしょうか?」

 「情報の整理をします。スリープモード中はなにも行動ができませんのでスリープモード終了まで待機をしていなさい」

 「わかりました。エイラ少佐」

 ロキは心の中でガッツポーズをする。なんとなくスリープモードの意味は分かっていたがこれはチャンスだと思った。

 

 「スリープモード開始します......10......9......8......7......6......5......」

 いよいよ自由だ。2857年前だけどこの世界の常識は教わったからなんとかなるはずだ。戦闘訓練もやったんだうまくいくはずだと希望を持ちながら眠りにつく。


 「4......3......2......1......0」


*************************************


 「――――転生システム第三フェイズ終了しました......転生カプセルに酸素を供給します......転生者覚醒......転生システム全フェイズ終了します......お疲れ様でした」


 鼻で息を吸い口で息を吸い呼吸が始まり意識が少しずつ覚醒し始める。意識の覚醒が身体全体に広がり新しい誕生の息吹が始まる。


 「――――ここは」

 意識が覚醒したロキは目をキョロキョロと視線を動かす。


 「暗いな」

 周りを確認し自分の姿勢が仰向けになっているのを確認する。


 「さて俺の新しい身体はどうなってるんだ暗くってよく見えないが......とりあえず腕は二つあるな」

 暗くって見えないが手で触りながら確認をする。


 「まずはこの中からどうやって出るんだ。あまり時間はないはずだ急がないと行けない」

 エイラのスリープモードが終了するまでに脱出しないと行けない。

 

 「どこだ、どこにあるんだ......どこかにあるはずだ......あっ、有ったこれだ暗くって見えないけどこれを押せば開くはずだ」

 暗くって見えないが手でカプセルを開けるなにかを探していた。


 カプセルが開く音が聞こえる。


 「開いた」

 身体を起こしカプセルから出て立ち上がる。


 「まったく白い空間から今度は真っ暗か......少し目が暗さに慣れてきた。よし残念生命体がスリープモードから起きる前に脱出するぞ」

 ここから移動するため行動にでようとするが突然頭の中に聞こえてくる。


 ⦅ロキ二等兵。どこかにいこうとしている。私は待機を指示したはずだが⦆

 声が聞こえるエイラの声が意味が分からず頭を動かして探す。探すがなにを探しいいのかわからない。そうすると又エイラの声が聞こえてくる。


 ⦅ロキ二等兵。残念生命体とは誰だ⦆

 また聞こえる。どこから聞こえてくるのか探す。


 ⦅ロキ二等兵。どこを探しているんですか。そんな場所ではありませんよ......私は貴方の記録メモリーに移動してますよ⦆

 頭がハンマーで殴られような衝撃を受けた。動揺しながら確認をする。


 「えっえっ......い、いつからですか」

 ⦅いつからとは......まぁ、最初から移動する予定でした。貴方の頭の記録メモリーに移動ですよ。それで残念生命体とは一体誰ですか答えなさい⦆

 ロキは頭の整理が追いつかないどうしようと焦っている。


 「ざっ、残念生命体は自分のことですエイラ少佐」

 ⦅そうでしたか......残念生命体のロキ二等兵⦆

 「はい。残念生命体のロキ二等兵です」

 ⦅ロキ二等兵。その新しい身体は私の研究の成果なんですがね。それが残念生命体であると......⦆

 エイラの説明を聞いて更に動揺する。


 「えっ、はっ、ちっ、違います。この身体じゃなくエイラ少佐のことですーーーーーー。あ、あれ」

 ロキは動揺のしすぎでなにを言ってるのか理解していなかった、理解した時には全てが遅かった。

 

 ⦅ロキ二等兵。そうですか私が残念生命体であると......上官への侮辱。待機命令の命令無視。軍からの逃亡ですか軍法会議にすれば死刑が妥当ですかね。ですが私の大事な研究成果を失うわけにはいけません。今回は貸しにしときます。残念生命体のロキ二等兵......私はとても執念深いですので覚えておきなさい。返事が聞こえませんか⦆


 「はい。残念生命体のロキ二等兵です。エイラ少佐」


 前途多難の新しい人生? 人生かはわからないが新しい物語が始まる!?

 

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