2話 剣熊
※残酷な描写があります苦手な方はご注意下さい。
視線の先にいる獣は獲物を逃がさんとばかり咆哮上げ右前足の爪で捕まえている人間を刺したまま持ち上げて、天高く背中から胸にかけて串刺しにした。串刺しに刺された人間は助けを懇願し痛みを上げながら絶命した。
「痛い......誰...か......た...す...け......」
動かなくなった男性を見て呆然としながら固まり一瞬の静寂の中で叫び声が聞こえた。
「きゃあああああああ......」
「に......逃げろ、逃げるんだ」
「何だあの化け物はでかいぞ」
「く......熊なのか」
一斉に周りの人が四方八方に逃げ出した。それを見ていた獣は邪魔だとばかりに串刺しされた人間をゴミを捨てるかのうに無造作に投げ捨てた。
一目散に逃げた人間を逃がさんとばかり咆哮を上げ前足と後足に力を入れ突進してきた。100メートル程離れていた人間に追いつき額にある角で背中から串刺しにして頭を力強く上に上げ串刺しにした人間を投げ飛ばした。
投げ飛ばされた人間を呆然と見つめいた人間が近寄り叫んでいた。
「信くん......嫌よ。ねぇ......動いてよ。死んだら嫌だよ、いつもの冗談でしょう。いやぁぁぁぁぁ......」
女性は死んだ男性を抱きしめて泣いていた。
獣は両方の前足を上に上げて虫を踏み潰すように女性を死んだ男性と一緒に潰した。ぐちゃと嫌な音が聞こえ、それを見てその音を聞いた者は叫びながら逃げている。獣は体を上にあげて顔を動かし新しい獲物を物色しはじめ、次の獲物を決めたら歓喜の咆哮をあげて獲物に向かって突進していった。
獣の様子を見ていたら、その体系と関係ないとばかりの速さで遠くに逃げていた人に追いつき、額にある角が伸び人を串刺しにしていた。次々と人を襲っていた。
固まっている体を動かすために大きく深呼吸して息を吐く。心の動揺が少し和らいだので周りの人達に小さな声で話し掛ける。
「逃げましょう」
周りの人達が真っ青な顔をしながら頷く。宮川は襲われている人を見つめていて聞こえていない。声を掛け肩を揺らす。
「宮川さん、逃げますよ」
「斉藤さん、信一さんと美奈さんは新婚でとても仲が良くっていい夫婦で早く子供が欲しいと笑顔で話しをしていて、あの化け物は信一さんと美奈さんを殺して......一体何なんですか。こんな事って、うぅぅうぅぅぅ......ここは一体どこなんですか」
混乱している宮川の両肩を手で抑えて。
「今は、今はとにかく逃げましょう。あの化け物が気付かない内に行きましょう」
周りの人達と獣がいる逆の方向を走り出した。
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走る。走る森を走る。枝を引っ掛けても気にせず走る。顔や体のどこかに傷が出来、血がでても気にする様子もなくひたすら必死に走る。無言で走る。息が切れお腹がキュッと痛くても走る。あの化け物から一歩でも遠く、遠く願いながら走る。
あの化け物の咆哮が聞こえ泣き叫ぶ声や助けを呼ぶ声が聞こえるが、時間がたつと泣き叫ぶ声は聞こえなくなる。そして次の咆哮が聞こえたら走る。一歩でも遠く走る。
一緒に走っているのは、宮川と飯島、前川、村上、50歳ぐらいの女性と男性がいる。一番後ろを走っていた男性が声を上げる。
「あいつがあの化け物が来た。こっちに来た。次は私達だ!」
叫び声が聞こえ化け物を確認するため、足を止め息を切らしながら視線を動かした。その先に化け物、熊の姿をした額に剣のような角がある体長が4メートルか5メートルぐらいの時速40キロぐらいの速さで走っている化け物がいた。獲物を見つけた化け物は歓喜の咆哮を上げていた。その咆哮を聞いた村上が叫ぶんだ。
「ちくしょうなんでこっちに来るんだ。俺様はこんな所で死んで言い人間じゃない」
化け物に指を指しながら叫んだ。
村上を見ていた宮川と飯島が半狂乱になりながらしゃべりだした。
「村上さんあの化け物をぶっ飛ばせるんですよね」
「そうよ。戦いなさいよ」
聞いていた村上は怒鳴るように話しだした。
「馬鹿かお前らは俺は死にたくねぇんだよ。後ろのおっさんが囮になっている内に逃げるんだよ。馬鹿が!」
村上が全力で走り出した。化け物の追いかける足跡が聞こえてきて止めていた足を動かし走り出す。
宮川や前川、飯島も必死な顔で走り出す。一番後ろを走っている男性が必死に懇願する。
「待ってくれ。置いていかないでくれ。行かないでくれ。ぎゃっ......いた......い......死に......」
化け物に追いつかれて、突進され勢いよく吹き飛び、岩に激突してそのまま息絶えた。
先に走っていた村上に追いついた。村上がこっちを見て不敵に笑いながら話しだした。
「結局お前らも同じだ。死んだおっさんを置いていったじゃねえか」
みんな顔を下に向けた。
村上を睨んで話した。
「お前は黙れ。黙って走れ」
村上は睨んでいるが無言で走り出す。もう体力が限界なんだろ。息を切らしながら、はぁはぁと走る。
最後尾の女性の叫び声が聞こえた。視線を動かし確認すると化け物の額の角に女性が串刺しになっていた血を吐きながらかすれた声で助けを呼んでいた。化け物は女性を刺したまま追いかけてきた。
「はぁはぁ。早すぎるどんな足をしてるんだ。追いつかれた......ここまでなのか」
村上が叫ぶ。
「俺が俺様がこんな所で死んでたまるか!」
叫びながら俺に体当たりをしてきた、突然のことで肩から地面に倒れた。体が痛むが怒りのまま顔を上げ村上を睨みながら怒鳴る。
「村上! てめえ、ぶっ殺してやる!」
「俺は死なねえぇぇ......はははは......死ぬのはお前だ、俺のために死ね」
村上は後ろを振り向き走り出した。みんなの顔を見ると驚愕した表情をしている。後ろから力強い足跡が聞こえ、野生的な荒々しい声が聞こえる。
後ろを振り向き確認するが、右肩に大きな衝撃を受けて痛みで絶叫する。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ......痛い!」
右肩に化け物の角が刺さっていたが女性の死体が壁になって、化け物が急停止したその反動で肩から角が抜けた。
右肩から大量の血が出ている、左手で必死に抑えるが血は止まらない。頭がパニック状態で痛みと恐怖で一杯になっていた。小さく深呼吸をした。そうするとパニック状態が少しよっくなった感じがした。化け物は威嚇するように二本足で立ちあがった。
目の前にいる化け物を改めて確認した、熊のような姿で毛皮の色は真っ黒だ所々に人の血が付いていた。
大きさマンションの3階に届くかもしれない大きさだ、こんな熊は日本にはいないし他の国にもいない映画の世界に出てくる化け物だ。額の角を見ると女性の死体が串刺しになっている。化け物は邪魔だったのか顔を動かし死体を投げ捨てた。
角を見ると中世ヨーロッパの剣に似ている、色は白く骨のようにも見える。んっ、よく見ると右目に刀傷があった。右目は見えないかもしれない。
何故だが分からないが冷静に確認することができた、ブラック会社のおかげで鋼の精神力でも身に付いたのか?
「斉藤さん」
化け物を警戒しながら声が聞こえた方に視線を向ける、宮川と飯島、前川が悲痛な表情でいた。
「行くんだ。3人共行ってくれ。俺が囮になるから」
宮川が叫ぶ。
「一緒に逃げましょう」
「どっちみちこの肩の傷じゃ助からない。前川くん後は頼む。君達だけでも生きてくれ」
3人共頭を下げ礼をいいながら走り出した。
化け物が逃げている3人を見ているので、地面に落ちていた石を拾い化け物の顔に向かって投げた。鼻の柔らかい部分に当たり、怒りの表情で鋭い目線で睨み狩られるだけの獲物に反撃を受けたので怒りの咆哮を上げる。
今出来ることを考える。3人が生き残るには時間を多く稼ぐしかない、そのためには地面に落ちている木の棒で接近戦をやるか......無理だ怖すぎる。遠距離しかない石を拾って化け物に投げる。化け物が突進してきた左に転がるように回避する、化け物の右目は見えないはずだ、大きな木を壁にしながら爪や角の攻撃を避ける。やっぱり右目は見えないんだ。体力が続く限り体が動かなくなるまで時間を稼ぐ。どっちみち俺は死ぬんだな。
石を投げて嫌がらせをしてどのくらい時間が経ったのかわからない体感からすると30分以上は時間を稼いでいると思うけど右腕の時計を確認すると5分程だった。頑張ったと思うよ人生で一番頑張ったよ。自分を褒めてやりたい。
何だ化け物の様子が変だ、凄い集中してる感じがする。腹の底でマグマのように力を溜めて爆発させた力で今までと違う咆哮を上げた。咆哮の力で全身に衝撃と痛みを感じ数メートル吹き飛び転がる。痛みを感じながら化け物を確認すると目の前まで接近していて大きな口を開け鋭い牙で噛み殺そうと近づいて来た。咄嗟に右腕でガードするように前に腕を出した。腕に噛みつき皮膚と肉が裂き骨が砕ける音が聞こえた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ......痛い...痛い...やめろ」
化け物は右腕を牙でグリグリと噛み砕こうとしていた。
痛みで気が狂いそうになるが、左手で持っていた石を化け物の左目に刺した。
「グァァァァァァァァァ」
初めて痛みからの咆哮を上げた。右腕を噛んだまま暴れ勢いよく数メートル投げつけられた。立ち上がらうと腕に力を入れると右腕から血が噴き出した。何とか左手と両足の力で立ち上がり状況を確認するため顔を化け物に向けた。
化け物は痛みで吠えていたが、顔をこちらに向けて突進しようとしていた。目は見えないが鼻で獲物の血の匂いを感じ、耳でかすかな動きを捉えていた。
余りの威圧に後ずさりになり、後退しようと右足を後ろに下げた瞬間宙に浮く感じをした。茂みに隠れていた穴に落ちていった。最後に見た化け物は咆哮しながら突進をしてくる姿だった。
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「痛い」
右肩と右腕の痛みで起きた。気を失っていたようだ。
目を開けると真っ暗で何も見えない。
左手で地面を触るとブヨブヨした柔らかいものを感じるこれのおかげで死ななかったのか、真っ暗で何も見えないから確認ができない。
どこから落ちたのか上を見てもやっぱり真っ暗で何も見えない。少しでも光が見えれば安心したんだがその時小さな声で化け物の咆哮が聞こえてくる、不安になり周りを確認するが真っ暗で何も見えない。
「ここはどこなんだ。今日一日で滅茶苦茶なことばっかりだ」
肩を落としながら話す。
ここで立ち止まっても出血多量で死ぬんだから奥に行ってみようとする。左手で確認しながら歩き少し移動した所に壁だと思う場所に近づいた。
左手を使いながら壁際を30分程歩き視力が落ちた目でかすか奥の方に電気の光が見えた。また、壁際を歩き僅かに感じる光と何かが開く音が聞こえてきた、その音を頼りに歩いた。
「もう限界だ」
そう言って壁を背にゆっくりと腰を下ろした。僅かな視力しかない目で光を感じ、耳で機械が動く音を聞いていた。
「ウィィィィィ......ウィィィィィ......ウィィィィィ......」
「聞こえて来るこの音は何だろうな。まぁいいさ、好きにすればいい。血がたくさん流れすぎて疲れたよ......3人は無事に逃げられたかな......つまらない人生だった次があるんだったら、今よりいい人生歩みたいな......ねむいくて寒いな......もういいよな......」
「ウィィィィィ......ウィィィィィ......ウィィィィィ......。」
ゆっくりと瞼が落ち思考が低下していった。
《<完全適用>のレベルがあがりました》
は!
それが最後の思考となり人生の幕を閉じていった。