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その暗殺者、月夜を往く  作者: 混ぜるな危険
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街に入る方法

数時間歩くと街の外壁までたどり着いた。あたりはとっくに暗くなっている。


「さて・・着いたはいいがどうやって入ったもんか・・」


 今世界に存在する街のほとんどは、周りを高い外壁に囲まれている。

魔王が存在したころの名残だ。

魔物が存在しない今、壁が存在する意味は昔に比べほとんど無くなっている。


「まあ、俺みたいな人間にとっちゃ迷惑極まりないもんだがな・・」


 さらに、街は高い壁に囲まれているだけでは終わらない。

街の北と南にそれぞれ一か所ずつ出入り口となる関所のような場所がある。

街の人間が外に出る分には問題ない。住民なら初めから身分は証明されているし、旅商人のような人間なら『通行許可証』のような別途身分を証明できるものを所持しているからだ。

 だが、盗賊がそんなものを持っているはずがない。いや、正確にはあったかもしれないが、アジトから命からがら逃げてきたフェイトがそれを持っているわけがなかった。


 「となると・・・取れる選択肢は二つ」


一つ。どこか入れそうな()()を探す。

二つ。門番を殺して街に忍び込む。


「なるべくなら無関係な人間は殺したくないな・・」

「・・探してみるか」


 そうしてフェイトは外壁周りを模索し始めた。念のために『気配遮断』を使用しておく。


『気配遮断』:盗賊、および派生上級職で使用可能な技能。

       自身の気配を消し、他人から察知されにくくなる。

       技能Lvより高いLvの『気配察知』を持った相手には無効。

       ここでいう「気配」とは

       ・足音

       ・呼吸音

       ・体臭

       ・視線

       を指す。

       現時点でフェイトの『気配遮断』のLvは1である。

       使用回数などによってLvは上がる。

       

       なお、この世界において技能の最高Lvは10である。

  


(この街ができたのは記録では400年ほど前。壁ができたのは200年ほど前。)

(どこかに綻びくらい出来ていてもおかしくはないはずだ)




2時間ほど外周を回ると、壁の一部にひびが入った箇所を見つけた。


「あった・・」


ひびの大きさは縦50cmほど。壁の薄さは約30cm。


「・・さすがにこれを削りきるのは無理があるか?」


いくらナイフが刃こぼれしにくいといっても、形見のナイフをここまで酷使したくはない。

それに、短剣一本で石の壁50・30・30cmを削りきるなど時間がいくらあっても足りないだろう。


「仮に削り切ったとしても、入ったところを抑えられたら水の泡・・」


八方塞がりというやつだ。

隙間を探す、という選択が使えなかった以上できることはあと一つ。


「門番を・・殺す」




「んんんんーーっ・・・ったく、こんな夜中に街に出入りするやつなんかいねえだろ・・魔物が襲ってくることもないんだし、さっさとここにドーンっと門でも作ってくんねえかなぁ・・ねみい・・」


(いた・・あれが門番か)


申し訳程度の装備を身に着けた門番が関所の受付に座っている。

油断しきっていて警戒の色は一切見えない。

正直殺すのはとても楽そうだ。


(問題は、職業と技能が不明・・)

(剣技程度の技能しか持っていないなら問題はないが・・)

(仮に『気配察知』Lv2以上を持っていたら面倒だな・・)


 襲いかかるのは簡単だ。ただ、一撃で仕留められなかった場合が厄介なことになる。反撃を食らうくらいならまだいい。中に逃げ込まれて応援を呼ばれるのが最悪のパターンだ。

 そもそも『暗殺者』とは、戦闘になる前に敵を殺すのを得意とするジョブだ。実際の戦闘ステータスは決して高くない。『暗殺』から『戦闘』に引きずり込まれた時点で『暗殺者』の負けなのだ。

 

(『短剣』と『投擲』の技能・・この二つを持っていれば投げナイフによって急所を狙うことも可能か?)


『短剣』:短剣の扱いに精通した者が習得する技能。

     短剣を使う場合に、ステータスボーナスを得る。

     Lvが上がるほど得られるボーナスは大きくなる。

     現在フェイトの『短剣』Lvは4である


『投擲』:投擲武器を不自由なく、意思通りに操ることを可能とする常時発動型技能。

     武器を投げる場合に、命中率に高い補正が入る。

     ただし、物理的に難しい、不可能な武器を投げる場合は補正がかからない。

     この技能はLvによる補正値の上昇は無い。


 暗殺に必要なのは二つ。

一つは殺すための武器・技術。

二つは完ぺきなシチュエーションだ。


(周りには門番以外の気配はない。この角度では街の中から関所の様子が見えることは無いはずだ。)

(ならば後は・・)


殺すだけの事――


気配を消してベストポジションへ。

ナイフを構える。

的を視界に固定する。

イメージしろ。

自分が投げるナイフが奴の首元に深々と突き刺さる様を。

人を殺すのに躊躇はいらない。


構える。

投げる。

―――声も出せぬまま死んでゆけ。


 投げたナイフは一直線に狙った場所―――門番の首元へ飛んでいく。

黒いナイフは闇に紛れ、その存在に気付くころにはもう遅い。


「がっ・・!」


倒れる身体。うめき声。

そして訪れる静寂。


「やったか・・?」


気配を殺して関所に近づく。

そこには、喉元に深々とナイフが突き刺さった男の死体が転がっていた。


(ああ・・久しぶりだな・・自分の意志で人を殺したのは)


 ナイフを回収しながらそんなことを考えた。

 これが並の人間なら「人を殺した」という事実に押しつぶされ、まともな精神状態ではいられないだろう。

しかし、この男は元盗賊の『暗殺者』である。人を殺すことに責任は感じても、重圧を感じることは無かった。


 念のため、門番の死体を回収し、街から少し離れたところに捨ててくる。

見つけ辛い物陰に隠したため、今すぐに見つかることは無いはずだ。


「これで街に入れるな・・」


 そう呟くと、フェイトは一人街へ忍び込んでいった。


 気が付くと、『暗殺者』のLvは2に上がっていた。







戦闘(?)シーンってどうやって書くんですかね

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