魔王が滅びたその後の話
初投稿です
至らぬ点も多いです(確定)
この世界の住人は、二つに区別できる。
光り輝く表の世界で生きるものか。
―――暗く蠢く裏の世界に生きるものか。
3年ほど前、この世界、『ファルル』は魔王と呼ばれた存在に支配されていた。
そんな時現れた・・もとい召喚されたのは3人の『勇者』だった。彼らは魔王を倒すために異世界、というところから召喚されたらしい。彼らは順調に旅を進め、約1年半後、死闘の末魔王を滅ぼした。
人々は歓喜した。今までさんざん自分たちを苦しめていた魔王が滅びたのだ。魔物に襲われることは無くなり、厳しい税金の取り立てもなくなる。そんな生活がすぐにやってくると信じられていた。
だが、人々に平穏が訪れることは無かった。魔王を滅ぼした勇者たちは、政治を行い始めた。いや、この場合は独裁と呼ぶべきだろうか。確かに勇者は人々の期待に応え、魔王を滅ぼした。だがしかし、彼らは決して、善人ではなかったのだ。
今まで軍資金に充てられていた税金はお偉いさんの私腹を肥やすためだけに搾取され続け、襲う魔物がいなくなったと思ったら、今度は役人が魔物のようなものになってしまった。
人々は苦しみ、憎み、絶望した。
「勇者なんて呼ぶべきでは無かった」
そんな声が聞こえてくるほどに。
だが、声を上げても現状は変わらない。当たり前だ。魔王を滅ぼすことができずに困っていた人間が、その魔王を滅ぼしたバケモノに勝てるわけがないのだから。
それに、逆らおうものなら即処刑ときた。この世界は確実に腐敗していった。
一つつけ足しておくと、別に国民が飢えやらなにやらで死に至るほどの圧政が敷かれているわけではない。むしろ、まともな政治が行われているようにすら見える。職は皆にいきわたっているし、表立って不平不満が言われている様子もない。まあ、言っていたものは全員死んだと考えることも可能なわけだが。
そんなある日、一人の男が産まれた。だが、まともな家庭ではない。粗暴な男たち。漂う悪臭。そこらに転がった金銀財宝。
そう、そこは、盗賊団のアジトだった。
男は順調に成長していった。その過程で、盗み、殺し、その他技能を叩き込まれていった。
ああ、そうだ。一つ話すのを忘れていた。
この世界には、職業と技能と呼ばれるものが存在する。
まあ、大体は字面の通りだ。自身を鍛えるような行動をとれば経験値が手に入るし、それが貯まればレベルが上がる。レベルが上がればスキルポイント、SPが手に入るし、それを使えば技能レベルが上がる。ちなみに、成長方針は、自分が何をしたかによって変わってくる。例えばその男だったら、『盗賊』系統のジョブに成長していく。
話を戻そう。男が17になるころ、『盗賊』ジョブのレベルが最大になった。ジョブレベルが最大になると、上級職にクラスチェンジできるようになる。『盗賊』ジョブからの派生先は――
『ローグ』か『暗殺者』である。
男は迷わず『暗殺者』を選んだ。理由はただ一つ。
『このふざけた世界を終わらせてやる』
『暗殺者』となった男はひたすらに経験を積んだ。武器を磨き、技能を磨き、そして人を殺した。
――すべては勇者を殺すために