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ピーチネクター片手に桃園の誓いを 第一話 ver2.0


『さすがですわ、お兄様』


 僕が正義を為したら、そんなふうに褒めてくれる妹が傍にいて欲しかった。


 現実は悲しいもので僕は一人っ子という事があって、正しい事をしても誰も褒めてはくれなかった。


 だから、そんな現実から逃れるようにお兄様を称える妹が出てくるアニメや小説を見て、


『ああ、現実にこんな妹がいれば良かったのに』


 なんて深くため息を吐いたりしたものだ。


 そんな物語ばかり見ていると、余計に妹が欲しくなって、ついつい両親にお願いをしてしまっていた。


『僕、妹が欲しい!』


『絶対に妹が欲しい!』


 そうお願いしたりした。


 そのお願いのついでに、僕は持ち前の能力を使って、両親の願望まで書き換えちゃったりして、子作りだけではなくて、養子縁組で妹をもらうようにも仕向けていた。


 そんな事で能力を使った夜は、きちんと両親が子作りに励んでくれるんだけど、なかなかできなかったりした。


 両親は養子縁組についてもきちんと考えていてくれていて、良い子がいないか見つけようとしていたようだ。


 けれども、そこまで努力していたのに、妹はなかなかできなかった。


 現実って難しい。


 あ、言い忘れていたね。


 何を隠そう、僕は超能力者なんだ。


 超能力者故の苦労と言うべきなのか、超能力を使って世間のためになることをしても、誰も褒めてくれないんだ。


 だって、超能力なんて存在している事をほとんどの人が信じてくれないから、超能力を行使している場面を見ても人々は『奇跡が起きている!』とか『超常現象の一種かな?』程度にしか思ってくれない。


 だから、僕は超能力を使う度に虚しい気持ちになって、人のために超能力を使わなくなったんだ。


 つまりは、そういう事なんだ。


 僕が超能力を使用して人助けだとかをした時に、僕を褒めてくれる妹が欲しかったんだ。


『さすがですわ、お兄様!』


 そんなふうに褒められたら、僕は人助けのために何度だって超能力を喜んで使っちゃう。


 だから、僕は妹が欲しかった。


 僕を褒めちぎってくれる理想の妹が。


 けどね……。


 現実は早々上手くいくものじゃないって、僕は最近思い知ったんだ。


 最近、何故か僕に弟ができました。


 しかも、義理の弟だ。


 そう……妹じゃなくて、弟だ。


 何故こうなった?


 しかもだよ。


 戦国時代とか、三国志の時代とかに豪傑として出て来そうな巨漢の、どう見ても三十代としか思えない顎髭を生やしたおっさんみたいな弟だよ?


 見た目はそんなだけど、僕と同い年の弟だよ。


 しかもだ、しかも。


『さすだが、兄じゃ!』


 ことある毎にそんな風に僕を褒めてくれる。


 悪い気がしないだけど、僕が欲していた台詞とは違う。


 どうして妹ができなくて、


『流石ですわ、お兄様』


 と褒めてくれる妹ができなかったのか。


 とある作品の台詞を借りて、僕はこう言ってみたい。


 責任者はどこか。


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