ー朝焼けの章 3- わいはデウスの教えでいうところの天の国には興味がないんやで?
はあああ。砂と土が詰まった5キログラムもある俵を背負って、5キロメートルも朝から走るのは、ほんまきついんやで?信長さまに仕えてから早4年が経とうとしている今でも、この訓練だけは慣れないもんやで?
「ひいひいひい。これはしんどいんやで?彦助くん。わいの代わりにこの俵を持ってほしいんやで?」
「えっほえっほ。それは構わないけど、そんなズルをしたら、河尻さまに金砕棒で尻をしばかれるのは、四さんになっちまうぜ?」
「ふうふうふう。四殿は、そろそろ、一発、金砕棒で尻をしばかれるべき、ですね」
ひでよしくんは、なんかしらへんけど、わいに対して、当たりがきついんやで?なんやろな?わいの身体から溢れだす魅力と才能が、ひでよしくんの嫉妬心を刺激するんかいな?
「ふうふうふう。昨晩は風花さんとはっするしすぎて、腰が痛いんだぶひい。四さん、僕の分の俵を持ってほしいんだぶひい」
「ちっ。田中はそのまま、腰が骨折しちまえばいいのにな?俺だって、可愛い彼女や嫁さんがほしいよおおお。なんで、ひでよしに、おっと、ひでよし殿にまで彼女が居るのに、俺にはいないんだよおおお!」
彦助くんは本気で言っているんかいな?あんたには、あんたを想ってくれてる女性がふたりも居るのにな?こいつ、わざと気付かないフリでもしているんかいな?
「ん?なんだよ、みんな。なんで、俺を睨みつけてるわけなんだ?」
「彦助殿は馬鹿だなあとみんな、想って、いますよ?」
「僕もひでよし殿に同意なんだぶひい。いい加減、そのにぶちんなところをどうにかするべきだぶひい」
「オウ、ノウ。弥助は彼氏は飽きました。そろそろ彼女がほしいのデス。弥助もそろそろ、子供がほしい気持ちで一杯デス」
弥助くんは男にはモテモテなのに、彼女ができない不思議な生物なんやで?
「おっぱいおっぱい、おお、おっぱいなんて叫んでる彦助殿は放っておいて、弥助殿に彼女が出来ないのは不思議、ですよね?なんでで、しょうか?」
「わいもそこが不思議なんやで?ひでよしくん。弥助くんは、顔の彫りが深くて、味わい深い顔やっちゅうのに、なんで、世の中の女性は、弥助くんを放っておくんでっかいな?」
「それには実は理由があるんだぶひい。こいつ、男とのイチャイチャに慣れ過ぎて、女性相手でもお尻を掘ろうとするからだぶひい。こいつ、女性をナンパする時の第一声が【あなたはお尻を掘られるのは好きデスカ?デウスは言われたのデス。右隣りの男の尻を掘ったら、左隣りの女の尻を掘りナサイと!】。こいつ、心底、狂っているぶひい」
「それはあかんのやで?女性は前の穴に入れられるのは大好きやけど、お尻に入れられるのは大嫌いなんやで?穴がふたつついているからと言って、後ろの穴は、諦めたほうが良いんやで!」
「オウ、ノウ!デウスは言われたのデス。男は前の穴にのみ生きるにアラズ。お尻の穴にも興味を持てとデス!」
「デウスの教えはよく知らへんけど、絶対にそんなこと言ってないと想うんやで?弥助くんの信じているデウスの教えは本当に正しいんかいな?」
「弥助の言葉はデウスの言葉そのものなのデスヨ?弥助を信じないと、天の国へは辿りつけないんデスヨ?それでも、四さんはいいんデスカ?」
「わいみたいな強欲モノがどうやって天の国になんか行けますかいな。いいとこ、畜生道まで堕ちるやで?わいが転生したら、犬か猫か、はたまた、ネズミのどっちかやで?」
「オウ。そもそも、デウスの教えに入信すれば、その転生とやらにもとらわれなくなるのデスガ?あなたたちが信じる神仏は転生を繰り返して、生の苦しみを味わい続けるんデスヨネ?しかも、よくわからない悟りを開かぬ限りは、生死を繰り返すと言われているのデス」
「せやな?弥助くんの言う通りやで?でも、生きるってのは確かに苦しいや悲しいことが多いんや。でもな?弥助くん、よおおおく聞いてくれやで?わいは何度、生まれ変わっても、千歳ちゃんと何度も出会うつもりなんやで?」
「そんなことをしなくても、千歳さんと一緒に天の国へと昇りまセンカ?それで解決する話なのデスヨ?」
「わいは強欲なんや。千歳ちゃんの身体の隅々まで味わいつくしたいんや。そして、子供を作って、一緒に老いて、死ぬんや。それを未来永劫、続けていきたいんや。それが、犬や猫やましてやネズミとなってもや。千歳ちゃんとはすでに【約束】しているんやで?」
「【約束】デスカ。弥助はデウスと【約束】をしているのデス。弥助は天の国へと昇り、デウスの右の玉座に座るとデス」
「わいはそもそもとして、天の国に昇れるような徳なんて、積んでないんやで?もう一度、言わせてもらうんやで?わいは千歳ちゃんと共に堕ちると【約束】しているんやで?わいは千歳ちゃんに言われているんや。わいが犬に転生するなら、千歳ちゃんも同じく犬に転生するってな?そんなことを言ってくれる千歳ちゃんと未来永劫、生の苦しみや悲しみ、そして楽しみを共有するって決めているんやで?」




