ー朝焼けの章 2- さて、訓練に行く前に朝メシを食べるんやで?
朝一から、わいは長屋の前のウンコを処分したあと、長屋の中に戻るんやで?
「千歳ちゃん、長屋の前はキレイにしてきたんやで?」
「ありがとうっしー。四さま、朝ごはんが出来たから食べてほしいっしー」
わいはちゃぶ台の前によっこらせっくごほんごほんと言いながら座るんやで?
「今日は朝から豪勢やで?めざし3匹に稗と粟のご飯、それに味噌汁と漬物でっかいな」
「本当なら、もう一品、追加したいところっしーけど、うちの長屋の前にウンコが置かれているから、お豆腐売りが、近寄らないんだっしー」
「まあ、あんな山盛りのウンコがあったら、そりゃ、お豆腐売りくんも近寄るわけないもんなあ?ちょっと、むかついたから、【神の家】の尾張支部をぶっつぶしてこようかいな?」
「ポッポー。さっき、証拠を集めないとダメだと自分で言っていたくせに何を言い出しているのだポッポー」
鳩のまるちゃんがあきれ顔でそう、わいに言うんやで?てか、鳩のあきれ顔ってなんやろな?わい、何を頭のおかしいことを言っているんや?
「なあ、千歳ちゃん。わい、鳩のまるちゃんがあきれ顔をしているって想ってもうたんやけど、千歳ちゃんは、まるちゃんの顔色を判別できるんでっか?」
「うーーーん。怒っている時と、喜んでいる時の顔くらいなら判別はつくっしーね。でも、あきれ顔まではわからないっしーよ?」
「せやな。じゃあ、わいの場合も気のせいやな。あかんわ。わい、ニンゲンさまとして、間違った方向に突き進んでいる気がするんやで?」
「そんなに気にしなくて良いっしー。もしかしたら、四さまは鳩のまるちゃんの顔色がわかるくらいに仲良しだって可能性は捨てきれないんだっしー」
「ポッポー。やはり、粟や稗は美味しいんだポッポー」
「そうでッチュウね。できれば、揚げも食べたいでッチュウけど、お豆腐売りさんがこの長屋に近寄らないのは痛いでッチュウ」
「こっしろーくん?あんたさん、ほんまに揚げが好きやな?いくら、大豆食品やからって、食べ過ぎたら、健康に悪いんやで?」
「揚げがダメなら天かすを食べたいでッチュウ。ご主人さま、今日の訓練が終わったら、帰りに買ってきてほしいでッチュウ」
ねずみのこっしろーくんは贅沢なもんやで?わいらと暮らすようになってから、栄養不足に陥る心配がなくなったみたいで、毛並みもきれいになったでッチュウ!って喜んでたもんなあ?
「千歳ちゃん。こっしろーくんを丸々と太らせてな?そしたら、わいらが食料難になった時に、こっしろーくんで晩餐会やで?」
「やめてほしいでッチュウ!ぼくは汚いねずみでッチュウ!ばい菌だらけでッチュウ!」
「四さま、こっしろーくんをいじめるのはやめるっしー。小動物はストレスに弱いと聞くっしー。こっしろーくんの胃に穴が開くっしーよ?」
「ギギギ!胃が痛いでッチュウ!ご主人さまにいじめられて、胃がキリキリするでッチュウ!これは、天かすを食べないと治らないでッチュウ!」
「ほんま、口だけはえらい回る、こっしろーくんやで?わかったんやで?訓練が終わったら、天かすを買ってくるさかい、千歳ちゃんの身をしっかり守ってくれやで?」
「わかってるでッチュウ!このこっしろーに任せるでッチュウ!千歳さまに悪さをしようとする奴らは、ぼくがちぎっては投げ、ちぎっては投げ、海に叩きこんでやるでッチュウ!」
頼もしい限りやで?わいは、こっしろーくんが逆にちぎって投げられる姿しか想像できへんけどな?
「ほな。朝メシも食べ終えたことやさかい、そろそろ、訓練に行ってくるんやで?千歳ちゃん。気をつけてくれやで?鳩のまるちゃんとねずみのこっしろーくんをあてにするのはやめときや?」
「わかってるっしー。河童くんと長寿さまくんに護衛を頼むっしー。まるちゃんとこっしろーくんは、長屋に近づく怪しい輩が居たら教えてほしいっしー」
「ポッポー。任されたのだポッポー。本来なら、四の頭の上に乗る仕事があるポッポーけど、この非常事態の中、そんなことも言ってられないんだポッポー」
鳩のまるちゃんがわいの頭に乗っかったまま、訓練でもしようものなら、首がごきっといきそうなんやなあ。最近、まるちゃんの体重が増えてきたせいもあるんやけど、信長さまの指示する兵士たちへの訓練もいっそう厳しくなってきてるんや。
もしかしたら、近いうちに大きな戦でも起こすつもりなんかな?信長さまは。わい、その戦で生きて帰ってこれるんやろか?それが心配なんやで?
わいがそう想っていると、ガラッと長屋の戸が開く音が聞こえたと同時に、河童くんと長寿さまくんが長屋の中に入ってくるんやで?
「ケケッ。川で朝ごはんを済ませてきたんだケケッ。ついでにお土産でドジョウを捕まえてきたんだケケッ!」
「河童くん、ありがとうっしー!これで、今夜はドジョウ飯を食べれるっしー!四さま、夕飯を楽しみにしていてほしいっしー!」




