ー朝焼けの章 1- 朝からわいの長屋の前にウンコを置いていくのはやめてほしいんやで?
ほんま誰やねん!わいの住んでいる長屋の前にウンコをしていくのは!これ、犬とか猫のちゃうで!?ニンゲンさまのウンコやで!
「四さま。また、長屋の前にウンコを置いていかれたっしー?かれこれ、これで2週間っしーよ?」
千歳ちゃんもほとほと、この嫌がらせにはムカついているのか、腹いせに河童くんを蹴り飛ばしているんやで?
「ケケッ!だから、オイラの甲羅を蹴っ飛ばすのはやめるのだケケッ!いくら、朝からカチンコチンのオイラの甲羅でも、今にヒビが入りそうなのだケケッ!」
「蹴られるのが嫌なら、ちゃんと犯人を視つけるっしー。ただ飯喰らいはうちにはいらないっしーよ?」
「そ、そんなこと言われても、臭いで判別しようにも、ひとり分ならともかく、三人分ものニンゲンのウンコなど、誰が誰なのか判別できなくなるのだケケッ」
河童くんも難儀なこっちゃやで。しっかし、毎朝、これほどのうんこの量を長屋の前に置かれるのも、千歳ちゃんじゃなくてもムカつくんやで?
「しゃーないんやで?わい、このウンコをかたしてくるから、千歳ちゃんは朝メシの準備をお願いするんやで?」
わいは千歳ちゃんにそう言うと、ちりとりとホウキを使って、長屋の前に置かれたウンコを処理しだすんやで?
想えば、鳩のまるちゃんの声が聞こえたり、河童くんと長寿さまくんが、わいの命を狙ったり、はたまた、ねずみのこっしろーくんがぼくは悪いねずみでないでッチュウ!と頭のおかしいことを言い出してから、早2週間が過ぎてもうたんやで?
あの怪しい教祖さまが派遣した3人組とのいざこざで、わいは左手の小指を骨折したわけやけど、河童くんのヌルヌルの液体のおかげで、1週間も経たずに完治したんやで?
皆、心配かけてすまへんかったのやで?骨折から完治して、リハビリも上手いこと言って、今では前より、左手の小指が頑丈になった気分やで?
「ふう。ウンコは片付いたんやで?あとは水でも撒いておくんやで?しっかし、ほんま、どこのどいつなんや!猫や犬の糞なら、飼い主を視つけてボコボコにするだけで済ましてやるけど、こう毎朝、ニンゲンさまのウンコだと、ボッコボコのギッタンギッタンにしてやるんやけどなあ?」
まあ、大体、誰の差し金でこんなことになっているかは想像がついているんやけどな?間違いなく、教祖さま率いる【神の家】の奴らなんやろけどな?
でも、証拠を掴めていないんですわ。だから、とっちめてやろうにも、シラを切られたら、こっちのほうが、何を因縁つけているでしゅ?謝罪と賠償を要求するでしゅ!と言い返される可能性が大なんやで?
こちらとしては、動かぬ証拠を掴むまで、泣き寝入り状態というわけなんやで?
「ポッポー。四よ。何を難しい顔をしているんだポッポー?良ければ、拙者が話を聞くんだポッポー」
鳩のまるちゃんがわいのことを心配したのか、わいの頭にのっかって、ウンコをぷりぷりと垂れ流しているんやで?
「わいの頭の上でウンコをプリプリしている鳩を丸焼きにすべきか、鍋で茹でるか悩んでいるところやで?」
「ふむ。それは悩ましい話だポッポー。拙者が四の頭の上でウンコをするのには立派な理由があるんだポッポー。それゆえ、焼くのも煮るのも拒否させてもらうポッポー!」
あいつ、わいの頭から飛び立って、逃げ出しやがったんやで!まるちゃんは大空を自由に舞い上がり、くるっと一回転したあと、長屋の屋根の上に着地するんやで?
「ポッポー。拙者のことより、もっと、心配なことがあるんだ?ポッポー」
「けっ。まるちゃんにしては気が回るんやで?今すぐにでも【神の家】の尾張支部に乗り込んで、全員、ぶっ殺してやりたいんやけど、そないなことしたら、わいは縛り首確定なんやで?」
「ポッポー。ニンゲンの法はよくわからないポッポーけど、殺して食べてしまえば良いんじゃないのか?ポッポー」
「そりゃ、自然界のルールであって、ニンゲン界の法では、ニンゲンがニンゲンを食べれば、縛り首以上の重罪となるんやで?」
「そうなのかポッポー。うーーーむ。いっそ、あの尾張支部にでも火をつけてやればいいじゃないのかポッポー」
「火つけと殺人はおなじくらいに重い罪やで?なにか?まるちゃんはわいに死刑でも望んでいるんかいな?」
「そういうつもりはないんだポッポー。すまないんだポッポー。別に悪気があって助言しているわけではないんだポッポー」
まあ、鳩のまるちゃんは動物界に属しているから、ニンゲンの法を知らんのはしょうがありまへんなあ。
「殺して食べてもダメ。火で焼いてもダメポッポーか。これは困ったことだポッポー」
「ちなみに理由なくぶん殴るものダメやで?相手からぶん殴られたら、そいつが死ぬほどぶん殴るのはアリやけどな?」
「許す、許される基準がよくわからないんだポッポー。むむ?ひとつ良い案が想いついたんだポッポー。四が尾張支部の前で、アホづらで奴らを挑発して、殴られれば良いんじゃないのか?ポッポー」
「それは今まで言われた中では良い案かもしれへんなあ?しっかし、傍目からは挑発しているように想われないように挑発するという高等な技術を要求されることになりますなあ?」




