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ー旅立ちの章96- 今夜は鍋やで!河童くんから出汁をとるんやで?

「ケケッ。お風呂を用意すると言われて、鍋の中に入っているわけだが、もしかして、オイラから出汁を取るつもりか?ケケッ!」


「河童くんからは良い出汁が取れそうやしなあ?試しにやってみてるとこやで?」


 わいらは長屋に戻ってきた後、夕飯の準備に取り掛かったんやで?今日は鍋を楽しもうということで、河童くんから出汁を取ることになったんやで?


「本当なら、カラカラに乾いた河童を使うのが良いのだポッポー。河童の出汁は長寿の源と言われているのだポッポー」


 鳩のまるちゃんがそう助言してくれるんやで?ほなら、長寿さまも鍋に突っ込んだほうがええんかいな?


「フシュルルルー。ワシは鍋に入るつもりはないんだフシュルルルー」


 あらら。そりゃ残念やで?しゃーないわ。昆布出汁と河童出汁で我慢するやで?


「うーーーん。良い味が染み出ているでっしー。河童くん、そろそろ、鍋から出てほしいっしー」


「ケケッ。お役に立てて光栄だケケッ。ふう、良い風呂を楽しめたんだケケッ!」


 河童くんはそう言うと、鍋から出て、身体をぶるぶると振るわすんやで?もうちょっと離れたところでやってくれまへんかな?河童くんの身体から水しぶきが飛び散ってくるんやで?


「具は白菜とネギとシメジと、昨日の残った熊肉をつっこむんだぜ。味噌はどうするんだぜ?」


「あんまりくどくならない程度には味噌をつっこみましょか。たまにはあっさりとした鍋を楽しむんやで?」


 尾張おわりは赤味噌をたっぷり使った鍋が主流やけど、他の地方から来たひとには、こんなもん食えたもんじゃありまへんわ!ってくらいに味が濃いんやで?まあ、鍋を食べているのか、味噌を食べているのかわからんくなるくらいに、味噌を突っ込むもんやしな?


 ちなみに京の都では、みんな貧乏なんか、水炊きを楽しむようなんやで?哀れやで。味噌を作るための金もないんちゃいますの?


慶次けいじくんや、千歳ちとせちゃんは京の都の鍋は食べたことがあるんかいな?」


「ん?突然、何を言い出しているんだぜ?もちろん、俺様は尾張おわりから外に出たことがないから、京の都の鍋なんか喰ったことがないんだぜ?


「僕も尾張おわりから外に出たことがないんだっしー。でも、京の都は調味料も買えないほど貧乏だから、薄味だということは聞いたことがあるんだっしー」


「気位だけは高い奴らやさかいな?京の都は喰わねど高楊枝ってことわざがあるくらいやからな?味噌の代わりに気位を出汁に使っているみたいやな?」


「鍋が嫌味な味に染まりそうなんだぜ?さて、熊肉を土鍋に突っ込むんだぜ。そういや、春菊が無いんだが、よんたん、俺様がその辺からむしり取ってこようか?だぜ」


「わい、春菊はあまり好きじゃないんや。だから、わざとや。堪忍してくれやで?」


「そうなのかだぜ。意外と多いんだぜ。鍋に春菊を入れたがらないご家庭ってのは」


「不思議よねっしー。僕は春菊はへっちゃらなんだっしー。でも、よんさまが、春菊を好まないから、仕方なく、それに合わせているっしー」


「春菊は苦いんやで?わい、あの苦みは鍋にいらん気がするんや。だから、どうしても春菊が食べたいってやつがいない限りは、鍋には入れない主義なんやで?」


「そうなのかだぜ。俺様は平気なんだが、ここは諦めておくんだぜ。さて、熊肉もいい具合に煮込まれたから、次は野菜を入れていくんだぜ?」


 慶次けいじくんがそう言うと、白菜、ネギ、シメジを鍋に突っ込んでいくんやで?


「あああ!大変や!せっかくの鍋なのに、白滝が無いんやで!」


「あっ。白滝の存在を忘れていたっしー。どうするっしー?今から買ってきて、鍋に突っ込んでも白滝だけ、すぐに食べれないっしーよ?」


「しょうがありまへん。白滝は諦めるやで。代わりに何か鍋に入れれるもんがないんかなあ?」


 わいはそう言うと、長屋の中をきょろきょろと視るんやで?


「おっ。あそこにネズミがおるんやで?アレを今夜の鍋の隠し味にするんやで?」


「や、やめろでッチュウ!ぼくを視るんじゃないんでッチュウ!」


よんさま。こっしろーくんはばい菌の塊っしーよ?鍋の中に入れたら、鍋がけがれてしまうっしー」


「そうでッチュウ!ぼくはばい菌の塊でッチュウ!だから、鍋で煮込むのはやめてほしいでッチュウ!」


「こっしろーくんを丁寧に洗ってもダメなんかいな?残念やで?こっしろーくんが何味なのか、わからないんやで?」


「鍋にネズミを入れるなんて前代未聞なんだぜ。おっ?鍋がいい具合にぐつぐつ煮たってきたんだぜ。後は蓋をして10分ほど待つんだぜ」


 慶次けいじくんはそう言うと、土鍋の蓋をかぽっとはめるんやで?はあああ。鍋と蓋の間からほかほかと湯気が湧き立つんやで?


慶次けいじくん、すまへんなあ?わいの左手の小指が折れてるばかりに、慶次けいじくんばかり働かせてもうて」


「気にするなだぜ。それより、その小指はどれくらいで完治するんだぜ?」


「河童くんの言いを信じれば、河童くんのヌルヌルの液体を染み込ませた布を三日三晩、左手に巻き付けておけば、治るみたいやな?ほんま、河童くんのヌルヌルの液体はすごいんやで?ほんまなら、3か月は完治までかかりそうなもんなんやで?」

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