ー旅立ちの章93- わいは自分の特殊能力に関して、自信が無くなってきたんやで?
わいの特殊能力を慶次くんに解説したのは、もしかして失敗だったんかいなあ?
「わい、もしかして、知られてはいけない相手に、わいの特殊能力を知られてもうたんかなあ?」
「ああ、そこは気にする必要はないんだぜ?俺様が、四たんのその特殊能力を言いふらすわけがないんだぜ?」
「そうねっしー。もし、四さまがそんなことができると知れ渡れば、四さまの身が危険なんだっしー。慶次くん?くれぐれも、四さまの秘密を知らないひとに言っちゃダメっしーよ?」
「任せとけなんだぜ!俺様の口は貝のように硬いんだぜ!」
なんや?火であぶられたら、くぱあって、簡単に口を開けそうなのは?信用が置けないんやで?まあ、ええわ。慶次くんのことやさかい、口を割る前に、明日の朝には忘れていそうやから、ほっといてもええやろな。
「しっかし、困ったことやで。結局のところ、慶次くんのような達人には、わいの特殊能力はあてにはならないってことやで?」
「そんなことは無いんだぜ。初見の相手となれば、確実に四たんは、ずぶの素人に毛が生えた程度の腕前としか視れないんだぜ?例え、達人相手でも、最初の3手までなら、充分に役に立つ特殊能力なんだぜ?」
「なるほど。最初の3手までなら、達人相手でも充分使える特殊能力なんかいな。これは、わい、嬉しく想っても罰は当たらへんのやで?」
「慶次くん、四さま?最初の3手までしか四さまが有利でも、それじゃあ、結局のところ、四さまは達人には勝てないってことじゃないっしー?」
「千歳さん。達人ってのは、ど素人相手に1手目にまず本気で斬りかかるわけじゃないくらいは理解できるよな?まあ、どちらにしろ、殺すつもりの1手目には代わりないんだが」
慶次くんがそう言うと、その辺の長さ1メートル半の棒きれを手にして、わいと対峙するんやで?
「まあ、槍でも刀でもそうなんだが、大体、一手目は突くか、薙ぎ払うか、上段からの叩き伏せなんだぜ。で、これで、相手がどれほどの実力の持ち主か推し量るんだぜ」
慶次くんはそう言うと、棒きれをゆっくりとわいに突きだしてくるんやで?わいは、それをひょいっと左に移動して回避するわけなんやで?
「んで、今、四たんが俺から視て、右に移動したわけなんだが、ここで、四たんの回避の仕方を視て、大体、どれほどの力量かを判断して、とどめの二手目、三手目へと移行していくわけなんだぜ?」
慶次くんは、一旦、突いてきた棒きれを引っ込めて、わいと距離を取ってくるんやで?
「まあ、大体、達人ともなれば、四たんくらいは2手目で仕留められるとタカを括って、上段構えにして威圧するわけなんだぜ。そこで、四たんが引けば良し。それでも向かってくるなら、ズバッと袈裟斬りにでもするんじゃないか?だぜ」
「なるほどっしー。なまじ、四さまに腕の覚えがないからこそ、二手目、三手目まで、達人といえども、油断の塊なんだっしーね?」
「そういうことだぜ。だからこそ、この油断している隙をついて、2手目、3手目の合間に四たんが致命の一撃を叩きこめば、四たんの勝ちということになるんだぜ?」
「致命と行かずとも、相手の足や手を斬ってしまえば、わいが断然に有利になるわけやんな?ありがとうなんやで?慶次くん。おかげで、わいは自信を持てたんやで?」
「言っておくが、四たんの特殊能力は警戒されてないことが前提なんだぜ?達人にひとりでも勝てようものなら、四たんの名は少なくとも、尾張中には知れ渡ることになるんだぜ?そうなりゃ、他の奴らは油断はしてくれなくなるんだぜ?」
「なるほどやで。結局のところは、達人クラスとやりあっても、わいとしては特は無いってことかいな。しっかし、わいがもう少し、槍か刀の腕前があれば良かったもんなのになあ?」
「諦めるんだぜ。俺から視るに、四たんが鍛えたところで、素人よりは若干マシといった程度までしか腕は上がらないんだぜ。その特殊能力は生き延びることを前提に使ったほうが良いんだぜ?」
なるほどやで。確かに、戦うことよりも、相手の攻撃を回避し続けて、逃げ回るほうが、この特殊能力は役に立ちそうなんやで?でもな?
「わいには守らなならん女性がおるんや。もし、その女性の身に危険が及ぶというのであれば、わいは達人相手でも一歩も退くことはできないんやで?」
「さすが四さまっしー!僕は、そんな四さまに惚れこんでいるっしーーー!」
千歳ちゃんが、わいにガバッと覆いかぶさってくるんやで?千歳ちゃん、わいがこの命に換えても守りきったるさかいな?
「おお、おお。お熱いことだぜ。俺様も四たんみたいに、自分の命を賭してでも守りたい女性が欲しいもんだぜ?」