表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/124

ー旅立ちの章82- わいが教祖様のお薬を飲んでみるんやで?

「よっしゃ、わいの腹はきまったんやで?田吾作くん。教祖様の怪しいお薬をわけてもらうんやで?」


「ううう。おいらの大切なお薬なのにだぎゃ。包み紙の半分だけにしてほしいだぎゃ」


「そないケチなこと言わんといてや?あんたさん、与作くんをぶっ殺して、そのお薬を奪ったんやろ?文句を言うようやったら、また痛い目を視てもらうことになるんやで?」


 わいがニコニコ笑顔を作って、田吾作くんから快く教祖様のお薬とやらをひと包みもらったんやで?


「よっしゃ。わいを縄でぐるぐる巻きにしてくれやで?もし、わいが暴れ出しても、先に縄で縛っておいてくれたら、皆、安心やろ?」


「おう。わかったんだぜ。さて、縄は縄はと。あれ?縄が見つからないんだぜ?」


「ああ、そう言えば、罠を作るのに使ってしまったんやったな。しょうがありまへんなあ。わい、ちょっと、罠を解除しに行ってくるんやで?10分ほど待ってくれやで?」


 わいはそう言って、包み紙をふところのポケットにしまって、縄を取りにボロ小屋の外に出るんやで?いやあ、それにしても、わいの身体が血なまぐさくてたまらんのやで。自分の血もそうやけど、与作くん、喜兵衛くん、田吾作くんの返り血を散々に浴びたからさかいなあ?


 さって、そんなことより、罠を解除して縄を手に入れんとなあ。結局、使うことがなくて、無駄になったんやで。


「よいしょ、よいしょ。ふう。しっかり結びつけすぎたんやで。いっそ、懐剣でぶった切ってしまえばええんやろうけど、そないことしたら、縄が短くなってしまうさかいな。よっし、これでええやろ。網も回収してっと」


 ふう。手間がかかるんやで。ほな、ボロ小屋に戻りますかいな。


「ポッポー。よん。本当にその怪し気な薬を飲むんだポッポー?」


「ん?鳩のまるちゃん、急にしゃべりだしてどないしたんや?さっきまで延々、だんまりを決め込んでいたって言うのに。なんや?心配にでもなったのかいな?」


「ポッポー。何やら、不安を感じるんだポッポー。よんの身に危険が及ぶような気がしてならないんだポッポー」


「そない心配せんでもええんやで?田吾作くんたちを視た感じ、気分が昂揚しすぎて、気が狂うだけなんやで。それに、薬の効果はそない長く続くみたいやあらへんし。長くて30分から1時間程度やと想うんやで?」


「ポッポー。よく観察しているもんだポッポー。だが、ゆめゆめ油断しないことだポッポー」


 まるちゃんはそこまで言うと押し黙ったんやで?すまへんなあ?心配かけて。でも、この薬を千歳ちとせちゃんに飲ませるわけにもいかへんしなあ。わいが飲むのが一番、安全や。


 わいはボロ小屋に戻ってきて、慶次けいじくんと利家としいえくんに縄でぐるぐる巻きにされたんやで?もっと芸術的な縄の縛り方をしてほしいとこやったけど、そこは高望みが過ぎるってもんやで?


「よっし、じゃあ、よん。悪いけど、薬の実験台になってもらうッス。よんにもしものことがあれば、千歳ちとせちゃんは、俺が世話をするッス」


よんさま、無理をしちゃダメっしーよ?気分が悪くなったら、すぐに言うっしーよ?」


「わかっとるやで?わいは千歳ちとせちゃんを置いて、先に逝くつもりはないんやで?だから、安心してくれやで?ほな、利家としいえくん。わいの口の中に、その薬を突っ込んでくれやで!」


 わいの言いが終わると、利家としいえくんが、わいのあごを掴んで無理やり口を開かせるんやで?わい、なんかどきどきしてまうんやで?自由の利かない身で好き勝手されてもうたら、お尻が濡れてしまうんやで?


 ごくっごくっごっきゅん。


よん。どうっすか?気分は悪くないッスか?」


よんたん。暴れたいとかそんなことは無いんだぜ?」


「うーーーん。なんか、気分が上がってくるとか、そないなことないんやけどなあ?なんや?この薬、効き目がないんちゃいますか?」


 わいがそう言った瞬間。ドクンッ!ドクンッ!と心臓の鼓動が跳ね上がるんやで!


「な、なんや!心臓の音がやかましいんやで!うっわ、なんや、これ。わいの心の中から、とんでもないもんが産まれようとしているんやで!」


 はあはあはあ。なんや、この気持ち。やばいやで。気持ちいいとかそんなんちゃうんやで。もっとこう、心の奥底に眠っていた、わいのドス黒い感情が、わいの意識を犯していく感覚がするんやで!


「うぎぎぎ!わいがわいで無くなる感じがするんやで!あかん。皆、逃げてくれやで!わいを抑えきれなくなってしまうんで。うぎぎぎ!」


よんさま!よんさま!どうしたっしー!なんでそんなに笑っているんだっしー!?」


 笑っているやて?千歳ちとせちゃん、わいは今、心の底から苦しんでいるんやで?


よんたん。それはひとが見せれる笑顔じゃないんだぜ。さすがの俺でもドン引きするほどの邪悪そのものの笑みなんだぜ」


「ヤバいッス。これはよんに飲ませたのは失敗だったかもッス!おい、田吾作。この薬は何なんだッス!」


「わ、わからないだぎゃ。こんな風に笑うニンゲンなんて、今まで視たことがないんだぎゃ。確かに、気分が昂揚して笑顔になるやつはいるのだぎゃ。でも、ここまで視ているだけで吐き気を催す笑顔になるやつなんて、視たことがないんだぎゃ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

cont_access.php?citi_cont_id=886148657&s

ツギクルバナー

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ