ー旅立ちの章 8- 困ったひとがおったら、わい、ほっとけないんやで!
わいは風花くんたちが書いてくれた地図を片手に津島の町へと急いんだんやで?まあ、訓練の途中から抜け出すときに河尻さまに見つかって、わいの人生がかかっているいるんや!と必死に説得したもんやで。
「うむ。男が自分の人生を賭けて戦場に向かうと言うのか。その意気や良しっ!骨は拾っておくがゆえ、失恋した際は墓石に【恋に破れた男、ここに眠る】と刻んでやろう。さあ、行け!行って、その手に勝利を掴んでこいっ!」
河尻さまは見た目は怖いけど、話がわかるひとで助かるんやで?今度、何か贈っておかないといけないんやで?河尻さまの好物はなんやろうな?まあ、その辺の食べれそうな草でもむしって渡せばいいやろな。いつもぷんすこしているひとやさかい、お通じが悪いやろうし。腹でもくだれば、少しは便通が良くなるやろ。
と言うわけで、わいは津島の町へとひた走ったんや。途中、腰を痛めてうずくまってる、おばあちゃんを見かけて、おぶって家に届けたり、腹を空かせて泣いている子供が居たから、持っていた飴を渡したりと中々に難儀したんやで。
「おっちゃん、ありがとう!このご恩はきっと忘れないよ!」
「おっちゃんちゃうで?お兄さんと呼びや?あと、わいに恩は返さなくてもいいんやで?もし、お前が大人になったとき、腹を空かせた子供が居たら、その子に飴でも渡してやりい?」
ふう。困っているひとを見かけた時は親切にするようにと、おかんから良く言われていたさかいなあ。わい、急いでるんやけど、つい、人助けをしてしまうんやで。
「持病のシャクがああああ!」
「財布を落としてしまいましたの!」
「今年は雨が降らんから農作物にダメージがあああ!」
「身ぐるみはがされて、寒いよおおおお!」
「彼女ができない。こんな世の中は間違っている!」
最期のひとりは放っておいたんやけど、皆、困ってるんやなあ。あかん、人助けばっかりしてたら、すっかり時間を喰われてしまったんやで!津島に着いたのはちょうど、お昼のご飯時になってしまったんやで!
おっと、ここが件の綾高いかいな。ごっつ、値の張りそうな店やで。わい、こんな高級そうな食事ができそうなところ、いっぺんも来たことないんやで。田中くん、風花くんと一緒に行ったことがあるって言ってたなあ。以前、田中くんが夕飯も喰わずに水ばっかり飲んでたのは、この店のせいかいな?
ううう。武者震いがしてきたんやで。ここにわいの愛する千歳ちゃんが、知らん男とお見合いをしているんでやんすか!神さま、わいに力を貸してくれやで。こんな高級料理店に入るだけの勇気を分け与えてくれやで!
わいは、力強い一歩を踏み出して、綾高いの門を叩いたんやで。
「頼もうやで!ここに、わいの愛する女性が来ていることは、はっきりしているんやで?ことと次第によっては、店長を呼んでもらうことになるんやで?」
わいの怒声に驚いた店員が、店から飛び出してきたんやで?
「ちょっ、ちょっと、旦那さん。何をしているんですか?こんなところで大声を出されては店の評判に傷がつきます!」
「そんなことはどうでもいいんや!わい、千歳ちゃんを探しにきたんや。ここにおるんやろ?」
「そ、そんなこと言われましても。とにかく、落ち着いてください。ふんどし一丁で店の前で暴れられては困ります!」
あっ。そう言えば、さっき、身ぐるみをはがされて困っていたひとに自分の服を渡してしまっていたんやで。うーん、これは困ったんやで。高級料理店には着物制限があると言われてるさかいなあ。ふんどし一丁じゃ、入れてくれんってことかいな?
「い、いえ?特に綾高いでは、着物制限はありませんが、さすがにふんどし一丁の方を店の中に入れるのは何かと、他のお客様にご迷惑がかかってしまいますので」
店員さんが困っているんやで。でも、おかしな話やないか?そこら中にふんどし一丁の男なんて、ごろごろしてるやんか?
「ま、まあ、確かに旦那さんの言う通りですが、この店は武家のひともお客にいるのです。そう言った身分の高いひとたちのご迷惑になっては、店としても大変なのですよ」
「うーん、困った話やなあ?しょうがないでやんす。そこをどいてくれやで?わい、すぐに用事を済ませて出ていくさかい!」
わいはそう、店員に告げると、強引に中に入ったんやで?でも、困ったことに、この綾高いは中にいくつも部屋があったんや。さすが、高級料理店やで。個室付きかいな。これは部屋の中で男女がいちゃつき始めたら、わからんやんか?
と言うことは、千歳ちゃんはこんなところで、お見合いと言いつつ、互いの裸を見せ合う、お見せ合いをしている可能性も否定できないってことやな?なんか、わい、たぎってくるもんがあるんやで!
「ちょっ、ちょっと、旦那さん。こんなところで、ふんどしの前の部分を膨らませるのはやめてください!」
「な、なんやと!わいのほとばしる性欲がこんなところで暴発するって言うんかいな!くっ、沈まれ、わいのいちもつ。こんなところで、おっきしている暇なんてないんやで!」
わいは、田中くんの毛むくじゃらの尻を想い出して、なんとか、いちもつの腫れを抑え込むことにしたんやで?