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ー旅立ちの章78- ニンゲン、素直が一番なんやで?

 わいは喜兵衛くんの背中から引っこ抜いた血だらけの槍を、ぽいっと放り投げて、利家としいえくんがバシッと受け取るんやで?ほんま、槍の受け取り方もいちいち絵になる男なんやで?利家としいえくんは。


「ふう。やっと、俺の槍が手元に戻ってきたッス。しっかし、雑に扱ってくれたもんッスね。柄の部分が少し削れてしまっているッスよ?」


「すまんやで?くわの攻撃を、槍で受けたんやで?でも、すごい槍やで?普通の安物なら、それでぽっきり折れてもおかしくないんやで?」


「まあ、この槍は作ってもらうのに10貫、かかったッスからね。足軽用の長槍と一緒にしないでほしいッス」


 利家としいえくんの槍が1本10貫やと!?ちょっと待ちいや。わいが普段、いくさで支給されているのは、良いとこ200文やで?その50倍の槍って、すごくないか?


利家としいえくん。その槍を売っぱらったら、少しはマシな生活ができるんじゃないでやんすか?」


「うるさいお世話ッス。武士もののふが槍を手放して、どうするッスか?」


 いや、でも、利家としいえくん。今、信長さまからお暇をもらっているんちゃいますの?


「ん?何か言ったッスか?」


「い、いや?なんでもないんやで?それよりも、その田吾作くんの方をどうにかしてくれやで?」


「うぎぎぎ!よくも喜兵衛を殺してくれただぎゃな!お前ら、絶対にゆるさなうぎぎぎ!」


 あちゃあ。田吾作くん。こっちの方を視てたらあかんで?ほら、左腕がぽっきり折られているんやで?利家としいえくんはひどいひとやで。台詞を言っている時に攻撃するのは反則やで?


「ん?何か言ったッスか?」


「い、いや?なんでないんやで?それよりも、はよ、田吾作くんの全身の骨をぼっきぼきに折ってくれやで?」


「うぎぎぎ!よくもしゃべっている最中に攻撃してくれうぎぎぎ!」


 あちゃあ。利家としいえくん。ほんま、容赦ないんやで?次は田吾作くんの右腕をぽっきり折ったんやで?いやあ、さすが高い槍やで。田吾作くんのくわによる攻撃を受けた時も槍の柄が折れんかったから、相当、硬いんやろうけど、すごい性能なんやで?


 わいも10貫する槍を買ったら、利家としいえくんみたいに槍の達人になれるんちゃいますの?


よん。腕もないのに高い槍なんて、宝の持ち腐れッス。200文の安物で我慢しておけッス」


「せやな。わいは叩く、振り回すくらいしかできへんしな。って、利家としいえくん、すごいもんやな。手が3メートルに伸びたかのように、自由自在に槍を使いこなすんやなあ?」


「褒めても何も出せないッスよ?5回ほど使った茶葉で淹れたお茶くらいッス」


「茶葉は3回までで諦めたほうが良いんやで?それ以上は、美味しくもなんともない、うっすいお茶になってしまうんやで?」


「金が入ったら、新しい茶葉でも買うッス。しっかし、普通なら、骨の2本も折られたら、失神するはずッスけど、まだ、何か喚き散らしているッスね」


 ほんま、田吾作くんの精神力には感服するんやで?利家としいえくんに両腕とさらに左足の骨まで叩き折られているのに、まだ、地面に突っ伏しながらも、もぞもぞと動いているんやで?しかも、腰辺りに手槍が刺さっているのになあ?


「失血で死なれても困るッスから、背中の槍を抜いてやるッス。ちょっと、痛いッスけど、我慢するッスよ?」


 うぎいいい、ひぎいいい!って言いながら、口から泡を吹いてる田吾作くんの顔を視ていると、なんだか、わい、嗜虐心に芽生えそうなんやで?


 利家としいえくんが、田吾作くんの背中を踏みつけて、さらに手槍をグリグリと捻っているんやで?別に田吾作くんを虐待をしているわけちゃうで?ああしないと、肉が締まっているから、槍が抜けへんからやで?


「うっし、やっと抜けたッス。いやあ、こいつ、手こずらせてくれるッスねえ?」


「うぎぎぎ!絶対に復讐してやるだぎゃ!おいらを生かしておけば、貴様らの仇になるんだぎゃ!うぎいいい!」


 あっ。利家としいえくんが、田吾作くんの左胸を横から蹴っ飛ばしたんやで?ボギイッ!って良い音を立てますなあ。これは、あばら骨の2、3本にヒビが入ったのは確実やで?


「安心しろッス。井戸に毒を投げ込もうと考えているやからを生かしておくわけがないッス。俺の質問が終われば、殺してやるッス」


 ひいいい。利家としいえくんがおっそろしいんやで?わい、いくら相手が非道と言えども、ここまでできないんやで?


「早速、質問させてもらうッス。お前の雇い主は誰ッスか?」


「うぎぎぎ!貴様らに教えることはないんだうぎいいいいいいい!」


 おお、おお、おお。利家としいえくんが手槍で右手を、10貫する槍で左手をぶっ刺したんやで?田吾作くん、ニンゲン、素直にならないと、ひどい目に会うんやで?


「苦しんで死にたいッスか?それとも、なるべく苦しんで死にたいッスか?好きな方を選べッス」


「うぎぎぎ。わかったのだうぎぎぎ。何を聞きたいんだぎゃ?応えられる範囲で応えるんだぎゃ」


 おお、おお、おお。田吾作くんが両目からボロボロと涙を流しているんやで?やっと、心が折れたみたいやな?ほんま、最初から素直に口を割れば良かったんやで?

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